12月18日、東京ドームで行われた、アメリカンフットボールの社会人王者を決める「ジャパンXボウル」は、富士通フロンティアーズがIBMビッグブルーを63-23という大差で破り2年連続3度目の優勝を飾った。富士通は年が明けた1月3日の日本選手権・ライスボウル(東京ドーム)で、大学王者の日大フェニックスと対戦する。
富士通のオフェンスが全開となった第1クオーター、筆者は写真を撮影していてあることに気が付いた。QBコービー・キャメロンを追うフレーミングで、IBMの誇る2枚看板、DLジェームズ・ブルックスとチャールズ・トゥアウの姿がまったくファインダーに入って来ないのだ。そこで富士通のオフェンスで、あえてボールキャリアーを追うのをやめ、LT(レフトタックル)の小林祐太郎にフォーカスした。
キャメロンのブラインドサイドを守る小林は、対面のブルックス相手に完璧なブロックを見せていた。195センチ123キロのブルックスは、4年連続オールXリーグ選出、リーグ最強のパスラッシャーと言って良い。彼と1対1で真っ向勝負して、負けず、抜かせない小林のブロッキングに鬼気迫るものを感じた。別のプレーでは、反対サイドの勝山晃も、195センチ140キロのトゥアウの圧力に一歩も譲ることなく押し返していた。
IBMディフェンスの根幹は、ブルックス、トゥアウという規格外のパワーを持つ2人が繰り出すパスラッシュだ。QBに圧力をかけ、投げ急がせ、リズムを崩す。あるいはサックしてロスさせる。ファンブルさせる。それがディフェンスの好循環を生む。しかしこの2人がここまで無力化されてしまうのは、IBMの山田晋三ヘッドコーチとしても想定外だったのではないか。
富士通に試合の流れを大きく傾けたパスを1本選ぶとすれば、第2クオーター5分。キャメロンからWR中村輝晃クラークに通った74ヤードのTDパスだろう。このプレー、IBMサイドラインの横で撮影していた私は、キャメロンを狙っていた。ショットガンでボールがスナップされて、キャメロンはポケットの中で軽くステップを踏みながらレシーバーを探した。その間ほぼノープレッシャーで、IBMのディフェンダーは一切ファインダーの中に現れなかった。時間にして5秒はあったのではないか。その時間がとても長く感じられた。
レシーバーを見つけたキャメロンが大きなモーションからパスを投げた瞬間、筆者はビッグプレーになることを確信した。
後にテレビ映像で確認すると、IBMのブルックスがインサイドからラッシュしていたが、富士通OL陣がダブルチームでブロックしていた。そして撮影した写真には、OLの切り札小林が、フリーの状態でブロッカーとして待機している姿もあった。仮にIBMディフェンスがもう一枚ラッシュを入れたとしても、富士通は小林がプロテクションして、キャメロンがこのプレーを決められたという証左だった。
筆者の位置からは、レシーバーは見えなかった。結果的にはMVPを決めたこのTDの中村クラークのプレーは撮れなかったが、それはそれで納得していた。数秒間の完璧なパスプロテクションに、富士通の力の源を見たからだ。
とは言え、富士通OL陣も万全の状態でゲームができていたわけではない。試合の途中では、レフトガード(LG)の望月俊が負傷で退場し戻れなかった。望月はOLとしては小柄だが、豊富な知識と高い技術を持ち日本代表やオールXリーグにも選ばれているユニットの要だ。しかしその望月の穴を、斎田哲也やルーキーの蔵野裕貴がしっかり埋めた。パスプロテクションでもランブロックでも望月の不在が大きなマイナスとならなかった。
キャメロンの被サックはゼロ。ヒットらしいヒットは、第2クオーターにブリッツしたLBコグラン・ケビンによるファンブルロストだけだった。
富士通のOLには、米国人選手がいない。国際大会を除いて、日本でしかプレー経験のない彼らを鍛えるのはケビン・ライトナーOLコーチだ。この試合では、白の半袖Tシャツ、黒の短パンで、サイドラインを精力的に動き回っていた巨漢と言えば、見ていたファンも思い当たると思う。
ライトナーコーチは、米NCAAではオハイオ大学やバンダービルト大学でOLコーチを歴任した。特にバンダービルト大は、米カレッジフットボールで強豪大学が名を連ねるSEC(サウスイースタンカンファレンス)に所属する。NFLでドラフト指名される強力なパスラッシャーを相手にパスプロテクションを構築してきた。そのノウハウが役に立ったともいえる。
ライトナーコーチは「グレートなゲームプラン、そしてそれを完遂した。誇りに思う」と太い声で話した。そして「コバヤシ、カツヤマの2人は、他のチームのアメリカ人選手よりも優れている。Xリーグでベストのオフェンシブタックルだ。2人だけではない。コウヘイ(C山下公平)、サジマ(T佐嶋優輔)、クラノらヤングボーイもよくやっている。彼らはリーグでベストの男たちだ。本当に誇りに思う」と語った。'We're proud of those guys'を何度も連発した。
富士通の63得点は、東京スーパーボウル時代の1995年に松下電工の最多得点記録54(対リクルート戦)を22年ぶりに更新。得失点差40も、1991年オンワードの39(対サンスター戦)を26年ぶりに更新した。富士通の記録づくめの大勝となったこの試合のMVPは、これも大会の個人パスレシーブ獲得距離の最多記録を更新(203ヤード)した、WR中村クラークだった。QBキャメロンもパスで306ヤード4TD、ランで81ヤード2TDと文句のつけようのないパフォーマンスだ。
しかしパスとランのトータルで506ヤードを奪った富士通の猛攻を支えたのは、小林、勝山の両OTが率いる、国内最強のOL陣だ。そして彼らに本場の技を教え、導き、鍛えぬいたのがライトナーコーチだった。
試合後、OLユニットはコーチ・ライトナーを中心に笑顔で記念撮影に応じてくれた。この、ごつくて陽気な男たちこそが真のMVPだと強く感じた。
正月のライスボウル、日大の前に、文字通り大きく高く強い壁となって富士通のOL陣が立ちはだかることになりそうだ。【小座野容斉】
・勝利の感想は
・ブルックス相手に一歩も引いていなかった。こんな日本人選手がいるのかと思った。
・負傷によるブランクがあったが。
・ブルックスだけでなくトゥアウも、ほとんどキャメロンに触っていないのではないか。
・望月が負傷で下がったが
・ライトナーはどんなコーチか?
・日本人のコーチと違うところは
・次はいよいよ母校・日大との対決
2024-10-23
【サッカー】サッカーに必要なメンタルとは?「しなやかな心を育てる」第27回:パワハラを起こさない手法
2024-10-28
【新作情報】「BBMスポーツトレーディングカード INFINITY 2024」スポーツの祭典で活躍したアスリートたちも集結!
2024-10-29
【連載 泣き笑いどすこい劇場】第27回「その気持ち、分かります」その4
2024-10-27
【アメフト】関西学院大学が61回目のリーグ優勝
2024-10-27
【マリーゴールド】超貴婦人・桜井麻衣が3冠王目指して柔道入門。五輪メダリストの指導受け、STK開発に手応え【週刊プロレス】
2024-10-31
男子第75回女子第36回全国高校駅伝 北関東地区記録
2024-04-01
ベースボール・マガジン社の人工芝一覧、導入実績、問い合わせ先 [ベーマガターフ]
2024-10-23
【サッカー】サッカーに必要なメンタルとは?「しなやかな心を育てる」第27回:パワハラを起こさない手法
2024-10-28
【新作情報】「BBMスポーツトレーディングカード INFINITY 2024」スポーツの祭典で活躍したアスリートたちも集結!
2024-10-29
【連載 泣き笑いどすこい劇場】第27回「その気持ち、分かります」その4
2024-10-27
【アメフト】関西学院大学が61回目のリーグ優勝
2024-10-27
【マリーゴールド】超貴婦人・桜井麻衣が3冠王目指して柔道入門。五輪メダリストの指導受け、STK開発に手応え【週刊プロレス】
2024-10-31
男子第75回女子第36回全国高校駅伝 北関東地区記録
2024-04-01
ベースボール・マガジン社の人工芝一覧、導入実績、問い合わせ先 [ベーマガターフ]