1週間後の5月24日(木)から27日(日)までの4日間、東京辰巳国際水泳場にて行なわれる競泳のジャパンオープン2018。今大会は8月に同じプールで開催されるパンパシフィック選手権(以下、パンパック/8月9~12日)、インドネシアのジャカルタで行なわれるアジア大会(競泳競技は19~24日)というふたつの国際大会の代表選手選考会でもあり、4月の日本選手権で代表内定を得られなかった選手にとっては最後のチャンスとなる。
 そのジャパンオープンで注目すべきチームのひとつが新潟医療福祉大である。首都圏の強豪校に有力選手が流れる傾向が強まる中、土地柄的に高校生のリクルートで不利な環境にありながらも、ここ数年は国際大会の日本代表入りを狙える力を有する選手を複数抱え、競泳界でも存在感を発揮しつつある。

※男子自由形短距離で代表入りを狙う松井
写真:毛受亮介/スイミング・マガジン

新潟から日本代表、インカレシード校を目指して

 新潟医療福祉大は、間近に日本海をのぞむ新潟県新潟市に位置している。競泳部が創設されてから今年でまだ14年目。同校のプールは、長水路(50m)ではなく短水路(25m)だが、泳ぎを観察できる水中窓、陸上トレーニングを行なうための十分な広さが確保されたプールサイドなど充実した練習環境が備わっている。そうしたトレーニング面はもちろん、大学の特徴を生かしたメンタル面、栄養面、リハビリ面で専門のスタッフが選手たちをバックアップ。創部から指導を担っている下山好充監督は、着実に強化体制を整えつつ、全国トップレベルの実績はないものの、北信越、北関東、東北エリアで伸びしろのある選手を中心に勧誘を行ない、大学入学後に成長させてきた。

「創部当初は10年間をひと区切りでトップの日本代表を出すこと、あとはインカレ(日本学生選手権)のシード校(総合得点で男女各上位8校が獲得)になることを目標にしていました。ただ、途中からシード校になる前に日本代表を出すことに重きを置くようになりました。順番が逆なのかもしれませんが、そういう学校があってもいいかなと。ここ3、4年はそうしたアプローチで、ある程度、長水路で結果を出している選手に特化しチーム運営を行なってきた部分もあります。その点を軸にして、チーム全体でもレベルアップし、気づいたらシード校になっていた、という形になれば理想だと考えています」

 国際大会の代表選考を兼ねた4月の日本選手権では残念ながら代表内定となった選手は出せなかったが、それでも計5名の選手が9種目で決勝に進出、2名が表彰台に上った。

国家資格取得に海外での就職――
それぞれの目標に向かって

 チームの軸になるのは、男子自由形短距離の松井浩亮(職員)、女子自由形短距離の佐藤綾(職員)、男子100mバタフライの水沼尚輝(4年)の3選手。ジャパンオープンで代表入りの可能性を秘めている実力者だが、同校に入学してきた背景が三者三様であることも興味深い。

 松井は埼玉県内でトップクラスの進学校である県立浦和高出身。周囲は関東の国立大学への進学を薦めていたが、もともと理学療法士を目指す意向が強く、周囲の反対を押し切って、競泳に打ち込みながら国家資格を得るカリキュラムのある同校を選んだ。現在は大学職員として競技を続けているが、在学中は病院での実習のため、3年時には3週間、4年時には10週間プールを離れることもあった。加えて、気胸の手術を2度しており、2カ月丸々泳げない時期もあり、「大学4年のうち、実質2年くらいしか練習できなかった」(下山監督)という。それでも記録が伸び続けていたこともあり、卒業後も競技を継続し、2020年の東京五輪を目指すことになった。

 すでに理学療法士の国家資格を取得、競技でも2015年には学生の世界大会であるユニバーシアード大会に出場を果たした。そして、この4月の日本選手権でも健闘し、50m自由形の予選では自己ベストを更新し決勝4位、100m自由形では8位に入賞。「まだまだ改善する余地が残されている」(下山監督)だけに、しっかりレースプランを遂行することで記録を追求したいところだ。

画像: 4月の日本選手権では50m自由形で3位に入った佐藤(右) 写真:毛受亮介/スイミング・マガジン

4月の日本選手権では50m自由形で3位に入った佐藤(右)
写真:毛受亮介/スイミング・マガジン

 佐藤は、長野県立長野東高出身。下山監督が高校2年のときから目をつけていた選手で、当時の佐藤の担当コーチとの縁もあって進学を決めた。将来の夢は保育士で、同校ではその国家資格を授業で得るカリキュラムはなかったが、通信教育で資格を取得できることを調べ、競技に打ち込みながら独学で資格を取得した。松井同様、2015年のユニバーシアード大会出場も果たし、現在は職員として競技を続け、4月の日本選手権では50m自由形3位、100m自由形5位に入っている。女子の400mフリーリレーメンバーは頭一つ抜けた池江璃花子(ルネサンス亀戸/淑徳巣鴨高3年)以外の出場確定者がいないため、十分にチャンスが残されている。

画像: 五輪金メダリストの萩野の高校の後輩でもある水沼。内定者のいない種目だけに、何とかチャンスをものにしたい 写真:毛受亮介/スイミング・マガジン

五輪金メダリストの萩野の高校の後輩でもある水沼。内定者のいない種目だけに、何とかチャンスをものにしたい
写真:毛受亮介/スイミング・マガジン

 水沼は栃木県の作新学院高出身。高校までは県内では全国クラスのジュニア選手を多く輩出するクラブを拠点に練習を積んできた。下山監督が栃木県出身ということで、水沼の高校時代のコーチとの親交もあり、入学に至った。高校の2年先輩にはリオ五輪400m個人メドレーで金メダルを獲得した萩野公介(ブリヂストン)がおり、萩野が2012年ロンドン五輪で銅メダルを獲得したあとに出場した国民体育大会では、サイン攻めにあう萩野のボディガード役も務めたというエピソードの持ち主でもある。

 そんな萩野から可愛がられた水沼も徐々に競技者として階段を上がり、大学入学後はさらに成長。現在は代表入りが現実的な目標となるレベルにまできた。将来は海外で仕事をする希望を持っており、海外選手が出場した国内大会でも積極的に親交を図っていたという。2020年東京五輪が当面の目標に置き、2024年のオリンピックも視野入れているため、2020年以降は海外で競技を続ける青写真に描いている。

 男子100mバタフライは、4月の日本選手権で代表内定者が出なかったが、水沼は自己ベストの52秒18をマークして3位。代表内定条件のひとつの指針となる標準記録(51秒76)と少し離れていたが、実はそのレース、水沼はスタートから浮き上がりがうまくいかず、タイムロスしていたことを考えれば、さらに記録を伸ばせる余地を残した結果だった。                   

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 日本の競泳界は関東、関西、東海のビッグクラブや大学が中心である状況下、地方を拠点にした選手が日本代表入りを果たすのは至難の業である。それでも着実に強化を進め、チャンスを広げてきた。あと一歩、踏み出せることができるか。ジャパンオープンでの新潟医療福祉大勢の戦いぶりに注目したい。

文◎牧野 豊/スイミング・マガジン

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