昨年度までのルールであれば、近藤秀一(東大3年)は箱根路を走ることをできなかった。
「正直、自分の箱根駅伝への挑戦は終わったと思っていました」
本人もそう口にする。
箱根駅伝本戦の出場権を得られなかった大学から1名ずつ選出し、構成される関東学生連合チームは、昨年度まで「登録を含む本戦出場が2回を超えない選手」が対象となっていた。近藤は1、2年時に関東学生連合チームに選出されているものの、本戦出場はかなわなかった。
昨年度は予選会でチーム10番手の成績を残していたが、昨年度の監督が予選会の成績ではなく、11月下旬に行われる10000m記録挑戦会の結果を重視したことで、1月2、3日には4、8区の付添をしていた。
他大学のように陸上競技部を強化することができない東大で、予選会を勝ち抜いて箱根駅伝本戦に出場するのは現実的とは言い難い。近藤の箱根路は2回の付添で終わるはずだった。
しかし、箱根駅伝を主催する関東学連は7月27日、関東学生連合チームの対象を「本大会出走回数が1回を超えない選手」としたことを発表した。つまり、近藤にも走るチャンスがまた巡ってきたのだ。
ただ、当の本人は至って冷静だった。
「今年、権利を得たからと言って、1、2年生のときとは少し違います。もちろん、箱根駅伝は走りたいです。だからといって、『箱根を目指そう!』と意気込むわけではなく、今はしっかりと力がついているから、そのまま予選会に臨めば大丈夫だろうと、自然体で、流れのなかで臨むことができました」
昨年までよりも、走力が上がっているのは実感している。
「練習量も積めるようになり、しっかりと負荷をかけるときはかけるし、しっかりと休むときは休みます。メリハリをつけて練習ができるようになったので、効率よく練習ができるようになりました」
その結果の予選会20位であり、10月17日に発表された関東学生連合チームに選ばれた選手のなかで、トップの成績だった。
「できれば1区が走りたいです」
もし、昨年度にギリギリ10番手で出場していたら、希望の区間は叶わなかっただろう。遠回りしたかもしれないが、しっかりと力を蓄えていたからこそ、主張できる権利を得た。1月2日、あこがれの箱根路を駆ける近藤の姿があるはずだ。
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