夏場所(5月13日~27日・両国国技館)がいよいよ開幕します。今場所の一番の注目は栃ノ心の大関取りです。初場所は14勝1敗で初優勝、春場所はケガに苦しみながらも10勝を挙げました。大関昇進の目安として、直前3場所を三役で33勝と言われています。初場所は上位総当たりとはいえ平幕だったので、少し割引が必要ですが、11勝すれば当確だと思います。
先場所痛めた右肩は、「まだ痛みがある」と語る栃ノ心ですが、春巡業後半の稽古、横審総見稽古では圧倒的な強さを見せ、大関の力は十分にあると感じさせてくれました。場所後にはかなりの確率で、大関昇進の使者を迎えることになりそうです。
春場所は初日から休場した白鵬と稀勢の里の両横綱ですが、白鵬は出場してきそうです。春巡業中に父のムンフバトさんが亡くなり、葬儀に参加するためモンゴルに帰郷しましたが、仕上がりは悪くありません。横審総見稽古では、遠藤、御嶽海の両小結を相手に、17番取って16勝と圧倒。横審委員長に苦言を呈された立ち合いは、右肩から当たって右カチ上げを繰り出していました。右肩は相手のアゴの下あたりにヒットさせ、すぐにカチ上げで上体を起こす――かなりの高等技術ですが、短期間で身につけるのは、さすがの運動能力です。
稀勢の里は夏場所に出場するつもりで春巡業も途中から合流しましたが、横審総見稽古の内容を見る限り、万全には程遠い状態です。立ち合いから左を差そうとするあまり、上体がさらに高くなっています。まずは低く強く当たって右上手から取りにいくような相撲に変えればと思うのですが、白鵬と違って器用なタイプではないので、モデルチェンジは難しそうです。さすがにこの状態では出場は考え直すのではないでしょうか。これ以上苦しむのは嫌だ、「ダメなら引退」と腹を括って出場すれば、引退の可能性は高いと言わざるを得ないでしょう。
春場所優勝の鶴竜は運にも恵まれました。13勝のうち引き技による勝利が6番。内容的に負けていた相撲で勝ち星を拾って4回目の優勝となりました。過去の優勝した次の場所は、二ケタ勝てておらず、夏場所も厳しいかもしれません。ただ、状態は先場所よりもよさそうです。
連続12勝の大関髙安は、場所前の稽古で両肩に痛みが走り、満足に稽古ができていません。十分な稽古ができたときに好成績を残しているだけに、多くは望めないでしょう。
優勝争いは混戦になりそうですが、本命には白鵬を推したいと思います。亡き父のために復活優勝をささげたいという気持ちは強いでしょう。現在、70パーセントの状態でしょうが、場所に入ってから調子を上げていくと思います。これに続くのが栃ノ心。大関取りのプレッシャーに負けなければ、2回目の優勝もあるかもしれません。
夏場所では人気力士の遠藤が新小結に昇進します。そのほか新入幕から連続二ケタ勝利の阿炎、大器と言われて久しい豊山が初めて上位総当たりの地位に上がってきました。彼らがどんな相撲で横綱、大関を苦しめるのかも注目です。
文=山口亜土
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