新型コロナウイルスに対する緊急事態宣言が5月末まで延長され、チーム活動が本格的に再開するまでにはまだまだ時間を要する。外で野球をプレーできない今こそ、家の中で野球を学ぶ時間に充ててみるのはどうだろうか。毎週、ベースボール・マガジン社発行の野球の知識や考え方を深める一冊をご紹介していく。1冊目は『本気でぶつかり本気にさせる 大野康哉 公立高校野球部の育て方』(田尻賢誉・著)を取り上げる。
今年4月から松山商高監督を務めている大野康哉監督。川之江高で指導者としてのキャリアをスタートし、当初は部員10人だった伯方高(現・今治西高伯方分校)を経て、2005年に今治西高の監督に就任。進学校の同チームを春6回、夏5回の甲子園に導いた。
選手を叱咤するために真冬に頭からバケツいっぱいの水をかぶってノックしたという強烈なエピソードをはじめ、時代に逆行した指導は監督自らも認めるところだ。
しかしながら、その根底にはレギュラーではない選手も含めたすべての選手に、高校3年間を後悔させたくないという思いがある。
公立校で甲子園に出場できるチームをつくるテクニックに注目されがちだが、むしろレギュラーではない選手とどう向き合うかが大野監督の指導論の肝だ。だからこそ、スカウティングはしないという信条も徹底している。
「古臭い考え方」と一蹴することもできるが、成果のみが評価され自己責任論がまかりとおる現在の風潮に息苦しさを覚える人にとっては、大野監督の指導論から新しい生き方を見つけるヒントが得られるはず。
自分が持っている知恵や強さ、優しさを誰のために使うべきか。あらためて考えたくなる一冊だ。
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