天皇杯の1回戦が5月26日と27日に各地で行なわれた。J1とJ2のクラブを除く各都道府県代表の48チームが登場した24試合のうち、5試合がPK戦にもつれ込んだが、注目されたのが、今大会から導入された「ABBA方式」。すでに国際大会では導入されているPK戦の新方式を、当事者たちはどのように受け止めたのか。

※PK戦開始前、とりぎんバードスタジアムの電光掲示板には「ABBA方式」の説明が掲示された
写真:石倉利英

新方式はやりやすい? やりにくい?

「ABBA方式」は、トーナメント方式の大会におけるPK戦の新しい進め方として、天皇杯では今大会から導入されている。これを「アバ方式」と読むのは洋楽の知識がある人だろうが(ABBA〈アバ〉は1970年代から80代にかけて日本でも人気を博した、『ダンシング・クイーン』などのヒット曲で知られるポップグループ)、ガイナーレ鳥取(J3)とヴェルスパ大分(JFL)が対戦した、とりぎんバードスタジアムでは「エービービーエー方式」とアナウンスされていた。

これまでのPK戦は、先攻と後攻が交互に1人ずつ蹴っていたが、この方式だと先攻の方が有利とのデータがあることから、FIFA(国際サッカー連盟)やUEFA(欧州サッカー連盟)で「ABBA方式」が導入され、昨年のU―20ワールドカップでも採用されていた。先攻のAチームが1人蹴った後、Bチームが2人連続で蹴り、続いてAチームが2人連続で蹴る…という形を繰り返すことから、「A→B→B→A」、すなわち「ABBA方式」というわけだ。

延長を含めた120分間が1―1で終了した鳥取―V大分戦では、PK戦の開始前にアナウンスと電光掲示板の字幕でABBA方式が説明された。コイントスに勝った鳥取が先攻を選んでキックは以下のように進み、鳥取が4-2で勝利を収めている。

1.鳥取=○
2.V大分=○
3.V大分=×
4.鳥取=○
5.鳥取=×
6.V大分=○
7.V大分=×
8.鳥取=○
9.鳥取=○

双方が2回連続で蹴る際の2人目で失敗する流れを繰り返したのち、最後は鳥取が2人連続で成功して決着がついた。鳥取の森岡隆三監督は、相手が失敗した後の鳥取のキッカーが2人とも成功したことを踏まえ、「(ABBA方式は)初めてでしたが、失敗が連鎖してもおかしくない状況で、よく決めてくれた」とコメント。V大分の須藤茂光監督は「昨年、アンダーカテゴリーの世界大会で試験的に導入されていたのを見ていたので、そんなに違和感はなかった。選手も違和感はなかったと思います」と語った一方で、「ただ、GKは2回続けて守るので、フィールドプレーヤーよりもプレッシャーが大きくて、大変ではないか」と感想を述べている。

そのGKは、どう感じたのか。勝った鳥取の井上亮太は、「2本チャンスがあるので、自分が1本でも止めれば、次に自分たちが2本蹴って決めることで、リードできる。2本のうち、どちらかを止めようという気持ちでできるので、やりやすかったです」と語った。敗れたV大分の姫野昂志は「今までの(方式の)経験もあって、リズムが変わるので、やりづらさ、流れを(自分たちの方に)持ってきづらい面はありました」と対照的だ。

この日の失敗は3人ともキッカーが枠を外す、もしくはクロスバーに当てたもので、GKのセーブはなかった。勝敗による違いを差し引いて考える必要はあるものの、両GKの受け止め方、心理状態は興味深い。また、鳥取の森本悠馬GKコーチは「続けて蹴る2人のキックが、ゆっくりした助走からGKを見て蹴る選手と、速い助走から思い切り蹴る選手など、タイプの違う2人が並んでいると、GKはタイミングを取りづらいかもしれない」と語った。今後はキッカーの選び方・順番の決め方で、これまでとは違う意識が求められる可能性もありそうだ。

ABBA方式は天皇杯だけでなく、YBCルヴァンカップでも採用されており、早ければ6月9日のプレーオフステージ第2戦で実施される。新しいPK戦の方式は、それぞれのトーナメントの行方にどんな影響をもたらすのだろうか。

取材◎石倉利英

画像: 鳥取の4人目が蹴る直前の様子。後攻のV大分が先に4人目まで蹴り終えてから、鳥取の4人目と5人目が蹴った

鳥取の4人目が蹴る直前の様子。後攻のV大分が先に4人目まで蹴り終えてから、鳥取の4人目と5人目が蹴った

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