Xリーグは、11月からポストシーズンに突入した。5日の横浜スタジアムでは、ジャパンXボウル(JXB)トーナメントのワイルドカード(WC)プレーオフで、オール三菱ライオンズとアサヒビールシルバースターが対戦し、オール三菱がアサヒビールを20-17で破って、準々決勝に進出した。オール三菱の8強進出は初めてで、11月12日に大阪・ヤンマースタジアム長居(長居陸上競技場)でパナソニックインパルスと対戦する。
先制はアサヒビール。第1クオーター6分に、久々にプレースキッカーを兼任したWR戸倉和哉が41ヤードフィールドゴール(FG)を決めた。しかし、直後の攻撃でオール三菱QB斎藤圭が、目の覚めるようなポストパターンのパスをWR栗原貴徳にヒット。62ヤードのパスTDとなった。
さらにオール三菱はDB松田一将のインターセプトでチャンスをつかむと敵陣ゴール前まで攻め込んだ。しかしアサヒビールディフェンスが踏ん張り、オール三菱はK谷澤隼人のFGにとどまった。アサヒビールはこの後、7分以上かけてロングドライブ、前半残り21秒でルーキーQB鈴木貴がWR戸倉にTDパスを決めて、同点とした。
アサヒビールは第3クオーター8分、鈴木からラテラルパスでRB柳澤拓弥にボールが渡ると、大学時代はQBだった柳沢がWR林雄太に25ヤードのTDパスを決めるスペシャルプレーで、逆転した。さらに第3クオーター11分には、オール三菱の26ヤードFGトライをブロックした。
しかし、オール三菱は斎藤が第4クオーター4分にランでTDを挙げて同点とすると、その後も巧みなキッキングゲームで、アサヒビールの攻撃を封じ込めた。残り1分58秒から始まったオフェンスを、斎藤が自らのランやパスを織り交ぜながら前進。最後はK谷澤が35ヤードのFGを決めて、熱戦に終止符を打った。
レギュラーシーズン最終戦と同じ横浜スタジアムで同じカード。10月29日の土砂降りとはまったく違う、雲一つない晴天の下で両チームは激突した。1週間前、9位陥落の危機から這い上がった名門シルバースターの底力が、この日も勝利をものにすると筆者は予測した。しかし、第4クオーターの攻防を、的確なゲームマネジメントで御して、8強に名乗りを上げたのはライオンズだった。
13-20で7点を追う第4クオーターのドライブ。敵陣12ヤードまで攻め込んだライオンズはQB斎藤からRB鈴木康裕にピッチした。オープンフィールドを駆け上がった鈴木にはエンドゾーンが見えたのかもしれない。しかし次の瞬間、シルバースターのタックルで鈴木の手からはボールが弾き出されていた。転がったのは、シルバースターのディフェンス陣ばかりのエリアだ。しかしボールには、ブロッカーだったライオンズWR栗原が飛びついていた。ライオンズ起死回生のリカバー。そして次のプレーで、斎藤は自ら走ってTDを奪い同点とした。
第1クオーターに62ヤードのTDパスキャッチを決めた栗原だったが、勝利への貢献度では、球際の強さを見せたこのリカバーが上回ったといってよい。
同点となった後は、ライオンズのキッキングとディフェンスが、ボールポジションをきっちりキープし続けた。シルバースターのリターナー戸倉をカバーチームがうまく抑え、シルバースターはゴール前8ヤードからのオフェンスを余儀なくされ、パスを投げられず1ヤードしか進めずに3&アウト。エンドゾーンからのパントでライオンズは好位置からのオフェンスを得た。
このオフェンスはシルバースターディフェンスがファーストダウンを許さずフォースダウンとなる。しかし、フィールドにはQB斎藤がいた。敵陣39ヤードではFGには遠い。素早くハドルを解いたライオンズは通常のショットガン隊形を取った。複数のレシーバーが出ている以上、シルバースターはパスディフェンスを取らざるを得ない。スナップを受けた斎藤は素早く的確なショートパントを蹴った。走り込んだレシーバーがゴール前2ヤードでボールを抑えた。
またしてもゴール前に張り付けられたシルバースターオフェンス。RB柳澤のランで何とかファーストダウンを1回更新したものの、自陣17ヤードからパントせざるを得なかった。
ライオンズは自陣50ヤードからのオフェンスで、斎藤の巧みなランとパスでファーストダウンを2度更新、レッドゾーンに侵入する。ライオンズK谷澤の十分な射程圏だった。タイムアウトを3回残していたシルバースターは、この段階で、3点を奪われることを覚悟の上、自軍の攻撃に時間を残すためにタイムアウトを使って時計を止め始めたが、もう間に合わなかった。残り4秒からの最後のオフェンスが始まり、谷澤のキックがゴールポストの間に吸い込まれた時、残り時間はゼロ秒を指していた。
東西の強豪大学出身のトップ選手が揃い、下位「バトル9」では無敵ながら、「スーパー9」の強豪との対決では、甘さを突かれて崩されてきたライオンズ。しかしこの日の第4クオーターでは、ミスから生じた危機を回避し、フィールドポジションを優位に保つ、教科書のようなフットボールでゲームをコントロールし勝ち切った。試合後のハドルでは、24歳の若き獅子、宮田直人主将が咆哮した。オフェンスの不振で、接戦続きだった今季だが、ライオンズは確実に何かをつかみかけている。【小座野容斉】
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