1ボックスから複数の直筆サインカードが出現する、開封していて楽しい商品として、毎年人気となっているのが女子プロレスカード。この最新版「BBM女子プロレスカード2018 TRUE HEART」が今年も発売された。
それを記念し、今作で重要な役目を果たしてくれた選手たちをクローズアップするインタビュー企画を3回に分けてお届けしたい。
その第1弾は、KISSマークカードに挑戦してくれたアイスリボンの雪妃真矢選手。
異色の経歴やその容姿もあり、デビュー当初から大きな注目を集めていたが、これまでの道のりは極めて険しいものだった。そんな苦難の時期を乗り越え、現在ではタッグ2冠王に輝く彼女にじっくり話を聞いてみた。
「雪妃真矢」と「雪妃魔矢」。二つの顔は、いったいどちらが素の彼女に近いのか?
PROFILE
雪妃真矢(ゆきひ・まや)
1月9日、千葉県出身。フェリス女学院大卒業後、銀行に就職するも、かねてより憧れていたプロレスラーを志し、一念発起して2014年夏にアイスリボンに入団。同年11月24日、横浜ラジアントホール大会での中川ともか&くるみ戦でデビュー(パートナーはつくし)。レギュラー参戦するOZアカデミー女子プロレスでは、「雪妃魔矢」のリングネームでヒールレスラーとしても活躍する。現在、インターナショナル・リボンタッグ、OZアカデミー認定タッグ王座の2冠王。
BBM 雪妃選手は2014年のデビューですから、カードは15年版からのご登場です。今回で4年目なのですが、これまで雪妃選手のカードが何種類ぐらい作られたか覚えていますか?
雪妃 えっと……1年目、2年目が1枚ずつ。3年目はシングルとアジュレボ(世羅りさとのタッグチーム「アジュール・レボリューション」の略)に黒(OZアカデミー正危軍の「雪妃魔矢」)。そして今年がシングルと黒、そしてキスマークですから、8枚ですね?
BBM その通りです。随分とたくさんカードになっちゃいましたね。どのカードが好きとかありますか?
雪妃 思い入れがあるのは、やはり初めてのカードです。しかもこれ、滑り込みでしたよね? 11月デビューでしたし、年明けの発売に間に合うギリギリのタイミングだったと思うので、それでカードにしていただけてとても嬉しかったです。
BBM コスチュームもできたばかりでした。
雪妃 そうです。だからまだ、直しに出す前で。
BBM デビュー直前、初めてのコスチューム姿の撮影が、このカードの写真でした。
雪妃 そうです、そうです。すごく覚えています。
BBM テレビ(フジテレビ系「ザ・ノンフィクション」)の密着取材も入っていて。
雪妃 懐かしいですね。まだデビュー前でスタイルも決まっていなかったので、髪もしばっていないんです。
BBM このコスチュームはオリジナルですよね?
雪妃 はい、自分でデザインしたものです。このカードが発売された直後に私、関西に大会のPRに行ったんです。ファンの方が集まるようなお店をまわって、大会のポスターを貼らせていただいたんですが、そこにいたお客さんに「この前デビューした雪妃真矢さんだよね?」って声をかけられ、このカードを渡されて。そこで初めて、カードにサインしたんです。しかも一人の方でなく、何人もの方がそのカードを持っていらして。
BBM この年の商品ボックスでは、幅広い世代の選手が収録されていますということを表す意味で、ダンプ松本選手から雪妃選手まで収録というキャッチコピーを付けました。
雪妃 私とセンダイガールズの宮城倫子選手が同じ日のデビューで、パッケージにダンプさんと一緒にカードの写真を載せていただきました。2年目のカードは、銀のコスチュームができていたのに直しに出していて、最初のコスチュームでの撮影だったんです。
BBM なので裏面に、その銀のコスチュームでの試合写真を載せました。
雪妃 そうなんですよね。黒い雪妃にしても選手名鑑には載らないですけど、カードにはしていただけましたし、おかげで私、これまでに着たコスチューム、夏限定のマーメイド(競泳用水着)は別ですけど、みんなカードにしていただけているのが嬉しいんです。なんか自分の図鑑みたいで(笑)。
BBM そうおっしゃっていただけてこちらも嬉しいです。さて、ここからは雪妃選手のこれまでを振り返りたいのですが、名門大学を卒業され、銀行員をされていたのに、よくプロレスラーに転身されましたよね。
雪妃 うん、でもただ単純に、あのときに踏み切って良かったなと思います。憧れるだけで終わらなくて良かったなって。あのとき、これが最初で最後の挑戦って思ったんですよ。そこまでずっと、踏み切らないできたから。
BBM デビューまでの日々は長く感じました?
雪妃 いや、短かったですね。デビューが決まったときは、すべてが不安でした。最初はロープに身体が当たるだけで骨にも傷が行くんじゃないかってぐらい、皮膚も裂けてぐちゃぐちゃになっちゃって。先輩方がおっしゃるように、「いつか平気になるのかな?」と思っていたんですが、いつの間にか本当に傷がつかなくなりました。
BBM 実は振り向いたような写真も使いたかったのですが、背中の傷が痛々しくて見送ったんです。
雪妃 酷かったですからね。私はデビュー当時、本当にケガが多かったですから、もう一生、ケガをし続けるんじゃないかと思いました。それがいまではケガをしなくなりましたし、する気もしなくなりました。何が変わったのか、自分でも分からないんですけど。不思議ですよね、皮膚や骨の質が1、2年で変わるわけじゃないですし。
BBM 本当にケガ続きでした。
雪妃 11月にデビューして、2月に右手の中指を骨折して、3月の復帰が決まったとたんに右足の薬指を骨折。5月に復帰したら今度は左の鎖骨がポッキリ……。どれだけ骨が弱いのって(笑)。
BBM 相当、気持ちも落ちたのでは?
雪妃 落ちたなんてもんじゃなかったです。私なんかがレスラーを目指しちゃいけなかった、なれるもんじゃなかったんだって思いましたし、デビューしてはいけなかったんだって自分を責めました……。
リングに上がる以上、大ケガをしちゃダメじゃないですか。なのにケガをしてしまったことが悔しかったし。自分の中では指を折っても試合をしたかった。でも手術を受けなきゃならない。そういう、気持ちだけではどうにもならないという部分が……。
BBM 正直、辞めてしまうのではないかと思いました。
雪妃 実際、辞めなきゃいけないんだろうなと思っていました。またケガをしたらどうしようという思いもありましたし。まわりの声も気になって、「またケガしたんだね」って言われるのが悲しかったし辛かった。こんなにケガをしていたら、上達するもなにもないだろうって。
それと鎖骨のときは、治ってからもしばらく怖くって。それはケガをして痛いのが怖いというのではなく、また試合に出られなくなることが怖かったんですよね。
BBM 結果的に、あのときに辞めなかった理由は何でした?
雪妃 私はデビュー戦のときから本当にたくさんの方に応援していただきました。欠場中も事務仕事や他団体さんの会場でアイスリボンの売店担当をしていたんですが、たくさんの方が来てくださったんです。私は試合をしないのに、ポートレートを買ってくださったり、温かい声をかけてくださったり。そういう方々がいるのに辞めるのは申し訳ないと思いました。
それと……やっぱり悔しかった。デビューしたことで夢を叶えたわけではないじゃないですか。その後に何かを成し遂げることで、初めて夢が叶うわけで。会社を辞めて、埼玉に行って、デビューしたけどほんの何試合かで辞めたら本当に意味がないなって。
BBM そうですね。
雪妃 あとは団体内に「もう辞めたら?」って言う人がいなかった。同じようにケガで苦しまれた先輩方もおられますから、「大丈夫だよ」って励ましていただいて。
BBM 苦しい時期を乗り越えて10月に復帰をすると、すぐに世羅選手とのタッグが始動しました。
雪妃 アジュレボの結成は11月末でした。それで私の七番勝負が始まり、OZアカデミーに出るようになり、あの3月の試合があり……。
BBM 尾崎魔弓戦ですね。
雪妃 そう! そこから一気にいろんなものが変わりましたね。七番勝負が決まったときは、とことんしんどい思いをしようって。とても怖かったんです、本当に怖かったんです。1戦目が豊田真奈美さん、2戦目が尾崎さんで3戦目がダイナマイト関西さん……すごい経験をさせてもらいました。
BBM 特に尾崎戦はとてつもなく酷い目に遭わされていました。
雪妃 そう(笑)。でも終わったら、楽しかったんですよねぇ。本当に楽しかった! それまでの人生で経験したことがないくらいぐちゃぐちゃにされて、アザだらけにされて、もちろん痛いんですけど、「ああ、私、生きているなぁ」って(笑)。
BBM しかも、尾崎選手率いる正危軍に誘われるという。まぁそれまでの雪妃選手からしたら真逆の世界へのお誘いですよ。
雪妃 でも私、ヒールにものすごく憧れを持っていました。黒いコスチュームへの憧れもあったんです。それまでデビューしてからずっと「才色兼備」とか言われていて、実際の自分は全然違うのにって思いが常にあったんですよね。
BBM 観る側からの勝手な思い込みなのかもしれませんが、雪妃選手というと綺麗で優しいお姉さんというイメージは確かにありますよ。
雪妃 でも自分の中ではそうではない。だって私、おっぺけぺ~だし、真面目でもないし、賢くもないし。だからその最初にイメージされた「雪妃真矢」とは違う部分を集結させた化身、それが「雪妃魔矢」なんです。あの黒いヤツは、実際の私の中にいるんです。ですから正危軍に入らないかと誘われたとき、これはチャンスなんじゃないかと思いました。1年目に悩みに悩んで悩み続けた「雪妃真矢」のイメージ。皆さんが思う姿と私自身の本質との乖離した部分。それまで隠さなきゃいけないんじゃないかと思っていた部分を前面に押し出せばいいんじゃないかと思えるきっかけになったんですよね。
BBM そこまで葛藤がありましたか。
雪妃 「雪妃真矢」はこうでなくてはならないってのはやっぱりあって。でも自分ではそれができなくて悩みました。だからできないことをやらずに、できることをやるという極端な姿が「雪妃魔矢」でした。
BBM 「雪妃魔矢」ではすごく生き生きとして見えるのは確かです。
雪妃 すごく楽しいし勉強になります。正危軍での試合は、とにかく視野を広くしていないとできないんです。人数も多いし、場外乱闘も多くて、会場のあちこちでいろんなことが起きていて、何が起こるかも分かりませんから。誰がどこにいるかということも常に考えながら試合をせねばなりませんし。結果的にその経験がアジュレボでの試合にも生きているんです。タッグの闘い方という部分でも、人と合わせたり呼吸を外したりとか。
BBM どちらが素の姿に近いのでしょう。
雪妃 黒をやったことで、青の「雪妃真矢」のときに出せるようになったこともあるんですが、それだってもともと私の中にあったものですからね。どちらが本当ってことはないんです。
私は末っ子なんですが、その末っ子気質は黒のほうが近いと思います。甘えん坊で、強いお姉さんたちに守ってもらいながら、なんか要領よくおいしいとこは持って行くみたいな(笑)。それは私生活では出さない、家族の前でだけ出す部分。
逆に人前での気丈な、どちらかというと男勝りのようなところ、それは青のほうで出ていると思います。ですからリングに上がっていない、いまの私の中にある二つの部分がそれぞれ形になって闘っている、そんな感じなんです。
BBM とても興味深いですね。二つの姿を持つようになったことが、大きな結果にもつながりました。昨年10月29日のアイスリボン後楽園大会で、アジュレボがリボンタッグ王座を獲得しました。さらにその晩、横浜文化体育館で尾崎選手とOZのタッグ王座にも就きました。
雪妃 あり得ないですよね、初めてタイトルを獲った日に一気に2冠王になるって(笑)。リボンタッグを獲ったときは自然と涙が出ました、嬉しくて。自分がこれまで欠場したり悩んだりしながらやってきて、存在意義を否定したこともありました。でもあのベルトを獲ったことで「私はリングに上がっていていいんだ、これからも頑張れるんだ」ってやっと、納得がいった感じがしました。
BBM 一方、夜の試合はいかがでした?
雪妃 もうしてやったりって感じでしたね(笑)。メチャクチャにやられましたけど、正危軍で闘うときの心の安定感は半端なかった。誰かが助けてくれるという思いもありましたし、昼にベルトを獲ったことで、「もうこれは夜も獲るしかないでしょ」って感じで。
昼の試合を終えて、文体にはスタッフさんに車で連れて行ってもらったんですけど、めっちゃアドレナリンが出ましたから。最初は1日に2試合もタイトルマッチが決まって、不安だったんですよ、「私は本当に大丈夫なのかな」って。ともに大会場での大会でしたし。
でも昼は夜のことを考えずに「全部出し切ろう」って思って闘えましたし、タイトルを獲ったことで一度はゼロに落ちたHPが一気に回復した感じで。車の中で着替え、化粧も黒用に直しているうちに、どんどん姿が変貌していくじゃないですか。その間に気持ちもパワーも復活して、「もう1試合全然やれる、絶対に獲れる」と思うようになって。
BBM 1年目のことを考えると、まったく別の世界が広がりましたね。いま、本当に充実されていることが分かります。
雪妃 そう思います。アジュレボ組んで、七番勝負やって、正危軍入ってってなってから、メディアのお仕事も初めて経験するお仕事も一気に増えましたし。舞台、テレビ、写真集、DVD、CDデビュー、女性無料大会とか、ものすごくいろんなことができました。
BBM そんな雪妃選手の良い流れに呼応するかのように、アイスリボンも後楽園ホール大会が常に満員で開催されるようになりました。どの団体でも苦戦している会場です。どのへんが変わったとお感じになりますか?
雪妃 やはり全体の底上げじゃないですか。私はこれまでずっと、自分が一番下で、一番未熟だと思ってやってきました。でも実際は新人が大勢デビューして、もう真ん中へんなんですよね。いつまでも新人の気持ちでいちゃいけないと思いましたし、後輩たちも抗争みたいなことがあったりしました。その中でみんなが「悔しい、勝ちたい」って当たり前の気持ちを強く持つようになり、自分の役割をそれぞれが果たそうというようになったと思うんです。それぞれの中にちゃんとテーマがあり、ただなんとなく試合をしているって人は、いまのアイスリボンには一人もいないんじゃないですか?
BBM そう思います。同期だったり同じくらいのキャリアの選手が何人もいますから、選手たちのライバル意識が観ていても面白いですし。
雪妃 そういう意味では、私はちょっと外れていたのかもしれません。同期もいないし、でも下の子たちの闘いの中にも入れてもらえない。かといって先輩たちと肩を並べるほどのキャリアも実力もない。どうすればいいのかなって思ったときに、世羅さんがいた。世羅さんも同期はいませんが、チャンピオンであり、エースだった。その世羅さんと組んだことで、自分の居場所ができたような感じで。もし世羅さんと組んでいなかったらものすごく孤独を感じていただろうし、自分のやるべきことも見つけられなかったように思うんです。
BBM さて、これからの雪妃選手について伺っていきたいのですが、この先、やってみたいことはありますか?
雪妃 まだやったことのないお仕事をしたいという思いはあります。もちろんそれは、あくまでもアイスリボンのためになることに限りますけど。テレビのお仕事とか声優のお仕事とか、せっかく生まれたからには何でも経験したいという気持ちなんですよね。レスラーになったことで、経験できたってことがたくさんありますから。
そしてレスラーとしては、やっぱりリボンタッグのベルトの防衛記録(藤本つかさ&志田光の「マッスルビーナス」、成宮真希&世羅りさの「.STAP」の9回)は更新したいです。
BBM OZのベルトはもう防衛戦行わないからって名前を入れちゃいましたし(笑)。
雪妃 そう。「MAYA」って入れちゃった(笑)。
BBM では最後に、このインタビューを読まれた方に向けて、メッセージをお願いします。
雪妃 もし、カードやこのインタビューで私に興味を持ってくださった方がいたら、アイスリボンには私以外にも約20人のいろ~んなタイプの選手がいます。笑いあり、涙あり、女の醜い争いあり(笑)。是非、会場にお越しいただきたいですし、ストレス発散していただければと思います。きっと、試合を観た後はビールを飲みながらお肉を食べたいって思うんじゃないかな。皆さんに元気を与えられるように私たちも頑張りますので、元気をもらいに来てください!
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