※銀行員として多忙な日々を送る中、キツい種目でベストを尽くす鮫島
写真:小山真司/スイミング・マガジン

猛者ぞろいの400m個人メドレーで戦った大学時代

 夏の国際大会日本代表の選考会も兼ねた5月のジャパンオープン2018。男子400m個人メドレー(4個メ)B決勝(決勝進出を逃した予選9位~16位の選手が泳ぐレース)のスタートリストに「鮫島渓太(アテナAMC)」の名前を見つけた。鮫島は社会人になって5年目。仕事優先の生活の中で競技を続けていたことは風の便りで知っていた。にもかかわらず、競泳種目の中でも体力を要する種目の一つである4個メで4分22秒97(予選15位)の記録、しかも4月の日本選手権よりタイムを上げてのB決勝進出に、「お~、頑張ってる!」と思わず心の中で呟いた。

 鮫島はジュニア時代から全国大会で優勝経験もあり、明治大時代には日本選手権(および国際大会代表選考会)決勝に顔を出すなど、国内トップレベルで活躍した選手だ。日本代表に届かなかったが、それも無理はない。大学在学中の2010~2013年は日本の男子4個メが隆盛を迎えていた時期で、戦ってきたメンバーがとにかくすごかった。上の世代には2個メも得意とする髙桑健(自衛隊体育学校)、2011年世界選手権(上海大会)で日本人男子史上初の同大会4個メのメダリスト(銅)となった堀畑裕也(現/愛知・豊川高コーチ)、下の世代には飛ぶ鳥を落とす勢いで飛翔していた高校時代の萩野公介(現・ブリヂストン)と瀬戸大也(現・ANA)、同期にはこの夏のパンパシフィック選手権200m個人メドレーの代表権を獲得した藤森太将(木下グループ)らがいた。すべてオリンピックのファイナリストとメダリストたちばかりである。

 そんな当時の種目情勢だったこともあり、コメントをいただく機会も何度かあった選手だったので、久々に声をかけてみた。

目標はオリンピックプールでの選考会
そして――

 現在、鮫島は埼玉にある武蔵野銀行の行員として多忙な日々を過ごしながら、スポーツジムに赴き、練習を続けているという。

「仕事が終わるのは、夜の7時半から8時くらいなので、そこからスポーツジムに行って、1回3000mくらい泳いでいます。限られた時間ですので、400mのレースペースで泳ぐ練習が中心です」

 近年では日本選手権やジャパンオープンに出場する三十路過ぎの選手も徐々に増えているが、多くは短距離種目(ちなみに今大会、50m自由形に出場した43歳の原英晃/ヴィンチトーレが最年長)。いくら学生時代の蓄積があるとはいえ、限られた練習量の中で、4個メで次ラウンドに進む記録レベルを維持するのは至難である。鮫島が得意な平泳ぎ含め、200m以下の種目にシフトすることは考えていないのだろうか。

「(仕事優先で競技に取り組んでいる)短距離の選手からは『よく、4個メが泳げるね』と言われたりもしますが、自分としてはそう思っていません。なぜ? ですか? やっぱり4個メがS1(専門種目)という感覚があるからです。自分の種目を普通に泳いでいる感じです」

 自己ベストは大学1年時(2010年)の4分16秒54、社会人になりたての2014年に4分17秒82をマークした4月の日本選手権を最後に仕事優先の生活にシフトし、バリバリの競技者からは一歩引くことになった。今大会の予選の記録は、それ以降では自己ベストだったが、過去の自分と比較してしまうことはないのだろうか。

「やっぱりありますよ。特に練習タイムについては比較してしまうときがあります。でも、そこは割り切ってやっていますし、“タイムにこだわり過ぎない”スタンスで取り組んでいます。だから今の状態でも今の記録が出ていると思います」

 日本代表を目指すのは難しいけど、今の環境でも可能な限り、トップレベルの空気に触れていたい――そんな感覚があるのかもしれない。

 最後に、今後の目標を尋ねてみると、イキな答えが返ってきた。

「まずは2年後、新設されるオリンピックプールで行なわれる東京五輪の選考会に出場することです。そして、やっぱり、日本の銀行員の中で、一番速い選手であり続けたいですね。短距離では自分より速い人はいるかもしれないので、少なくとも4個メでは」

 しばらくは、いないでしょ、4個メを4分22秒台で泳ぐ銀行員なんて。鮫島以外には――。

文◎牧野 豊

●鮫島渓太 400m個人メドレーのシーズンごとのベストタイムの推移
年度 学年    記録  日本ランク(大会名)  
2010 大学1年  4.16.54  3位 (日本選手権)
2011 大学2年  4.20.38 11位 (国際大会代表選考会)
2012 大学3年  4.20.08 14位 (ジャパンオープン)
2013 大学4年  4.18.87 11位 (日本学生選手権)
2014 社会人1年 4.17.82  5位 (日本選手権)
2015 社会人2年 4.23.07 27位 (日本選手権)
2016 社会人3年 4.24.52 43位 (千葉県室内選手権)
2017 社会人4年 4.25.39 61位 (日本選手権)
2018 社会人5年 4.22.97 23位 (ジャパンオープン)
※記録は編集部に記録が残るシーズンベスト。タイムのあとは年間日本ランキング    
※2018年度のデータは5月31日現在

This article is a sponsored article by
''.