写真上=無敗の王者バーネット(左)に勝ち、王座に返り咲いたドネア。しかしスピードの衰えは隠せなかった(写真◎Getty Images)

あっけない結末

 日本のビッグヒーロー、井上尚弥(大橋)ほか、4人の世界チャンピオンが出場するWBSS(ワールドボクシング・スーパーシリーズ)で、嬉しい大波乱が起きた。3日、イギリス・グラスゴーで行われた、WBAスーパー世界タイトルをかけた1回戦で、第1シードのライアン・バーネット(イギリス)が、ノニト・ドネア(フィリピン)に敗れたのだ。

 結末はまったくあっけない。バーネットが4回終盤、右パンチを振った直後に腰を押さえて倒れ込む。レフェリーはカウントを数える。バーネットは立ち上がり戦い続けるが、腰をひどく痛めたのは明らかだった。ラウンド終了後に棄権を申し出て、試合は終了することになる。

 それまでの展開は、バーネットが無難にペースを握っていた。左手を下げた構えから、右クロスを立て続けにヒット。2回には左フックでドネアをたじろがせ、3回には右でぐらつかせている。ドネアも2度ほど、コーナーに追い詰めて速いパンチをまとめたが、バーネットは余裕のヘッドムーブで空回りさせている。

井上尚弥のロマン

「勝ちは勝ち。年齢も関係ない」

 と語った35歳の元5階級制覇王者だが、7年ぶりに戦ったバンタム級では、やはり動作の鈍さが目立った。準決勝ではWBO王者ゾラニ・テテ(南アフリカ)と対戦する。鋭いステップインに欠け、テテの183cmのロングリーチを打ち破れるかどうか。初戦を突破した勢いを信じるしかない。

 ともあれ、ドネアの勝利は井上にとっては朗報に違いない。トーナメント出場が決まったあと、井上はドネアとの対戦を熱望した。準決勝に勝ち上がったテテも、あるいは次戦で対戦するIBFチャンピオンのエマヌエル・ロドリゲス(プエルトリコ)、あるいは不運な負傷に泣いたバーネットも現代の軽量級を代表する実力者である。ただし、彼らに世界に発信するネームバリューがあるかとなると、いささかながら疑問符もつく。そして、ドネアはかつて自身のアイドルでもあった。井上はビッグネームに勝って、さらに名声を高めたい。さらに、心の中の“巨像”を打ち破って殻を割り、もうひとつ大きな世界にと飛び立ちたいのだ。

 井上のロマンが現実になるには、ドネアがテテに勝ってもらうしかない。予想はテテ有利だが、11秒KOで名を売ったこの長身パンチャーには、もろさも同居する。あるいは、この夢は叶うかもしれない。

文◎宮崎正博

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