左足で強烈なミドルシュートを放ち、チームの2点目を挙げた阿部(写真◎J.LEAGUE PHOTOS)

 J1リーグ2位の川崎Fは、ホームに後期好調の名古屋を迎えた。風間八宏・前監督率いる相手であり、強みも弱みも知る難敵だが、先制、加点、ダメ押しと3つのゴールを集め、反撃を1点に抑えて完勝。この日、FC東京相手に引き分けた首位・広島との勝ち点を4に詰めた(しかも川崎Fは1試合消化が少ない)。

■J1リーグ第27節
 川崎F 3-1 名古屋
 得点者:(川)OG、阿部浩之、小林悠
     (名)前田直輝

裏をかく巧さ

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 裏をかく。辞書で引けば、その意味は「相手の意表をつく。欺く」となる。この日の勝利の立役者、阿部浩之は名古屋守備陣を翻弄し、何度も意表をついた。

 OGで先制し、結果的に決勝点となるチームの2点目をスコア。この34分の得点は、阿部がボックスの外から左足を鋭く振り抜き、ゴール左隅を見事に射抜いたもの。文字通りのゴラッソ(=ファインゴール)だった。

「(ゴールの場面の)前から、何回か(スペースが)空いていたので、それを見越してもっと空いたら(シュートを)打とうと思っていました。あの場面はうまく空いたので。決めたときはどこでも打てたんで、ああいう展開をこれからも作りたいですね」

 ずるずる後退し、距離を空けて警戒を怠った名古屋DFの動きを見逃さなかった。状況を瞬時に把握し、シュートを選択する判断の早さとゴールの枠を正確にとらえる技術が光った。

 68分にも阿部は印象的なプレーを見せている。得点にはならなかったが、ボックスの外からまたもや左足でボールをとらえ、左ポストを直撃するミドルシュートを放った。まず、阿部が自陣エリア付近でボールを拾うや、すぐさま家長にパス。そのままドリブルで持ち上がった家長が放ったシュートは相手に当たり、再び家長を経由して阿部へ。2点目と同じようにボックス手前から鋭く左足を振り抜き、あわやの場面は生まれた。

 マークについていた名古屋DFも、GKランゲラックも、まったく反応できていなかった。前田直輝の追撃ゴールでチームの重心をグッと前に傾けた相手の機先を制すようなプレー。間合いを操り、意表をつく阿部の長所がこの場面にも表れていた。

「今日はそこまでタイミングは外していないですよ。ただ、(相手が)来ない位置から、裏をかくじゃないですけど。一番はやっぱりゴールの四つ角に入れるってこと。あとはDFとキーパーの位置を見て、そこはとっさの判断なんで。これは練習の数が大事だと思いますし、あとは思い切りも大事かなと思います」
 
 ゴラッソも本人にとっては至極、当たり前のこと。確かに状況を見て、シュートを枠に入れることを心掛けるのは、ほかの選手も大差ないだろう。ただ重要なのは、それを遂行できるか否か。阿部はこの日、実際に遂行して、勝利を決定づけた。これが阿部がJ1で得点した試合は、27戦負けなしとなった(G大阪に所属していた時代も含む)。勝負強さも備えている。

「(チームが)勝つのが一番。点を取っても負けたら意味がないから点を取らなくても勝っている方がまだいいし。そりゃあ点を取って勝つのが一番いいけど、それぞれ役割があるんで。このチームの今のフォーメーションなら、ユウくん(小林悠)がやっぱり点を取るチャンスが多いし、ユウくんが取って勝つのがたぶん、みんなが描いているところだと思う。その中で俺とか(中村)憲剛さんとか、アキくん(家長昭博)が取れたら、チームも楽やし、セットプレーの得点も必要やし、バランスよく取れるんが一番いいですけどね。勝つためにいまは個々の役割というか、分担が最近はできているなと思いますね」

 チャンスメーカーであり、連係をスムーズにする前線の潤滑油であり、ビルドアップに関与する一人であり、攻撃的なチームのアタッカーでありながらハードワークで守備を支える重責も担う。大前提はチームが勝つことで、本人も得点数だけに拘っているわけではないが、多様なタスクをこなした上でのゴールはやはり価値がある。しかも、勝利に結びつく得点である。

 この日、川崎Fは名古屋を退け、消化試合が1試合少ない状態で首位・広島に勝ち点4差と迫った。川崎Fの残り試合は7。追われる立場よりも追う立場のほうが重圧がかからず強い、というのが一般的な見立てだ。この日のアベゴールは、J1連覇の福音かーー。そう感じさせる阿部の活躍と、川崎Fの勝利だった。

取材◎佐藤 景 写真◎J.LEAGUE PHOTOS

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