近年、「食育」という言葉は浸透してきているものの、栄養についての知識に偏りがあり、「とにかく量を多く摂ればいい」といった勘違いをしているケースも多々見受けられる。技術力の土台となる強くてしなやかな肉体を保つため、そして中高生年代の選手には健全な発育発達を促進するため、「どのような目的で、どのような栄養を、どのように摂ればいいのか」を、あらためて確認したい。
※本記事は、「ベースボール・クリニック2018年10月号」掲載の「野球食レパートリー特別編 栄養のキホン」を一部再編集したものです。

監修=海老久美子(管理栄養士、公認スポーツ栄養士)

普通の形が理想の形

 主食、副菜、主菜、乳製品、果物。これは、健康的な生活を送るために1日にどんなものを食べればいいか、その組み合わせの目安、食事の基本の形です。
 単にごはんが食べやすくなる組み合わせではありません。この組み合わせで食べることで、必要な栄養素を過不足なく摂れる可能性が高くなるという意味があるのです。

 それぞれで摂れる主な栄養素を挙げると、ごはんやパンや麺類の主食は、エネルギー源となる糖質。野菜やきのこ、芋、海藻などの副菜は、ビタミン・ミネラル類。肉、魚、卵、大豆製品などの、いわゆるメーンのおかずとなる主菜は、タンパク質。
 牛乳、チーズ、ヨーグルトなどの乳製品は、不足しやすいカルシウムとタンパク質をフォロー。発酵食品も多いので、おなかの調子を整える働きもあります。果物は、野菜以上に豊富なビタミンCをはじめとするビタミン類と糖質といった具合です(表1)。

画像: 普通の形が理想の形

 何か特別な組み合わせにしなくても、普通にごはんがおいしく食べられるラインアップを整えれば、摂れる栄養素も整ってくることが理解できると思います。効率良く栄養素を摂れる食事の形は、考えているより当たり前の形をしているのです。

多種類で5000kcalを目安に

 さて、高校球児を例にとると、個人差や練習量などによって違ってきます。その上で、1日約5000kcalが摂取エネルギーの目安になります。これは一般的な成人の2倍以上です。
 これが基準ですから、5000kcalを越えないと体は大きくなりません。

 ただ、注意したいのは、単純に5000kcal分を摂取すればいいというものではないこと。5000という数字が一人歩きしてしまうと、よく「三合メシ」と言われるような、とにかく白米をたくさん食べるという方針に走りがちです。
 ごはんの糖質をエネルギー源に変えるには、ビタミンB1が必要ですし、当然のことながら、ほかの栄養素が不足すれば、体づくりができないばかりか故障のリスクも高まります。
 

 何か一つの食べ物を突出させて5000kcalを満たそうとするのではなく、上記の食事の基本の形を網羅して、栄養素を満遍なく摂りながら5000kcalを確保することが大切です。
 食べ物は、食材によって含む栄養素の守備範囲が違います。例えば、この野菜にはビタミンのこれとこれが多く、もう一つの野菜には別のビタミンが多い場合があります。いろいろな種類の食材を食べることで、摂れる栄養素の守備範囲に穴がなくなるわけです。

500kcalは補食でフォロー

 甲子園出場経験のある高校野球部の栄養素の目安量(1食あたり)を紹介します(表2)。
 

画像: 500kcalは補食でフォロー

 1食1500kcalを摂る中で、各栄養素の割合はこれくらいにしたいという目安です。
 このバランスのまま3食摂ると、4500kcalになります。残りの500kcal分は、補食でフォローするといいでしょう。

 補食で気をつけたいのは、球児にとってお菓子ではないということ。運動量が多い体が不足させやすい栄養素や、たくさん使ってしまった栄養素を補うための食べ物だということを忘れないでください。

 朝昼晩の3食を普通に食べられているのであれば、補食を摂るタイミングは、昼から練習前までの間と、夕食まで時間がある練習後。
 補食の内容は、その日に足りていない栄養素が分かっていればそれをメーンとします。大体摂れているようであれば、糖質とタンパク質を基準に、野菜ジュースなどをプラス。糖質は、おにぎりやパン。タンパク質は、乳製品、卵、かまぼこなどの練製品、豆乳などの大豆製品、サラダチキンやハムなど。
 おにぎり1個が約200kcalなので、500kcalはおにぎり2~3個分と考えると全体量が把握しやすいでしょう。

 くり返しますが、補食の目的は補うこと。朝昼晩の食事に影響するほど食べ過ぎないように注意してください。
 
《PROFILE》
海老久美子(えび・くみこ)
立命館大スポーツ健康科学部副学部長。管理栄養士、公認スポーツ栄養士、博士(栄養学)。全日本野球協会医科学部会委員。JOC強化スタッフ。ジュニアからトップまで、各種目のアスリートへの実践的な栄養教育・サポートを実施。著書に『野球食』『野球食Jr.』『野球食のレシピ 』『女子部活食』(小社刊)などがある。

文◎ベースボール・クリニック

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