競泳界のジュニアスイマーの活躍を振り返る後編は、先週の男子に続き女子を紹介。女子は、高校生にしてすでにトップの日本代表に名を連ねている選手が複数おり、7月の世界選手権には4名が出場した。彼女たちに牽引されるように中学生にも逸材は豊富。2020年に向けてさらに加速していく様相の女子のジュニアシーンに注目だ。
★世界選手権代表4名が牽引
7月、ハンガリー・ブダペストで開催された世界選手権に出場した高校生は、池江璃花子(ルネサンス亀戸)、今井月(豊川高)、長谷川涼香、牧野紘子(ともに東京ドーム)の4選手。いずれも厳しい基準で知られる競泳の派遣標準記録を突破しての堂々の代表入りだった。
昨年のリオ五輪で大きく飛躍した池江に続けと、今季、世界の舞台で大躍進を見せたのが今井だ。本来は平泳ぎが専門だが、リオ五輪で200m個人メドレーの代表を獲得して以来、「両刀」で奮闘。今やもうひとつの専門種目と言ってもいいレベルまで上げてきている。その今井は、今季も200m個人メドレーで代表権を獲得。リオ五輪で決勝に進めなかった悔しさを胸に、世界に再チャレンジした。結果は、予選、準決勝、決勝と順調に記録を上げ見事5位入賞。銀メダルを獲得した大橋悠依の活躍に隠れてしまった感はあるが、待望の2分10秒の壁を破る2分9秒99で、世界にその存在を知らしめた。
その今井に続けと奮起したのが長谷川と牧野の200mバタフライ代表コンビ。同い年であり、同じクラブで練習する良きライバルのふたりは、「一緒に決勝へ」を目標に世界に挑んだ。結果は長谷川が決勝6位で牧野は準決勝10位。目標は次なるシーズンへ持ち越しとなったが、リオ五輪で準決勝止まりだった長谷川、初めて世界大会に挑んだ牧野ともに、ワンステップアップした夏となった。
一方、今や女子のエース的存在に成長した池江は苦しみながらの世界選手権だった。メダルに届かない位置ではなかったが、それより悔しかったのは、リオ五輪で5位と躍進した100mバタフライで、順位も記録も落としてしまったことだったのではないだろうか。原因は「冬場の鍛錬不足」と、池江自身が十二分に理解しているだけに、来季、ひとまわりもふたまわりも強くなった池江が見られることを楽しみにしたい。
★逸材きらめく高校生、中学生
世界選手権代表に続けと、彼女らの同年代、そして少し下の年代の中学生も躍動した夏だった。
来年にもトップの日本代表をうかがうレベルまで上げてきたのが、世界ジュニア選手権で個人メドレー2冠の小嶋美紅(イトマンSS)。さらにリオ五輪代表ながら今季は世界選手権の代表入りがかなわなかった酒井夏海(スウィン南越谷)も、自己ベストを更新し来季の代表返り咲きに向け殻を破った。
さらに、「池江効果」とも言うべく、自由形短距離が活況だったのも大きな収穫。高校1年生の大内紗雪(ダンロップSC)、中学3年生の池本凪沙(コパン宇治)、難波実夢(MGニッシン)らが飛躍を見せ、フリーリレーの充実という面でも好材料となった。同じ自由形でもやや低調で懸念されている長距離も、佐藤千夏(スウィン大教)の復調、小堀倭加(湘南工大附高)の台頭など、明るい話題が多く、巻き返しに向けた勢いが感じられた。
また男子同様、平泳ぎは中学生・高校生ともにレベルが高く、特に、中学ナンバーワンを決める全国中学は誰が勝ってもおかしくない接戦のレースに。この中から誰が抜け出すか、来季以降も注目していきたい種目のひとつだ。
* * * *
東京五輪の代表は、半数近くが現在の中高生から出ると言っても過言ではない。今季に繰り広げたハイレベルの争いを継続していくことこそ、全体のレベルアップ、ひいてはメダル獲りにつながっていく。
文◎桜間晶子
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