※今大会の男子4個メはカリシュが圧勝(中)、しかし萩野(左)、瀬戸ともに来年以降につながるきっかをつかんだレースにもなった
写真◎毛受亮介/スイミング・マガジン

 パンパシフィック水泳選手権初日。いずれ劣らぬ3人の五輪メダリストが400m個人メドレーで約1年ぶりに対決、昨年の世界選手権覇者、チェース・カリシュ(米国)が4分7秒95で優勝した。2位はリオ五輪金メダリストの萩野公介(ブリヂストン)でタイムは4分11秒13、3位は2013、15年世界選手権優勝の瀬戸大也(ANA)で4分12秒60だった。

 3人ともに自己ベストにはおよばず。リオ五輪、そして昨年の世界選手権メダリストが顔をそろえたことを考えるともの足りない。しかし、それぞれが目的を全うした、中身の濃いレースになった。特に日本の2人にとっては。

萩野公介
東京五輪へ、本当のスタートラインに

 萩野は、年明けに体調を崩して1カ月もの間練習を休んだことが響き、今季はタイムが振るわず、低空飛行が続いていた。そのため、この夏は、練習を十分に詰めているとはいえない状況で、どこまで納得いくレースができるかが最大にして最重要課題だった。その点で言えば、途中で崩れることなく、淡々とラップを刻み、2位に入ったレースは、今の萩野にとって十分と言える内容だっただろう。本人も「褒められたタイムじゃないですが、今日は予選からちゃんと泳げたということが一番良かったと思います」と、予選、決勝の2レースを泳ぎきったこと、それにほっとしているほどだった。

「今季はすごく自信がなくなったりとか、気持ちの部分で負けてしまったりした部分があったんですけど、それでも今の100%出しきること、自分のレースに集中して全力を出しきることが今、自分に最大限できることだと思って泳ぎました。今までは、緊張すると固くなってしまう部分があったんですけど、今回はみんなの応援もそうですし、会場の雰囲気も良くて、気持ち良く泳げました」

 こう話す表情は、まるで憑きものが落ちたよう。晴れ晴れとして、せいせいとしている。思ったことをストレートに表現できる瀬戸とは違い、心が動いたときほど表情が消える萩野の小さな変化である。そしてこんなことも言っていた。

「今日、泳いでみて僕自身、つかむものがありました」

 リオ五輪が終わってからプロ宣言し、タイムが伸びない中で体調を崩してーーと階段を激しく昇り降りしているような毎日から、ようやく見通しのきく踊り場に出た、しかも、2020年東京五輪への覚悟が決まる場所にーーそんな感じだろうか。

瀬戸大也
「爆発力」を取り戻すために


 瀬戸が今大会で得たかったもの、それは「爆発力」を出すきっかけだ。

 ふたたび世界の頂点に立つためには、かつて世界王者になったときに湧き出たような、とんでもないエネルギーが必要だと考える瀬戸は、ここ数年、あれやこれやと試してきた。しかし、うまくいかない。そこでチェース、萩野に真っ向勝負を挑めるこのパンパックで、序盤からかっ飛ばすという作戦だった。

 しかし、結果は惨敗。背泳ぎ終了の200mを1分58秒63でターンしたあと、平泳ぎに入ると「ガクッときちゃって」ペースダウン、その後はカリシュに抜かれ、萩野に抜かれ、力尽きた。しかし、レース後の瀬戸はいつものように前向きで、そして納得していた。「爆発力」のしっぽをつかんだと感じたからだ。

「前半からこうやって積極的に入っていくと、爆発しそうな予感というんですかね。アドレナリンは出てこないと思うんです。負けたことは悔しいですけど、まぁ、いいレースができたんじゃないかと思います。う〜んでも、練習はできていたからいけると思ったんですけど、難しいですね!」

 捨て身あるいは無謀とも言える選択も、思いきりが良く、楽しいことが大好きな瀬戸だからこそできることでもある。しかも、ぎりぎりでもメダルは死守できる。その勝負勘はさすがというほかない。

現時点での地力はカリシュが上

 では、最後に現世界チャンピオンのカリシュについてだが、どうも彼にとって今年はオフという位置づけだったようだ。

「オフイヤーであっても、一番大きい大会であるパンパックでは優勝したいとは思っていました。萩野が前半から飛ばしてくると思ったのですが、自分のレースに集中し、平泳ぎまで辛抱強く泳げたのが良かったです」

 今回の来日は2年後の東京五輪に向けて視察の意味合いも強いとのことで、着物を購入するなど大会前から東京をエンジョイしていた。オフということであれば納得だが、日本の2人が歯が立たなかったことを考えると、やや複雑な気分ではある。

 ともあれ、3人のチャンピオンが相まみえた400m個人メドレーは、それぞれの今をくっきりと映し出していた。3人は大会3日目の200m個人メドレーにも登場する。どんなレースとなるのか、こちらもとても興味深い。

文◎佐藤温夏/スイミング・マガジン

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