close

2024-05-18

【相撲編集部が選ぶ夏場所7日目の一番】琴櫻が宇良にストップを掛け、幕内の全勝消える。1敗は大の里ら5人に

最後は豪快に押し倒して宇良に土をつけた琴櫻。このまま、前を行く1敗力士に食いついて優勝争いに残っていくことができるか

全ての画像を見る
琴櫻(押し倒し)宇良

辛抱の1勝で、平幕力士の全勝にストップを掛けた。
 
琴櫻が宇良に食いつかれながらも最後は押し倒して大関の貫録を示し、幕内の全勝がいなくなった。

立ち合い、宇良に低く当たられて左も右も差せなかった琴櫻は、右からちょっとイナして、左から抱える形になった。右は少し差した形になったが、宇良に徹底的におっつけられ、まったく効かない形だ。宇良は頭を琴櫻の左脇のほうに潜り込ませる変則的な形で寄って出る。
 
琴櫻は全く手がない感じになってしまったが、ここで慌てず、「余計なことをしないように」と落ち着いていたのがよかった。
 
考えてみれば、この体勢は琴櫻にとっては、攻め手がなく、手を焼く形には違いないが、そのまま長引けば、苦しくなるのは小さい体で変則的な体勢を取っている宇良のほう。つまり状況的には宇良のほうが先に何か動きを見せる必要が出てくるはずなので、琴櫻としてはそれを待って反撃を狙えばよかった。
 
果たして数呼吸後、宇良は引くような形で動きを見せた。琴櫻はその機を逃さず、一気に突きながら相手を振りほどいて出て、最後は押し倒した。

「相手は全勝だったが」と聞かれ、「土俵に上がったら関係ない」と琴櫻。この日から霧島と若元春が休場し、責任が重くなる中、「人は人だし関係ない。そういうのを意識しちゃうと相撲が悪くなる。しっかり自分のやるべきことをやって土俵を務めれば、そういうことにつながる」と、さまざまな状況を意識から追い出して、目の前の相撲に集中しているようだ。
 
善戦しながらも全勝が止まった宇良は「(そのことは)知らないです」とひと言。全勝は止まってしまったが、今場所は前に出る威力が増し、横の動きを警戒しながら取らなければならない対戦相手にとって、より勝ちづらい相手になっているのは明らか。おそらくここからは上位戦が続くが、そこをいい星で切り抜けられれば、まだまだ楽しみな存在だ(しかも考えてみれば、休場者が多いので、続くと言っても上位戦はそう何番もない)。
 
7日目を終わって、優勝争いのほうは、トップに1敗の大の里、大栄翔、宇良、湘南乃海、宝富士の5人が並び、琴櫻ら6人が2敗で追う形。大関豊昇龍は、この日は王鵬に引き落とされて3敗に後退した。状況的には大の里をほかの力士がどこまで引きずり降ろせるかが焦点か。あすは1敗同士で大栄翔が対決する。
 
また、この日から休場となったことで(再出場もないと師匠の音羽山親方=元横綱鶴竜が断言)、霧島の大関陥落が確定。少し前までは、横綱まで遠くないかとも思われていた大関であり、このあっけない陥落にはまさかという思いがするが、痛めているのが首とあって、今後への影響が心配される。
 
霧島の場合、立ち合い頭から突っ込むタイプではないので、そこに関しては影響が少なそうだが、頭を下げた低い体勢が持ち味なので、そこへの影響が果たしてどうか。来場所はひとまず大関復帰の条件である10勝へ向け、短期的にベストな調整を目指すことになろうが、もし頭を起こして取る相撲に変えなければいけないようだと、復活プランは長期戦になる可能性もある。ケガの状況が分からないので何とも言えないが、このまま番付を下げてしまうのでは惜しすぎる力士。何とか万全に近い状態を取り戻して、また本来のキレのいい技能相撲を見せてもらいたいと願う。

文=藤本泰祐

PICK UP注目の記事

PICK UP注目の記事



RELATED関連する記事