今から約3か月前、森保一 U-21日本代表監督(東京五輪代表監督)は、西野朗技術委員長の日本代表監督就任に伴い、A代表のコーチを兼任することになった。それは急転直下の出来事に違いなかったが、ロシアで日本代表スタッフとして戦った経験は、森保コーチ自身の今後の指導キャリアに大きな影響を与えるものとなったようだ。
田嶋幸三会長の言う『オールジャパン』の一員となったときからコーチと監督の関係の中で接してきた西野朗とは、森保コーチにとって、どんな人物だったのか。大会中に、合宿地カザンで聞いた。

取材◎佐藤 景 写真◎JFA

ロシアW杯ではコーチとして日本代表チームを支えた森保一氏。今後は東京五輪代表監督として、国を背負って戦うことの意味と重みを選手に伝え、チームを率いていくことになる

度胸と覚悟を、この局面で出せる凄さ

初戦、第2戦と勝ち点を積み上げ、いよいよ決勝トーナメント進出がかかる3戦目に臨む。森保コーチと会話をかわしたのは、そんなタイミングだった。
まずは下馬評を覆し続けている日本代表について。どんな様子なのか、何が好結果を生んでいるのかをたずねた。

「(西野)監督がほんと、チーム全体もそうですけど、リラックスしていると思います。厳しい戦いというのは僕も含めてみんな覚悟していますけど、でもこの世界最高の雰囲気を楽しませてもらっていますね」

ポジティブな雰囲気がチームを包んでいるのは練習の様子からも伝わってきた。それでも、それだけで世界に伍していけるわけではない。今回のチームの何が長所なのか。とりわけセネガルに2度リードを許しながら追いついたことは、日本代表の成長を示すものではなかったか。森保コーチ自身はそのあたりをどう感じているのか。

「その点は明言できないですけど、データに表れない、目には見えない力の差とか、(これまでは)世界と日本にはあったかもしれない。でも、その中で日本が追いついてこれた。もちろん、世界からまだ学ばないといけないことはあると思いますけど、2点を追いつけたってことは日本人のメンタリティーがすごく出ていると思います。タフに粘り強く我慢強く戦い続けるということを、チームとしても個人としても出せた結果なのかなと思います。監督もそういう風なことを言っていましたし。試合を見ながらも、それを感じました。 セネガルはフィジカルに優れ、戦術的にも洗練されていたチームでしたけど、一人ひとりが局面で戦って、グループとして組織としても、お互い協力し合って、タフに粘り強くしつこく戦った。セネガル戦はそういう良いところをお互いに距離感を良くして連携・連動するという日本の組織力が現れた試合だったかなと」    

選手としても指導者としても、森保コーチにとっては今回が初めて体験するワールドカップになる。世界最大の祭典と言われる大会は、ほかの大会と何が違うのだろうか。その点についても、あらためて感想をたずねた。

「やっぱり国を背負って戦うという部分、戦争ではないんですけど、やはり国を背負って戦うんだなって。一人ひとりのレベルが高くてチームとしてもレベルが高いのはもちろんですが、そういう思いも含めて、本当に世界最高峰の戦いなんだな、とは感じました」

五輪代表とA代表でカテゴリーは違えど、国を背負って戦うという部分は同じ。五輪代表を兼務する森保コーチにとっても、貴重な経験になったに違いない。

 そして、最も聞きたかった質問を。「森保コーチから見た、西野朗監督とは?」。

「いつも変わらない、それがすごいことだと思います。自然体なのかどうかはわからないですが、でも、周りから見ると自然体に見える。それで周りも自然体でいさせてもらえる。これは、すごいことだと思いますね」

  では、監督・森保一から見て、ほかの監督と西野監督との違いは?

「度胸と覚悟の部分じゃないですか。度胸と覚悟は、監督みんなが持っているものですけど、それをこの局面で出せるか、と言ったら、そうじゃない。なかなか簡単なことではないですから。すごいことです」

たとえば大会前のテストマッチを文字通りのテストとして使った割り切り。ポーランド戦のローテーション採用と、終盤の『ボール回し』という選択。それぞれの局面で決断を下した「度胸と覚悟」が、西野監督がほかの監督と大きく違う部分なのだろう。   

すでに田嶋会長、そして西野監督自身もロシア大会終了をもって退任すると明言している。後任にはユルゲン・クリンスマンのほか、森保コーチの名も挙がっているが、後任人事の決定はまだしばらく時間がかかりそうだ。森保コーチが、このまま五輪代表を率いるにしろ、仮にA代表の監督に就任するにしろ(あるいは兼任するにしろ)、ロシア大会の経験がプラスに働くのは間違いないだろう。

西野監督はベルギー戦後の会見で、こんな言葉を残している。

「おそらく選手も、すべての力を出し切ったゲームだったと思っているでしょうし、良いサッカーは表現できたと思います。やはり目標としていたこの試合を突破できなかった結果に対しては、成功とは言えない。このW杯の戦いを次につなげていけるかどうかというところが、(日本)サッカー界にとってのこの大会の意義になる。4年後に今大会のチャレンジが成功と言えるようなサッカー界にしてほしいと思います」

西野ジャパンの成否は、これからの4年間でよりはっきりしていくのだろう。今後、森保コーチが率いるチームの歩みも、その成否を決める答えの一つとなる。

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