写真上=MVPにも「まだ全日本もあるし」と峯田に浮かれた様子はなかった(写真◎ボクシング・マガジン)

 閃光のように宙を切り裂いた右ストレート。対戦者の体がドッと崩れ落ちた。1秒。いや、0コンマ秒の間、後楽園ホールの時間は止まった。そのパンチ、あまりに切れ味すさまじい。間違いなく、第75回東日本新人王決勝戦のベストパンチだった。なおかつ、崩れ落ちたのは優勝候補の筆頭とも言われた中村由樹(輪島スポーツ)である。さらにフィニッシュも鮮やかだ。すでに足もとのおぼつかない中村をコーナーに追い、サウスポーにチェンジして打ち込んだ左ストレート。再び倒れた中村に対し、レフェリーはカウントを止めてストップをコールした。

 際立つ勝ちっぷりに峯田光(帝拳)は当然ながら、この大会のMVPに選ばれる。だが、試合後のインタビューでは、峯田はどこまでも冷静に見えた。

「まだ、全日本もあるし、途中でそんなに大喜びするわけにもいきません」

 拳の感触も、ここまで左フックでなぎ倒してきたときほどジーンとは響いてこなかったという。

「それほどの手応えはなかったですね。もともと右ストレートはあまり得意じゃないし」

 それでも、この男にはいずれ“軍神”となる予感がプンプンと漂う。とどめのパンチも、瞬時の判断から生み出されたものだ。

「距離から見て、右構えからでは当たらない。だから、左にチェンジして打ちました。これまでにチェンジした経験? ないですね」

 鹿児島県の奄美大島出身。高校卒業後、仲間たちはみんな島を離れた。ひとり残った峯田は町役場でアルバイトしながら1年を過ごすが、寂しかったし、物足りなかった。かつてやっていた極真空手時代を思い出し、「何か格闘技をやってみよう」と島を発った。そして、名門・帝拳ジムでボクシングを始める。

 それから2年。5戦目での最初の“タイトル”。先に峯田自身が語ったように、これはまだ途中経過に過ぎない。まずは12月、全日本新人王戦がある。

「先輩の尾川(堅一)さんに聞いてみたんです。新人王戦に勝つってどんなものですかって。どうってこなかったと言っていました。もっと先に行く人たちにとっては、そうなんだと思っています」

 峯田光の瞳がキラリと光った。

取材◎宮崎正博

This article is a sponsored article by
''.