文&写真_本間 暁

 注目のWBO世界フライ級タイトルマッチ12回戦、チャンピオン木村翔(青木)対挑戦者1位・田中恒成(畑中)は、9月24日(月・祝)、愛知県名古屋市の武田テバオーシャンアリーナで、午後4時ごろゴングが打ち鳴らされる。

 とうとうこの日がやってくる。試合決定からここまで、指折り数えて待ち構えていたボクシングファンは大勢いるだろう。ボクシングファンの試合までの楽しみ方といえば、「試合展開をあれこれ想像する」のもかなり重要なポイント。みんな勝手気ままにいろいろ考えているんでしょう。

 かくいう私もそんなひとり。しかも今回は、両選手を取材させてもらう機会に恵まれたのだから、頭の中は、「脳内ファイト」でパンパン。昨日は、寝ては1時間おきに起き……を繰り返していたのだが、明け方、ついに夢にまで見てしまった。

 会場が武田テバオーシャンアリーナだったかは定かでないが、さあ、いよいよ始まる!って、心臓をドクドクさせながら指定の席を探す。が、そこにはなぜか先客が。若いおにいちゃんだ。
「すみません。そこ私の席ですよ」
「ああそう」
……といって、あんちゃんスッと隣に移動する。
私、席に荷物を置く。
で、ちょっと所用で離れようとしたら、あんちゃん、なぜか私の荷物を抱えてるではないか。
「ちょっと、何してんの!」
「あ?」
 いかん、こんなときに揉め事を起こしたらマズイ!
……ってとこで目を覚ました。時計を見たら、朝6時。
 試合とはまったく関係のない夢を見てしまったが、私もすっかりファイトモードになっているというわけだ。血圧も熱も測ってないが、この1週間はどちらもけっこう上がっていたと思う。

カメラを向けたら、指でお金!? のかたちをつくる。木村はまだまだハングリー

 木村翔は、EXILEのメンバーのような風貌だけど、戦い方や武骨さは、実に“昭和の香り”を漂わせる。それに、出稽古に行くときは、バックパックにイエローのヘッドギアをくくりつけて──なんて、まるで宮本武蔵の道場荒らしだ。容姿や趣味は派手で今風なんだけど、孤高のサムライみたいなんだよなぁ。肝心のボクシングは、ド派手なビッグパンチを振り回す“本能系”。でも、きっとそれは練り上げられた末の策略。本人は、とぼけた様子でいるけれど、ただただ感覚で戦えるほど、世界タイトルマッチの舞台は甘くはない。
 

ボクシングIQの高さはピカ一の田中。けれど、普段は23歳の自然な青年。実はドラマ好きだったりする

 田中恒成は、とにもかくにも“自分”を持っている。それは取材の際の対話でも明らかで、ボクシングについては具体的だけど、思考については抽象的な表現が多く、毎回、それを読み解くのが独特の緊張感をはらんでいて、でも、とても心地よいのだ。そして、彼のトレーニングを見るのがたまらなく好き。井上尚弥(大橋)と同様、シャドーボクシングから始まりすべて、「相手が浮かんで見える」からだ。つまり、相手のイメージを常に抱いて動いているから、気を抜く瞬間がなく、常時リズムが流れているのだ。

 こんなふたりが、激突する。拳を重ねる。技術と体をぶつけ合い、最後はきっと、本能と本能を叩きつけ合うのだろう。

 勝者がいれば、必ず敗者もある。どちらかが勝ち、どちらかが負ける。そのコントラストがあまりにもはっきりしているのがボクシング。残酷な競技である。
 でも、心技体すべてを鍛え上げ、絶対的な自信を持って両雄はリングに上がるのだ。だからこそ、勝者はすべての栄誉を手に入れ、たとえ敗れたとしても美しいのだ。

 われわれにできることは、両雄の戦いから一瞬たりとも目を背けないこと。
誇りを賭けた戦いを、永久に焼きつけたい。

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