※写真上=副作用を説明しすぎるとノシーボ効果が表れやすくなる
写真◎PIXTA

プラセボ効果とは反対に、マイナスの思い込みで副作用が出るノシーボ効果

プラセボ効果の反対の意味を持つ「ノシーボ効果」という言葉があります。
プラセボ効果では、この薬は効くという患者さんの思い込みや期待感があると、薬が効き目のない偽薬であっても、症状が改善したり、治癒したりすることをいいます。
そのメカニズムはわかっていませんが、通常の薬でも期待感を持って服用すると、薬の効果にプラシボ効果もあいまって、より高い効果が期待できる可能性があります。

ノシーボ効果は、プラセボ効果とは反対に、この薬は効かないのではないか、副作用が出るのではないかといった、悪いことが起こるという思いこみや予感があると、薬が効かなかったり、めったに出ることのない副作用が出てしまったりすることをいいます。

最近の医療現場では、薬を処方するときに、薬の効果だけでなく、副作用についても詳しく説明してくれます。医師として副作用を患者に説明することは当然必要なことです。
一方で、ほとんど起こる可能性がない副作用をことさら過剰に説明することにょって、強い思い込みが生まれて、副作用が出ることがあるという話や、副作用の発生が多くなるという話を、取材先から聞くことがあります。

身体というのは自分が思っている以上に心と結びついています。
病は気からということですが、副作用も気持ち(心)からというケースもあるわけです。
病気を治すときに、正しい知識を持って治療にあたることは大切ですが、ことさらマイナスの面ばかりに目を向けてしまうのはよくありません。
プラスの面に目を向けて、効果を信じて前向きに取り組むことが大切です。

イップスもマイナスの思い込み

話は飛躍しますが、ノシーボ効果から、野球のイップスを想起してしまいます。
イップスになるきっかけはさまざまですが、例えば、内角に鋭く切り込むピッチングが持ち味だった投手が、危険球をきかっけにイップスに陥ったというケースは、典型的な例の一つです。
危険球を投げてしまうのではないかというマイナスの面に目が向き、イップスの状態に陥っていく姿が、ノシーボ効果で副作用が起こり、苦しんでいる患者さんの姿と重なってしまうのです。

そのイップスと言えば、「けんいち」16号で認知神経リハビリテーションの先生を取材した際に、克服のヒントとなる映像を見る機会がありました。その映像は、ドアをくぐって向こうに歩いて行けない患者さんの治療の様子を撮ったものでした。(※認知神経リハビリテーションは、認知症のリハビリではありません。)

患者さんは、体にも精神にも何も異常がなく、普段は普通に歩けるのに、ドアの前に行くと足がぴたりと止まってしまい、踏み出そうと何度も試みてはみても、床から足が上がらず、どうしてもドア敷居をまたぐことができません。野球でいえば、まさにイップスの状態です。

その患者さんに認知神経リハビリテーションの先生が行ったのは、ドアの向こうに行くための足の踏み出し方とかドアのくぐり方とかではありません。ドアがなければ普通に歩けているのですから、体はすでにそれは知っています。また、踏み出す勇気を出させたり心を鍛えたりするようなメンタルトレーニングでもありません。

患者さんに対して行われたのは、ただ、行動を妨げているドアの存在を意識しないようにすることでした。指導を開始してわずか数十分、それまでできなかったドアをくぐって向こうに歩いて行くことが、なんの躊躇もなくスタスタとスムーズにできるようになったのです。

その様子を見たとき、イップス克服の根本的な部分がわかったような気がしました。
もしもイップスを治す過程で行われるべきことは、イップスだと思わないことであり、デッドボールや危険球を気にしないこと。イップスにとらわれていた心を解放し、自分の本来のピッチングを信じて思い切り投げることなのでしょう。

認知神経リハビリテーションからイップス克服の方法が確立されることを密かに願っています。

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