昨夏、山形で行われたインターハイ。初日の男子400mは、2年生が1、2位を占めた。しかし、3年生が劣っていたかというと、そうではない。実は、新大学生となる世代は力のある逸材がそろっている。

花田シオン/インターハイ決勝で悔し涙

 山形インターハイの大本命は、南関東大会で46秒82をマークしていた花田シオン(東海大浦安高3年・千葉)だった。予選を48秒68、準決勝を47秒31と組トップで順調に決勝へ進出。4レーンからスタート決勝でも、持ち前のスピードで前半から飛ばした。だが――150m付近で脚を肉離れし、転倒。立ち上がることができなかった。表彰台の8位に、誰も立つことはなかった。

 花田は中学から陸上を始め、名門・東海大浦安高に進学後に400m選手として開花。2年時には日本ユースで2位に食い込んでいる。173㎝と小柄ながら、全身バネのような弾む走りで、県大会で47秒12、南関東大会で46秒台と飛躍した。

 インターハイ後は秋に練習復帰。「まだ十分な練習は積めていません」と話しながら、代表に選んでもらった国体、そしてU20日本選手権に出場。まだまだ本調子ではなく、どちらも入賞ならず。それでも、そのスピードと、前半から行けるレースは魅力十分。春からは東海大に進学し、世界を目指して走り出す。

画像: 「ゴムまり」のように全身のバネを生かす花田(写真/中野英聡)

「ゴムまり」のように全身のバネを生かす花田(写真/中野英聡)

井上大地/IH路線欠場も潜在能力はピカイチ

 花田が強く意識していたのが、井上大地(東京高3年・東京)。2016年岡山インターハイの400mで2位、同年秋の国体、日本ユース(U18)を制し、高校ラストシーズンも4月に47秒09と好スタートを切っていた。狙うのは400mと400mHの二冠。しかし、都大会400mのスタートでミスし、焦ってしまいタイムレース予選で敗退してしまう。

 さらに、南関東大会は400mHこそ制したが、4×100mR決勝で脚の付け根を痛めてしまい、その後のレースはすべてキャンセルし、治療に専念。山形に井上の姿はなかった。

 井上の存在は、早くから全国区だった。中学時代は200mと走幅跳を専門とし、国体を制すなど実績は十分。東京高に進学し、大村邦英先生(現・日体大総監督)が400mの適性を見いだし、その才能が花開いた。グイグイと力強いストライドは、会場から感嘆の声が漏れるほど。そのポテンシャルは計り知れない。

 すでに練習に復帰し、日本陸連の合宿にも参加。現在は「もう大丈夫です」と力強い。脚に異常もなく、スピードの高い練習も積めている。4月からは日大に進学。中学時代から走幅跳、200mとその無限の可能性を示してきた井上は、次のステージで完全復活を誓う。

画像: ハードル練習もほとんど積んでおらず、伸びしろを感じさせる井上(写真/田中慎一郎)

ハードル練習もほとんど積んでおらず、伸びしろを感じさせる井上(写真/田中慎一郎)

井本佳伸/誰もがほれ込むマルチスプリンター

 井上が「200m20秒台を出したい」と2年時から常に話していた。なぜなら、井本佳伸(洛南高3年・京都)を意識していたからだ。
 
 井本は名門・洛南高で、100mインターハイ連覇を果たした同級生の宮本大輔と、ダブルエースとしてチームをけん引してきた。
 2年時はインターハイ200m2位、4×100mRと4×400mRの二冠。日本ユース200mも制していた。今季はインターハイ路線を100m・200mと両リレーに絞り、山形に駒を進めていた。

 しかし、100m準決勝を前に脚に違和感を覚え棄権。200mも諦め、涙を流した。それでも、最終日の4×400mRの準決勝から復帰し、最後は46秒19という衝撃的なラップタイムで回り、優勝のフィニッシュを果たした。

 そして9月。国体代表を狙うために出場した400mで、46秒51をマーク。国体では46秒38(高校歴代7位)をたたき出して頂点に立った。10月末の日本選手権リレーでは、4×100mRで3走を務め、39秒57の高校新。またもそのとき脚を痛め、その後、ひそかにプランにあった400mH出場は持ち越しとなった。まだまだ細身で、その類まれなスピードは“諸刃の剣”といえる。その分、伸びしろも十分だ。

 新規の日本陸連ダイヤモンドアスリートにも選出され、アメリカ遠征を行うなど貴重な経験を積んでいる井本。花田と同じ東海大へ進学し、400m日本記録保持者の高野進監督の下、どんな成長曲線を描いていくのだろうか。

画像: 名将・柴田博之先生も、高野進監督もほれ込む逸材(写真/田中慎一郎)

名将・柴田博之先生も、高野進監督もほれ込む逸材(写真/田中慎一郎)

 このほかにも、秋のU20日本選手権を46秒81で制した松尾脩平(長崎南山高3年・長崎→筑波大)、国体準決勝で47秒06をマークした細井ブライアン(前橋育英高3年・群馬→大東大)ら、有力選手がそろう。インターハイのタイトルこそ下級生に譲ったが、決して“谷間の世代”ではなく、むしろ隠れた“黄金世代”だ。

 7月にフィンランドで開催されるU20世界選手権(※今年20歳未満)の代表、そして日本マイルリレーの切り札になり得る世代。2018年は飛躍の年となるか。

(文/向永拓史)

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