上写真=広島を去ることになったミキッチのセレモニーで一緒に写真におさまる森崎和幸(写真◎サンフレッチェ広島/J.LEAGUE PHOTOS)

 湘南ベルマーレがルヴァンカップ初優勝を果たした日、かつて所属したサンフレッチェ広島でともにプレーし、数々の栄光を勝ち取った仲間が現役引退を発表した。はたしてミキッチは、どんな思いでいるのかーー。若いチームがタイトルを取った意味について、そして森崎和幸の引退発表について話を聞いた。

タイトルはチームを変える

 ルヴァンカップ決勝では、出番が訪れなかった。だが、広島時代に3度J1タイトルを獲得し、チーム随一の経験を誇るミキッチはピッチ内で戦う仲間に、声を張り上げ、身振り手振りでメッセージを伝え続けていた。 ピッチサイドからではあるが、ともに戦い続けた90分間。試合終了の笛が鳴り、優勝が決まった瞬間には着ていたビブスを天高く投げ上げて仲間のもとに駆け出した。『優勝の味を知る』ミキッチにとって、湘南での初タイトルはどんな意味を持つのか。

「どのタイトルでも、手にすることでチームは成長します。今回手にしたタイトルは私たちに大きな自信を与えてくれると思いますし、残りのリーグ戦を戦うためにも、大きな意味を持つと思っています」

 自身の喜びよりも、まずタイトル獲得がチームにもたらす効果について口にした。年長者として、若いチームを支え、引っ張るという強い思いが、その言葉にこもる。

「マリノスも優勝したいと思っていたでしょうが、大きなクラブですし、どこかでうちを侮っていた部分もあったのかもしれません。そのぶん、うちの方が優勝したいという気持ちが強く、それがゲームに出たのではないでしょうか。そこが勝負を分けたのだと思います。本当にタイトルを取るという強い気持ちがないと、優勝には手が届かない。その意味でうちはみんながどん欲に、スキを見せずに戦ったと思いますし、気持ちの面で相手を上回ることができたのだと思います。私たちは『このタイトルを逃したら次のチャンスはないかもしれない』と考えて、覚悟を持ってこの試合に臨んでいました」

 覚悟。ミキッチが広島でタイトルを獲得したときにも繰り返し口にしていた言葉だ。湘南でも、そのスタンスは変わらない。優勝は、チームを大きく変える。だからこそタイトル獲得は重要で、そのためには選手一人ひとりの、ひいてはチームとしてもクラブとしても覚悟が問われると、かつてインタビューで話していたことがある。ミキッチが人一倍、タイトルへのこだわりを見せるのは、広島時代にJ1優勝を機にチームが大きく変化していくという経験をしたからかもしれない。

カズは人としても素晴らしい

 2012年の初優勝をきっかけに加速度的に成長した広島で、ともにチームを支えた森崎和幸がこの日、現役引退を発表した。ミキッチにとっては1歳年下にあたる選手。3度のJ1制覇という偉業を一緒に成し遂げた仲間だ。思いがあふれたのだろうか。こちらの質問が終わるや、通訳の言葉を待たずに語り始めた。

「Jリーグが、一人の偉大な選手を失ったということなのでしょう。カズ(森崎和幸)は、まず人として素晴らしいですし、選手としてももちろん素晴らしい。若い選手にとって、本当に見本になる選手ですし、実際、多くの選手にとってアイドルだったと思います」

 森崎和幸の現役引退という決断について、何かを言うのではなく、Jリーグ全体にとって大きな損失だという言い方をした。それは森崎和幸の決断を尊重するからだろう。38歳になったいまも現役を続けるミキッチは、『現役引退』という決断の重みを知っている。

「僕自身にとっては…彼と一緒にプレーすることができて、本当に幸せだったと思いますし、そのことに心から幸せを感じています」

 2009年から2017年までの9シーズン、広島で過ごしたミキッチはつまり、ワンクラブマンの森崎和幸と9シーズン一緒に戦ったことになる。当然ながら寂しさはあるだろう。ただ、それを嘆くでもなく、惜しむでもなく、「幸せだった」と振り返った。その事実にも、ミキッチの思いがにじむ。もはや一緒にプレーする未来は訪れないが、ともに戦い、ともに栄光を手にした記憶は消えないーー。

「カズは、とても偉大な選手です」

 最後にもう一度、ミキッチは繰り返した。

取材◎佐藤 景 写真◎福地和男、J.LEAGUE PHOTOS

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