ドイツの年代別代表監督として400試合以上を指揮し、ロシア・ワールドカップに出場したトニ・クロース、トーマス・ミュラーなど、多数のドイツ代表選手の育成に関わってきたベルント・シュトゥーバー氏が「日本サッカー協会指導者講習会」の講師として来日した。来日期間中は山梨県甲府市でジュニア年代(U-11)を対象にしたクリニックも実施。午前は「ドリブル」、午後は「パス」に重点を置いたシュトゥーバー氏のクリニックが行なわれた。今回は午後の「パス」指導の模様をリポートする。
(出典:『サッカークリニック』2018年10月号)

※メイン写真=決定力が高く、ワールドカップでは通算10ゴールを挙げたドイツ代表のトーマス・ミュラー(バイエルン・ミュンヘン)も、シュトゥーバー氏の指導を受けた1人 写真/gettyimages

画像: 午後のクリニックはパス指導に重点を置いて行なわれた。最後のゲーム形式では、それまでに習得してきた「実戦的なパス」を何度も披露 写真/BBM

午後のクリニックはパス指導に重点を置いて行なわれた。最後のゲーム形式では、それまでに習得してきた「実戦的なパス」を何度も披露 写真/BBM

画像: 山梨県甲府市で活動する『エアフォルク山梨』( http://erfolg-yamanashi.com/ )のU-11の選手たちがシュトゥーバー氏のクリニックに参加 写真/BBM

山梨県甲府市で活動する『エアフォルク山梨』(http://erfolg-yamanashi.com/)のU-11の選手たちがシュトゥーバー氏のクリニックに参加 写真/BBM

「実戦的なパスの能力」を高める
アイ・コンタクトの質と
ボールを受けるときの方向づけ

 ベルント・シュトゥーバー氏のU-11を対象にしたクリニックは午前と午後の2部構成で約1時間半ずつ行なわれた。クリニックは午前は「ドリブル」(10月2日掲載。https://www.bbm-japan.com/_ct/17210509)、午後は「パス」に重点を置いて行なれた。

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 約1時間の休憩を挟み、「パス」に重点を置いた午後のクリニックが始められた。
 ウオーミングアップを行なったあと、大きなグリッドを使ってグリッドの中と外に子供たちを半分ずつ配置した。ボールを持って中にいる子供は自由なドリブルから外にいる子供にパスし、リターン・パスを受けるというメニューだった(図1)。
「ドリブルしているときの正確なコントロールのほか、パスをするときは受け手とのアイ・コンタクトが必要です」(シュトゥーバー氏)
 このメニューをしばらく行なわせたあと、「リターン・パスを受ける際は次にプレーすべき方向を意識したファーストタッチを心がけましょう」と、タッチする際の方向づけもシュトゥーバー氏は促していた。
 また、メニューの最中には子供たちのキックの仕方に関して「つま先を少し上げて蹴ろう」といった言及もあった。
「つま先を少し上げると足首が固定され、いいボールを蹴れるようになります。『ボールを蹴るときは足首を固定しよう』という言葉は聞いたことがあると思いますが、あまり具体的ではありません。具体的な方法を教え、子供たちが実行できるようにするのが大切なことです」(シュトゥーバー氏)
 同じグリッドを使い、今度はグリッドの中の子供にではなく、グリッドの外の子供たちに手でボールを持たせて並べた。中の子供たちには横に動きながら外からのボールを受け、1タッチで返させた(図2)。
「ボールを受ける動きの質を高めるための練習です。『ボールに対する正確な方向』、『走る角度』、『走るスピード』、『アイ・コンタクト』などが重要な要素でした」(シュトゥーバー氏)
 このメニューのオプションとして、「1タッチでボールを返すときはヘディングで返す」というルールでも行なわせた。その際、「グリッドの中の選手はグリッドの外の選手をゴールキーパーに見立ててヘディングでシュートをしましょう」と話した。豪快なヘディング・シュートを決めた子供にシュトゥーバー氏は大きな声を上げて褒め、会場の雰囲気を盛り上げていた。子供たちは楽しみながら力強くヘディングすることに取り組むことができていた。
 続いてグリッドをさらに広げ、その中で3人1組で三角形をつくってパス交換しながらほかのグループとぶつからないように移動していくメニューを行なった(図3)。
「試合中は動きながらパスできなければいけません。それに、ファーストタッチの前には次にプレーすべき方向も考えられなければいけません」とシュトゥーバー氏は言い、実戦を意識させていた。最初はゆっくりボールを回して移動していたグループも徐々にスピードを高めて移動できていた。
 ここで設定を少し変えた。仲間から受けたボールに対して「1タッチでリターン」と「ドリブルしてからリターン」を交互に行なわせた(図4)。
「例えば『2タッチ以下でボールを回していこう』だけでは、プレー・スピードが一定になってしまいます。でも、ドリブルを挟むとペースを変えることにもなります。試合状況にさらに近づけることができます」(シュトゥーバー氏)
「パス」に重点を置いた午後のクリニックの最後は、チーム対抗で「4ゴールの『3対3』」を行なわせた(図5)。横長のグリッドを使い、ボール保持側には「幅」を意識させ、相手プレッシャーが少ないほうのゴールを狙う判断や実行力を養うのが目的だった。

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「(午前の「ドリブル指導」と午後の「パス指導」の)クリニックを通して子供たちに求めたのは『みんなで楽しくやる』ということでした。その中でゴールを決める喜びを味わってもらったり、相手に勝つことの大切さを学んだりしてほしいと思っていました。そのためにも全体的にボールに触れる回数が多いメニューを行なってもらいました。また、子供たちに思い切り良くプレーしてもらうためにもポジティブな雰囲気づくりにも配慮しました」(シュトゥーバー氏)
 シュトゥーバー氏は最後、「サッカーで最も大事なのはゴールです」とゴールへの意識を子供たちに再確認させてクリニックを終えた。

トレーニング・メニュー紹介

メニュー1:ドリブル&パス(図1)

画像: 図1 ドリブル&パス

図1 ドリブル&パス

進め方:(1)大きめのグリッドを使用。(2)グリッドの中でボールを持った選手は自由にドリブルしたあとにグリッドの外にいる選手にパス。(3)グリッド外にいる選手は1タッチで返す。(4)これを繰り返す
ポイント:リターン・パスをもらったあとの方向づけ

メニュー2:ボール・コントロール(図2)

画像: 図2 ボール・コントロール

図2 ボール・コントロール

進め方:(1)図1と同じグリッドを使用。(2)グリッドの外にいる選手は手でボールを持ち、中にいる選手に両手で下から優しく投げる。(3)グリッドの中にいる選手はそのボールを落とさないで1タッチで返して横に移動し、別のグリッド外の選手からのパスを受ける。(4)これを繰り返す
ポイント:(1)アイ・コンタクト。(2)タイミング
オプション:グリッド外にいる選手をGKと見立て、グリッド内の選手はボールをもらったらヘディング・シュート

メニュー3:3人1組でのドリブル&パス(図3、図4)

画像: 図3 3人1組でのドリブル&パス

図3 3人1組でのドリブル&パス

画像: 図4 3人1組でのドリブル&パス

図4 3人1組でのドリブル&パス

進め方:(1)3人1組でボール1つ。(2)「三角形」を意識してパスをしながら3人で移動(図3)
ポイント:次にパスする選手の位置を確認する
オプション:来たボールに対して「1タッチでのリターン」と「ドリブルしてからリターン」を交互に行ないながら3人で移動(図4)

メニュー4:4ゴールの「3対3」(図5)

画像: 図5 4ゴールの「3対3」

図5 4ゴールの「3対3」

進め方:時間を設定し、ゴール数の多いチームが勝ち(例えばA=アマチュア・リーグ、B=Jリーグ、C=チャンピオンズリーグ、D=アジアカップ、E=ワールドカップなどと大会名をつけ<大会レベルがAから順に上がっていくイメージ>、ゴール数の多かったチームが1つ上の大会に昇格。負けたチームは1つ下の大会に降格)
ポイント:(1)組織的なプレー。(2)「幅」を考えてプレーし、空いているスペースを効果的に使う。(3)ゴールを意識

画像: 山梨県甲府市のU-11の子供たちに実戦的なパス指導を行なったベルント・シュトゥーバー氏 写真/BBM

山梨県甲府市のU-11の子供たちに実戦的なパス指導を行なったベルント・シュトゥーバー氏 写真/BBM

指導者プロフィール

ベルント・シュトゥーバー(Bernd Stöber) / 1952年9月6日生まれ、ドイツのケルン出身。76年から指導者の道に進む。ブンデスリーガやドイツ各州協会のチーム、U-15 ~ U-20ドイツ代表で監督などを歴任。現在はドイツ・サッカー協会指導者講習チーフインストラクター、UEFAインストラクター、FIFAインストラクターとして指導にあたっている

取材・構成/髙野直樹
協力/一般社団法人メディアブレインユナイテッドアカデミー
通訳/柳沢力

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