初場所(1月14日~28日・両国国技館)がいよいよ開幕します。九州場所は日馬富士の暴行事件で揺れる中、白鵬が14勝1敗で40回目の優勝を果たしました。場所後には日馬富士が責任を取って引退し、同席していて暴行を止められなかった白鵬と鶴竜の両横綱には、年末の臨時理事会で減給処分が下されました。
さらに横審の北村正任委員長が、白鵬の取り口に関して苦言を呈し、「15日間のうち10日以上も張り手、カチ上げを多用し、横綱相撲とは到底言えない。美しくない。見たくない」という投書が多数寄せられていることを明かしました。
この苦言を受けて白鵬は、「なるべくクセを直していきたい」と取り口を改善する意向を示しました。稽古場でも、ときどき張り手が出てしまうものの、脇を締めて胸から当たっていく立ち合いで相手を圧倒。モデルチェンジを図っています。
優勝候補の本命は、やはり白鵬ということになりますが、絶対的ではありません。取り口を変えても勝てるでしょうが、優勝ラインは下がりそうです。白鵬が張り手、カチ上げを多用するようになったのは、力が落ちてきたからです。張っていけばワキが空きます。カチ上げてくると思ったら、九州場所の嘉風のようにひと呼吸遅らせて立てば、タイミングが狂います。対戦する力士に策がなさすぎる気がします。
たとえば野球で、若いころは剛速球で抑えていたピッチャーが、ベテランになり、変化球主体のかわすピッチングで選手生命を伸ばすのと同じだと思います。プロである以上、勝てなくなったら引退しないといけません。ただ大相撲はスポーツの部分だけでなく、神事でもあるので、横綱の相撲内容としては、批判されても仕方ないでしょう。このあたりの判断は、それぞれ考え方があるので、難しい問題です。
優勝争いの対抗は、鶴竜、稀勢の里の両横綱となりますが、ともに進退が懸かっているだけに出場しない可能性もあります。鶴竜は場所前の稽古では好調ですが、出場に関しては慎重な構えです。稀勢の里はだいぶ戻っている感じはします。
優勝ラインが下がれば、大関以下の力士にもチャンスはあるでしょう。豪栄道は順調に仕上がっていますし、九州場所を途中休場した髙安も復調急です。若手の御嶽海、貴景勝、阿武咲、北勝富士の活躍も楽しみな初場所となりそうです。
文=山口亜土
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