スペイン・サッカーにおける選手育成の基本的な考え方を2人の指導者による問答を通じて紹介する(5回連載)。質問者は日本人として最年少でスペイン・サッカー協会公認の上級ライセンスを取得した倉本和昌さん、答えるのはアスレチック・ビルバオで育成に長く携わっているランデル・エルナンデス・シマルさん。
 倉本さんの「問い」に「あなたはどのように答えますか?」。
(出典:『ジュニア年代の考えるサッカー・トレーニング 4』)

※上のメイン写真=ロシア・ワールドカップに向けてトレーニングに励むスペイン代表の選手たち。
写真/gettyimages

倉本 育成年代の人数制に関して聞きたいと思います。スペインでは7人制から11人制、日本では8人制から11人制に移行します。その移行期間にトレーニングで注意すべき点はありますか?
 日本では、8人制に特化した戦い方をしてしまうチームがあるようです。

ランデル スペインでも、「7人制から11人制へどうすればスムーズに移行できるか」は盛んに論議されています。しかし、「こうすればいい」という決定的な答えは出ていないのが実情です。そもそも、人数制自体にも同じようなことが言えます。ビルバオは7人制ですが、ビルバオのあるビスカイア県に隣接するギプスコア県のサン・セバスティアンでは8人制を取り入れています。隣国フランスは9人制です。これらの地域は狭いエリアにありますが、これだけ違うのです。
 ここ10年、サッカーは劇的な変化を遂げました。人数制に関しても、7人制と11人制の間に大きな溝をつくるのではなく、徐々に、変化していくようになりました。長年の努力の結果、少しずつ良くなっていますが、育成手順の完成はまだ先でしょう。
 個人的には、11人制へ向けてのステップが多いほうが選手は順応しやすくなると考えています。

倉本 ステップとは?

ランデル 例えば、導入期には5人制、つまりフットサルでスタートします。その後、7人制、9人制を経て11人制へ進むのです。

倉本 そのように細かいステップを踏むことで選手が順応しやすくしていくのですね。

ランデル 目的のレベルまで一気に駆け上がったり、ステップを飛ばしたりするのではなく、小さなステップを一つずつ上がって行くのです。もちろん、人数を変えるだけでなく、グラウンドの広さも変えるようにします。
以前、アスレチック・ビルバオのグラウンドを改修する際、少年用の11人制コートのラインを引くように提案しました。『インファンティル(12-13歳)』は11人制でプレーしますが、少し小さいコートでプレーするようにしたかったからです。

倉本 僕も、12歳くらいの選手にとって7人制コートは狭く、11人制コートでは広すぎると感じたことがあります。

ランデル 子供の発育と同じです。生まれたばかりの子供は狭いエリアで生活しますが、発育とともに行動範囲を広げていきます。同様に、サッカー選手も狭いコートから、大きなコートへとすべきなのです。コートがいきなり大きくなりすぎると状況を把握するのが難しくなり、自分の位置が分からなくなります。
 7人制のシステムは「1-3-2-1」や「1-2-3-1」などであり、3ラインはありますが、各ラインは少人数で構成されます。そこから8人制、9人制にしていくと、人数と関係性が増え、11人制に近づくことになります。しかし、人数を徐々に増やして11人制にすれば十分とは思えないのです。なぜなら、正規のフルコートはスペースを把握するには広すぎるからです。

倉本 確かに、7人制や8人制でプレーすることが目的ではなく、11人制で正しくプレーすることを目指しているわけですからね。11人制になったとき、「自分がどこにいるのか分からない」という選手が生まれるのは、あるべきステップを抜かしたからかもしれません。〈①終了。②へ続く〉

倉本:「7人数制から11人制へどう移行すべきなのでしょう?」

ランデル:「人数以外の部分でも細かいステップを経るべきです」

画像: ランデル:「人数以外の部分でも細かいステップを経るべきです」


左写真:ランデル・エルナンデス・シマル(LANDER HERNANDEZ SIMAL)/1976年、スペインのビルバオ生まれ。20年以上の指導キャリアを持ち、日本に関する知識も豊富。2002年からアスレチック・ビルバオの育成部でプロコーチとして働いている。また、選手向けのクリニックと指導者講習会で日本での指導経験もある。『スペイン公認上級ライセンス(日本のS級に相当)』保持者で、弁護士資格も保有している

右写真:倉本和昌(くらもと・かずよし)/1982年、広島県生まれ。広島市立舟入高校卒業後にスペインへ渡り、2009年に日本人最年少で『スペイン公認上級ライセンス(日本のS級に相当)』に合格し、同年、帰国した。湘南ベルマーレや大宮アルディージャの育成コーチとして活躍した。現在は指導者向けのセミナーを開催している

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