女子の身体特性への
配慮が広まらない現状

 6月29日、日本高等学校野球連盟が平成30年度5月末時点での加盟校数、部員数調査の結果を発表した。硬式の部は4年連続で部員数が減少しており、昨年から8389人減った15万3184人。また、調査を開始した昭和57年度(1982年)以来初めて、新入部員(1年生)の人数が2年生部員を下回ったという。軟式の部では部員数は5年連続減少の8755人で、加盟校数は昨年より8校減った428校となっている。

※野球能力調査に各年代の選手が参加。写真は女子中学軟式チーム府中ピンクパンサーズ
写真:ベースボール・クリニック

 野球人口の減少は深刻な状況となっており、改善のためには裾野を広げていく必要がある。そこで注目されているのが女子野球だ。硬式野球では2010年に女子プロ野球リーグが開幕、女子硬式野球部のある高校も増えている。軟式野球も13年には児童の全国大会「NPBガールズトーナメント」、16年には中学生の全国大会「全日本中学女子軟式野球大会」が発足し、硬式・軟式ともに活性化が進められている。

 しかし、女子野球のハード面は整ってきたものの、ソフト面においては万全の環境であるとは言えない。女子は男子に比べて筋力が弱く、関節も軟らかい。また、女性アスリートが陥りやすい「栄養不足」「無月経」「骨粗鬆症」という3つの症状もある。女子野球の現場ではそうした身体的な性差への理解や配慮が広まっておらず、また、練習内容の強度の基準となる投力・打撃力・走力のデータ測定も行われていない。
 男子と同じ規格のグラウンドや道具、同じトレーニングを行っていることが多いのが現状であり、障害の増加が懸念される。

画像: 運動能力の測定を行う三鷹クラブWの選手 写真:ベースボール・クリニック

運動能力の測定を行う三鷹クラブWの選手
写真:ベースボール・クリニック

女子野球の規格の
基礎となるデータを調査

 こうした状況を変えるべく、行動を起こしたのがフリーライターの飯沼素子氏だ。すべての研究の土台となる女子選手の運動能力の実態を明らかにすることを目的に、17年3月より飯沼氏が主体となり「女子軟式野球選手の運動能力調査」を開始したのだ。
 調査は国内で軟式野球に取り組む女子中学生324人・高校生53人・大学生114人・社会人25人を対象に、①50m走、②ベースランニング、③投球速度、④遠投距離、⑤バットスイングスピードの5項目を測定した。集計結果は、飯沼氏が運営するサイト『がんばれ! 女子野球』(http://girls-bb.com/)にて閲覧することができる。

 今後、男子中学生の同項目の測定結果との比較や野球経験年数によるパフォーマンスの比較など、調査結果を多角的に分析し、年代別に論文にまとめる予定だという。
 飯沼氏はこの調査の意義について、以下のように語った。

「女子野球は大正時代に『女子の美徳に反する競技』と定義され、以来女子が野球をすることが認められない、定着しないという悲しい状況がつい最近まで続いてきました。しかし近年、野球人口減少を背景に女子野球振興が進められ、軟式では中学でも野球を続ける選手が急増し、指導者もまた、真剣に指導する人が増えました。とは言え、今後さらに女子野球が発展していくためには基礎となるデータが不可欠であると思い、調査を行いました。現在はデータがない状態でさまざまな規定が決められていますが、今回の調査内容が科学的根拠に基づいた規定づくりやトレーニングメニューの考案、野球用具の開発など、女子野球の発展につながればと考えています」

 ただ数を増やすことが野球の振興ではない。選手の健康や将来のことを見据えた適切なプレー環境をつくりあげることが、野球界の再びの隆盛につながるはずだ。飯沼氏の取り組みが、女子野球のみならず野球界全体の発展に続く一歩となることに期待したい。

↓飯沼素子氏が運営するサイト「がんばれ! 女子野球」

This article is a sponsored article by
''.