※ワールドカップ等でも来日経験のあるシーボーム。笑顔で質問に答えてくれた
写真◎毛受亮介/スイミング・マガジン

本日で最終日を迎えたパンパシフィック選手権。各種目でハイレベルな戦いが繰り広げられる中、26歳のベテランながら、世界トップクラスのレベルを誇る女子背泳ぎで存在感を放っているのがエミリー・シーボームである。現在26歳、14歳のときに代表入りを果たして以降、長きにわたり活躍を続け、2020年東京五輪での金メダル獲得を目指している。そのシーボームに、大会3日目の決勝前、これまでの選手生活含めてスイマガの独占インタビューを応じてもらった。

――まずは今大会のこれまでの感想を教えてください。100m背泳ぎは激しい戦いとなりました。

シーボーム まず、世界の女子背泳ぎは、これまでになくレベルが高いということです。100mでは、現世界記録保持者(米国のキャサリーン・ベイカー)、前世界記録保持者(カナダのカイリー・マス)、世界選手権優勝者や世界ジュニア記録保持者(米国のリーガン・スミス)がそろいました。これだけ質の高い選手が集まることはそうはなく、日本に来て本当によかったと思います。高いレベルでレースをすることは選手にとって重要で、女子背泳ぎで見ると、今以上にエキサイティングな状況はこれまでになかったと思います。100m背泳ぎでは、結果は2位(58秒72)だったけれども、全米選手権で世界新を出したベイカーに勝ったのは大きな収穫で、自信になりました。

――今大会の結果を自分で評価をすると、どうなりますか?

シーボーム 高い評価をあげて良いと思っています。繰り返しになりますが、世界トップクラスの選手がパンパックに集まったことで私のモチベーションも上がりました。来日するまでは、どのくらいのタイムで泳げるか不安もあったのですが、東京五輪までのスケジュールを考慮すると、良いポジションを作れたと思います。

――スプリントの100m、持久力も必要とされる200m、どちらに優先順位を置いていきますか?

シーボーム 私は両方とも重要視しています。そして100m、200mとも楽しんでいます。100mはスプリント種目で一発勝負の要素が強く、失敗は許されない。200mでは、ミスがあっても取り返すことができる、レース全体を「組み立てる」楽しみがあるのです。ただ最近200mで成功するための持久系のトレーニングが不足しています。女子背泳ぎが短期間に一気に世界的レベルが上がっていることを考えると、トレーニング方法をもっと考えていかないといけません。今大会のレースでもトップと上位選手の差はそれほど大きくはありません。特に米国の選手にとって、今大会は世界選手権の代表選考会にもなっているため、午前中の予選から真剣そのものです。私もがんばります。

――2008年北京五輪で午前決勝を経験していますね。女子選手では数少ない経験者です。

シーボーム 私は午前決勝のほうが好きなのです。なぜかというと、私は完全な「朝型人間」だからです。朝の方が、身体が良く動くことを知っています。だから、決勝が夜10時から始まり、レースが真夜中になるケースもあったリオ五輪は本当につらかった。何ででしょうね。私は朝起きたときのエネルギーが強くて、夜になるとスイッチがオフになってしまうのです。豪州代表の選手の中には、午前決勝をすごく心配している選手も実際にいますが、私は北京五輪に参加経験のある数少ない選手のひとりなので、積極的にポジティブなアドバイスをしようと思っています。何かを大きく変えるということではなく、段々と朝10時に向けてピークパフォーマンスが出るように、生活を合わせていく、ということがカギだと思います。

――長く、世界のトップレベルで競技を続けていますね。それを可能にする秘訣は何でしょうか?

シーボーム やはり最初に来るのは競泳に対する「情熱」だと思いますよ。レースや目標に向かってトレーニングすることが好きなのです。世界トップレベルとレースができるって、素晴らしいことじゃないですか。自分の足りない点は、またトレーニングで修正していく。その繰り返しです。このプロセスに終わりはなくて、「常に泳ぎが良くなるポイントはある」という気持ちでいます。

――2020年東京五輪までの計画を教えてください。

シーボーム およそ2年間あるので、1年ごとに勝負していこうと思っています。今年はコモンウェルスゲームス(英連邦大会)が春にあり、夏は今回のパンパックがメイン。この後、ワールドカップや世界短水路選手権への参加を考えています。その上で、来年の世界選手権を迎えます。豪州は最近、国内選考会の戦略を変えて、米国のようにオリンピック本番の5週間前に選考会を移しました。この方式は今年のコモンウェルスゲームスでも採用されましたが、新しい試みなので、まだどのような結果をもたらすかわかりません。選手としては、決まったことなので、そのスケジュールに向けて調整していきます。もちろん最終目標は2020年東京五輪です。代表に食い込み、最高の結果が出せるよう全力をつくすつもりです。

――今後に向けて、技術面で改善ポイントはありますか?

シーボーム ストロークやレース構成など、技術面全体にフォーカスしています。特にスタートやターンは今、大きく改善できるポイントとして集中的にトレーニングしています。物凄くディテール(細部)にこだわっています。例えば、スタートでは潜る水深などにこだわっています。深すぎず、浅すぎず。最も自分にとってスピードの出る浮き上がり。このポイントを探るのです。本当に細かい部分ですが、これをストロークやターンでも積み上げていくのです。0.1秒でも5つの局面が積み上がれば0.5秒になりますからね!

――生活面での改善も進めていますか?

シーボーム 生活面をあまり細かく管理するタイプではありません。食事面では、栄養のあるものを正しく食べるという基本を守り、何でもよく食べるようにしています。身体を細かく分析して、徹底的に調べる人もいますが、私はその対極にいますね。ただ、専門家のアドバイスはきちんと聞くようにして、生活面全般に反映させようと努力しています。

――トレーニング全般の週間スケジュールを教えてください。

シーボーム 基本は、1週間に水中トレーニングを8回のサイクルで行ないます。完全休養は毎週日曜日。月曜日と水曜日に2回練習を行ないます。あとは1日に1回の水中トレーニングです。ウェイトトレーニングは火曜日と木曜日に入れています。身体のコアの強化にフォーカスしたトレーニングを月曜日と水曜日に別に組んでいます。また、自分の馬を持っていて、火曜日と木曜日、金曜日の午後に、メンタル調整のために、乗馬を組み入れています。泳ぐ距離は、もちろんターゲットとするレースから逆算するので、そのトレーニング局面によって変わりますが、泳ぐときでも1回の水中トレーニングで6000mくらい、2回練習のときで、1日約1万mです。

 私は26歳なので、正直にいって、競泳選手としてのキャリアは最終章に近づいています。ですので、今大会も含めて、一つひとつの体験をすごく大切にできるようになりました。これだけ長くやって、ようやく、世界中のトップ選手とレースができる「経験の深み」を感じるようになったのです。東京五輪までさらに成長していきますよ!

文◎望月秀記/スイミング・マガジン

●Profile
Emily Seebohm◎1992年6月5日生まれ、豪州・アデレード出身。身長180cm、65kg。14歳のとき、2007年メルボルン世界選手権に出場して以来、2011年上海大会を除く5回の世界選手権に出場し、15年カザン大会では100、200m背泳ぎ2冠、17年ブダペスト大会では200m背泳ぎで金メダルを獲得。オリンピックは2008年北京大会、12年ロンドン大会、16年リオ大会と3大会連続出場中で、08年北京大会では400mメドレーリレー、12年ロンドン大会では400mフリーリレーで金メダルに輝いている。

※アリーナはパンパシフィック選手権2018のゴールドパートナーです。

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