真夏の祭典G1クライマックス優勝決定戦がおこなわれた8月13日に続いて、目前に迫った10月9日も新日本プロレスの真裏で両国KFCホール大会を開催するアイスリボン。そんな〝秋の両国決戦〟のメインイベントでおこなわれるのは団体の至宝をかけた一戦。王者・世羅りさvs挑戦者・長崎まる子のICE×∞選手権試合だ。
現在、アイスリボンでは空位となったインターナショナルリボンタッグ王座の決定トーナメントが開催。実力派タッグチームから新世代コンビまで全8チームがエントリーした団体の総力を挙げた一大トーナメント、その一回戦全4試合がおこなわれた9・23横浜ラジアントホール大会のメインイベントで大本命〝ベストフレンズ〟藤本つかさ&中島安里紗組が姿を消した。
とはいえ藤本組は負けたわけではない。同トーナメントの規定に「時間切れドローは両チーム失格」というルールがあり、ベストフレンズの試合はまさに20分ドロー。トーナメントやリーグ戦には魔物が住むと言われるが、予期せぬ魔物に食われ、本命はトーナメントから脱落した。
では、誰が藤本&中島組を食う魔物になったのか。長崎まる子&桃野美桜(マーベラス)組。イケイケでフレッシュなタッグチーム、マブダチ♡厨2病卍卍の2人だった。
女子プロレスを見ないファンは「誰?」「このチーム、なんて読むの?」と疑問を抱くかもしれない。
それもそのはず、まる子はキャリア2年の21歳。桃野にいたってはキャリア1年4カ月の19歳。チームは「まぶだち・ちゅうにびょう・おらおら」と読むのが正解…らしい。
アラフォー世代の記者も最初は「むむむっ…」とうなってしまった。「マブダチ」はまだわかる。だが、「厨2病ってなに?」「卍卍はまんじまんじでいいの?」と疑問が渦巻き、頭の中が思わずオラオラしてしまった。正直に言えば、今でもなぜ「卍卍」を「オラオラ」と読むのかよくわかっていない。しかし、このまる子&美桜組の闘いぶりこそ、頭に渦巻くオラオラを吹っ飛ばしてくれるものだった。
個々の実力、タッグとしての総合力は間違いなくベストフレンズのほうが上回っている。まる子&美桜が劣勢に追い込まれる場面は何度もあった。
それでも2人は引かない。ガンガン前に出る。時に格上のベスフレを挑発しながら、オラオラと攻め立てる。後先考えずに突っ走しれる若さと疾走感は21歳のまる子と19歳の美桜ならでは。口の悪さもまた面白く、何より未完成で発展途上だから放たれる輝きが間違いなくあった。
結果、藤本&中島と20分を闘い抜き、勝てはしなかったが、負けもせず、本命の足を引っ張ることに成功した。
その試合後だった。この結果、藤本&中島とまる子&美桜の両チームが失格。セミファイナルで2回戦進出を決めた〝アジュール・レボリューション〟世羅りさ&雪妃真矢の不戦勝及び決勝進出が決まった。
これに対して、まる子は「アジュレボ(は不戦勝)…ということは10・9両国で世羅りさはヒマってことですよね? シングルのベルト空いてるってことですよね? まる子に挑戦させろ!」とまさかのシングル王座挑戦をブチ上げたのだ。
よくよく考えれば、屁理屈とか難癖をつけているレベルの挑戦表明だ。多分、普段のまる子だったら挑戦状を叩きつけていないような気がする。しかし、美桜とタッグを組みオラオラモードに入っていた21歳は大の字になりながら、V5王者に挑戦表明を突き付けた。
そして、この日の奮闘を見ていた世羅もまた「ヒマになったんで。このベルトかけて、10・9両国、やりましょうか」とあっさり呼応。これを受け、秋の両国決戦のメインイベントが世羅vsまる子のICE×∞選手権試合が正式決定した。
とはいえ、まる子の勝利を予想しているファンはどれだけいるだろう。
前述した通り、世羅は5度の防衛を重ねている。アイスの象徴・藤本からベルトを奪い、外敵・山下りな、先輩・宮城もち、後輩・テキーラ沙弥、ハードコアクイーンを目指す藤田あかね、そしてアジュレボのパートナー・雪妃真矢とバラエティに富んだ挑戦者を退けてきた。どんな激闘を繰り広げても試合が終わればニコリと笑う。そして「お前強いなぁ、またやろう!」的なコメントを残す。それは、さながら天下一武道会時代の孫悟空のよう。そして悟空がドンドン強くなっていったように、いまや世羅もアイスの絶対王者と化している気がする。
一方、まる子は伸び盛りとはいえ、キャリア・実績では世羅に到底及ばない。ICE×∞王座挑戦も、所属全選手と防衛戦をおこなうと宣言した前王者・藤本政権で一度だけ。当然、まる子の王座奪取はならなかった。昨年の9月3日、約1年前の初挑戦だった。
では、2度目となる今回のICE×∞挑戦はどうなるのか。王者・世羅からは「下向いてるヤツに負ける気はしない」「下向いてんじゃねぇ! 上向けよ!」「まる子って対戦相手の目を見ないんです。目を見ないから何も恐怖じゃないです。負ける気は一切しないです」etc…厳しい言葉の数々が投げかけられている。
だが、世羅もまた数々のネガティブ時代を乗り越えて、いまのポジションを築き上げてきた。だからこそ世羅の言葉は、厳しくも愛のある叱咤となる。と同時に、そこには圧倒的な余裕も感じられる。初挑戦から1年後の、2度目のICE×∞王座挑戦、まる子は世羅の余裕を消せずに、玉砕して終わってしまうのか。
横浜大会で時間切れドローに持ち込まれた藤本は言う。
「まる子は今まで私がICE×∞持ってるときに一回だけ挑戦してきたんですけど、それは私が全選手と防衛戦するって言って指名した形なので。今回、実力で初めて挑戦するっていう。でも、まる子はDATE戦を乗り越えて強くなったんじゃないかなって思います。心身ともに強くなって、諦めなくなったんだと思います。胸を借りる試合にはならない? はい! そういう試合にはならないと思いますよ。世羅が苦手とする丸め込みをたくさん持ってる選手なので。ありとあらゆる引き出しを出してほしい。カッコ悪くたっていいから、丸め込んで、丸め込んで、まるまるしてほしいです! アハハ」
「まるまるする」の意味はよくわからなかったが、とにかく藤本は、胸を借りるだけの試合にはならないと断言する。そして、じつは記者も「まる子なら…」と大番狂わせを期待したりする。
正直言えば、今年の2月からアイスリボンを取材するようになった記者は当然、それ以降の長崎まる子しかしらない。たった約半年の闘いぶりしか見てない。だが、このわずかな期間でもまる子は大きく成長。と同時に見る者を引きつける何かを持っていた。
藤本の言葉にもあったが、インド王術武術をバックボーンに持つTeamDATEが今年1月、アイスリボンに入団。彼女らとの新世代抗争がまる子の成長の原動力になったことは間違いない。
TDがデビューした4・24後楽園が第1ラウンドとしたら、8・29後楽園でおこなわれた決着戦のまでの約4カ月間、まる子らアイス新世代とTeamDATEは、時にアイスリボンらしくないとまで言われるぐらいバチバチやり合い、しのぎを削ってきた。
そんなライバル抗争において、なかなか結果の出ないアイス新世代のリーダー的存在だったまる子は精神的に追い込まれ、バックステージでしばしば涙した。結果はもちろん、真っ直ぐで、しかし不器用なまる子は時にチームの輪を乱すこともあった。自分なんかアイスリボンに要らないんじゃないかと藤本に泣きながら訴えたこともあったという。
悔しさ、もどかしさ、情けなさ。
自分というプロレスラーに対するネガティブな感情が涙という形で溢れ出たのかもしれない。ただ、その涙は多分、若いからとか女子だからとかそんな事じゃなく、どれだけプロレスに対して本気であるかの証し。
奇しくもまる子はTeamDATEの入団会見時に「プロレスに対する本気」を問いかけたが、負けて、負けて悔しい思いをするなかで、長崎まる子という選手がどれだけプロレスに対して本気だったかを示す格好になったのではないだろうか。いまのプロレス界において、これだけの感情量をリングにぶつけられる選手はどれだけいるだろうか、と思わず感心してしまうほどの感情をアイスリボンのリングで見せてきた。
レスラーとしての技量とか実力はまだまだ発展途上。それでも藤本は「まる子はたくましくなりましたよ」と言う。事実、9・9蕨のデビュー2周年記念試合では先輩の宮城もちから3カウントを奪ってもいる。
もしかしたら、TeamDATEと抗争中ヘコみまくったように、世羅の言葉に打ちのめされ、また両国大会のメインイベントという重圧がのしかかり、ネガティブな感情が渦巻いているのかもしれない。人間、生き方はそう簡単に変えられない。悶々とするならトコトン悶々とすればいい。そして、それを10・9両国のリングで爆発させてくれればいい。プロレスに対する思いをリングでさらけ出してくれればいい。
蛇足にはなるが、今年の上半期、記者が個人的にテンションの上がった試合を上から3つ上げろと言われたら、1位が諏訪魔vs石川修司のチャンピオン・カーニバル公式戦(4月・全日本後楽園)、2位が鈴木秀樹vs将軍岡本のはぐれIGF軍団解散マッチ(5月・ZERO1横浜)、そして3位にまる子vs華DATEの6月・アイスリボン横浜大さん橋ホール大会の初シングル対決を上げたい(※単なるベストバウトではないし、週プロ編集部の相違でもありません。あくまで超個人的にテンションの上がった試合なので御注意を!)。
プロレスは高度な攻防や華麗な技術の応酬だけではない。レスラーとしての実力が根底にあるはもちろんなのだが、それを超えた何かが熱狂を生み出すことが往々にしてあるということ。同時にプロレスはパワーや技術だけで勝敗が決まる舞台ではない。そこに感情とか気持ちとかヒラメキとか運とか何かひとつでも王者を上回ったときミラクルが起きる。プロレスの歴史を振り返れば、誰もが予想しなかった幾度となく番狂わせが起きている。
と、あれやこれやと書き綴ってきたが、とにかく世羅vsまる子のICE×∞選手権試合がだいぶ楽しみ!ということに尽きる。
10・9両国KFC大会ではマブダチ厨2病卍卍の桃野も、藤本が持つトライアングルリボン選手権試合に挑む。厳しい一戦にはなるだろうが、なんとかベスフレの間隙をついて桃野、トライアングル奪取→まる子もICE×∞初戴冠→オラオラ新時代幕開けを果たしてくれたら…。
いまアイスリボンには若い&キャリアの浅い選手がたくさんいるが、若手が活躍する団体は総じて面白い。猪突猛進なまる子が世羅りさ絶対政権に風穴を開けたら、アイスリボンはきっと今以上に面白いことになる。何よりベルトを巻いて、今度はうれし涙を流すその姿をリングの上で見せてほしい。
★10月9日(月=祝)東京・両国KFCホール(17:30)
⑥ICE×∞選手権試合(30分1本勝負)
<王者>世羅りさVS長崎まる子<挑戦者>
⑤インターナショナルリボンタッグ王座決定トーナメント準決勝(20分1本勝負)
星ハム子&宮城もちVSトトロさつき&直DATE
④トライアングルリボン選手権試合
<王者>藤本つかさVS桃野美桜<挑戦者>VS中島安里紗<推薦者>
③藤田あかね凱旋試合タッグマッチ(20分1本勝負)
豊田真奈美&尾崎妹加VS藤田あかね&雪妃真矢
②柊くるみ復帰戦(20分1本勝負)
柊くるみ&華蓮DATE&朝陽VS弓李&法DATE&星いぶき
①15分1本勝負
松本都&藤ヶ崎矢子VSLeon&松屋うの
2024-05-15
元アクトレスのエース青野未来はなぜプロレスに帰ってきたのか。マリーゴールド旗揚げ戦は「プロレスラー青野未来として石川奈青に絶対勝ちます」【週刊プロレス】
2024-05-13
【新作情報】「BBM横浜DeNAベイスターズ ベースボールカード2024」開幕戦で本塁打、鮮烈デビューのルーキー度会隆輝など注目メンバーが多いベイスターズの2024年チームパックが発売!!
2024-05-15
【相撲編集部が選ぶ夏場所4日目の一番】大の里、左四つからの攻めをしのいで若元春に連勝し、1敗を堅持
2024-05-14
前人未到のK-1&ボクシングの2冠達成 今こそ知るべき武居由樹の壮絶人生
2024-03-25
【アイスホッケー】「アイスホッケーを続ける」ということ。
2024-04-01
ベースボール・マガジン社の人工芝一覧、導入実績、問い合わせ先 [ベーマガターフ]
2024-05-15
元アクトレスのエース青野未来はなぜプロレスに帰ってきたのか。マリーゴールド旗揚げ戦は「プロレスラー青野未来として石川奈青に絶対勝ちます」【週刊プロレス】
2024-05-13
【新作情報】「BBM横浜DeNAベイスターズ ベースボールカード2024」開幕戦で本塁打、鮮烈デビューのルーキー度会隆輝など注目メンバーが多いベイスターズの2024年チームパックが発売!!
2024-05-15
【相撲編集部が選ぶ夏場所4日目の一番】大の里、左四つからの攻めをしのいで若元春に連勝し、1敗を堅持
2024-05-14
前人未到のK-1&ボクシングの2冠達成 今こそ知るべき武居由樹の壮絶人生
2024-03-25
【アイスホッケー】「アイスホッケーを続ける」ということ。
2024-04-01
ベースボール・マガジン社の人工芝一覧、導入実績、問い合わせ先 [ベーマガターフ]