大阪桐蔭の連覇で幕を下ろした甲子園だが、同時期の3月27日~4月3日、埼玉県・加須市でもう一つの“センバツ”が開催された。
 加須きずなスタジアムで行われた高校女子硬式野球選抜大会。今年で19回目の開催となり、北は北海道・札幌新陽から南は鹿児島・神村学園まで過去最多24チームが参加した。

 決勝戦は16年夏に日本一を経験した神戸弘陵(兵庫)と初の決勝進出の秀明八千代(千葉)の対戦となった。試合は初回に神戸弘陵が五番・工藤里菜の3点適時二塁打などで4点を先制。このリードをエース・貴志優香が守り抜き、4対0で初の春優勝を果たした。

画像: 決勝戦の1回裏無死満塁で3点適時二塁打を放った工藤

決勝戦の1回裏無死満塁で3点適時二塁打を放った工藤

画像: 決勝戦で7回を完封したエース・貴志

決勝戦で7回を完封したエース・貴志

「質を下げずに量を下げる」
女子ならではの指導

 神戸弘陵の女子硬式野球部が創部されたのは、同校が男女共学となった2014年。そして、初代監督に就任したのが石原康司監督だ。男子硬式野球部で監督・コーチを30年間務め、甲子園には2度出場し、1994年のセンバツではベスト8入り。山井大介(現・中日)らプロ選手も多く輩出している名将である。2012年に勇退し同校広報部長を務めていたが、女子野球部創部にあたり「実績のある監督を」と、白羽の矢が立てられたのだ。

 とはいえ、経験のある石原監督も男子と女子の違いには頭を悩まされたという。
 女子は男子に比べ骨が柔らかく、骨折などが生じやすい。月経なども運動に影響を与える。女子選手の指導経験がなかった石原監督当初、そうしたことを鑑みず、男子の延長のような指導をしていたという。特に、初めての選抜大会(2015年)で準優勝を果たし、監督自身「チームを強くしたい」という気持ちが強くなっていた。しかし、しばらくしてケガ人が続出する事態に陥ってしまった。

 そこで、練習の方針を「質は下げずに量を下げる、あるいは分散させる」という方針に転換。故障リスクの高い投手は、ブルペンに入る日を週に2、3日とし球数も制限。その代わりに、ネットピッチングやシャドーピッチングを行い、強度を減らしながらフォーム固めをするようにしている。また、スマートフォンなどで投球動作を撮影し、確認することで、フォーム修正にかかる球数も減らせられるようになったという。
 また、女子は手首が弱いため竹の棒を使ったリストカールや、精神的なリラックスにもつながるヨガストレッチも取り入れているという。

画像: 春夏連覇にも期待のかかる神戸弘陵を指揮する石原監督

春夏連覇にも期待のかかる神戸弘陵を指揮する石原監督

上手くなりたい気持ちは
男子に勝るとも劣らない

 選手との接し方にも男女の違いはある。
「男子を指導していたころは上から指示を出す一方的なコミュニケーションでしたが、こういったやり方は女子には通用しません。こちらで一方的に決めてしまうとそっぽを向かれてしまいます。何よりも相互のコミュニケーションが大事だと感じました」(石原監督)

 選手とは野球ノートを介してコミュニケーションを図る。とは言え、監督には言いにくい精神面や身体面の悩みは、部長や他の指導者に相談できる環境にしている。また、部全体や学年ごとの話し合いも頻繁に行わせることで、チームの雰囲気を損なうような不和は早めに取り除くようにしている。

 もちろん、男女で変わらないものもある。それが“野球を好きだ”という選手の気持ちだ。
「中学になると女子を受け入れてくれるチームは激減します。なので、よっぽど好きじゃないと高校まで続けません。また、多くの子が親に負担をかけて寮生活をしている状況にあり、その分野球をやりたい、うまくなりたいという意識の高さは男子に勝るとも劣りません。そんな姿を見て、私も一生懸命にやらなければいけないと思っています」(石原監督)

 野球人口の減少が叫ばれる中、近年高校の野球部が増え、プロリーグなどの整備が進んでいる女子野球は増加の見込めるカテゴリーである。しかし、ただ闇雲に選手を増やせばいいのではなく、いかに選手が精神的にも身体的にも健康に野球に打ち込める環境をつくるが肝要だ。神戸弘陵の取り組みは、そのロールモデルとなるだろう。

This article is a sponsored article by
''.