近年、「食育」という言葉は浸透してきているものの、栄養についての知識に偏りがあり、「とにかく量を多く摂ればいい」といった勘違いをしているケースも多々見受けられる。技術力の土台となる強くてしなやかな肉体を保つため、そして中高生年代の選手には健全な発育発達を促進するため、「どのような目的で、どのような栄養を、どのように摂ればいいのか」を、あらためて確認したい。

※本記事は、「ベースボール・クリニック2018年11月号」掲載の「野球食レパートリー特別編 栄養のキホン」を一部再編集したものです。

監修=海老久美子(管理栄養士、公認スポーツ栄養士)

体づくりを考える上で
チーム一律の食事ノルマは不要

 高校球児の年間でのコンディショニングは、大きく「トレーニング期(体づくり期)」と「試合期」に分けられます。
 夏の地方予選をピークと考えると、コンディショニング期は8月から2月。試合期は、勝ち進み方によりますが、3月から8月となります。

 トレーニング期は、筋力トレーニングで刺激を与えた上で、充分な食事と休養を与えることで野球をする土台である体をつくり上げる時期です。

 この時期の食事は、それぞれのチームの練習量や個人の目標によって内容が異なってきます。個人の目標というのは、増量したいのか、体脂肪を減らしていきたいのか、といったことです。
 チームによっても、個人によっても状況が違ってくるので、食事のノルマが一律ということはあり得ません。これは忘れないでください。

 食事を考える際にチェックすべきは、消費エネルギーと摂取エネルギーのバランス。食べても体重が減ってしまうのであれば、練習量に対して食事量が少ないことや、その選手の現状には練習量が多過ぎることが考えられます。食事の量だけでなく、練習量も含めて総合的に判断する必要があります。

 トレーニング期の食事は、エネルギーのバランスが取れていることを前提とし、筋肉など体の材料となるタンパク質をしっかり摂りながら、そのタンパク質を効率良く代謝させたり、免疫力を強化するために、ビタミンやミネラルも十分に補うことが大切になります。

 増量したい場合も「ごはん○合」と糖質だけに頼らず、エネルギー量の高い脂肪もうまく摂り入れながら、いろいろな栄養素を含む食べ物で全体の摂取エネルギーを高めていきましょう。

画像: 体づくりを考える上で チーム一律の食事ノルマは不要

試合中の水分やエネルギーの
補給もベンチワークの一つ 

 試合期の始まる春先は、花粉症などのアレルギー症状が出やすく、季節の変わり目で体調を崩しやすい時期です。試合慣れしていないために、不慮のケガも多くなります。

 学校と週末などに行われる試合を両立させる必要がありますから、1週間の流れの中で食事のリズムを確立することを意識しましょう。
 リズムの基本となるのが、朝食。朝食をしっかり食べていれば、その後の食欲にも良い影響を与えてくれます。

 実際の試合の日の食べ方の基本は、試合の2~3時間前に普通の食事、1時間前に糖質中心の軽食、あとはベンチワークになります。

 野球はベンチの中でも飲食ができる競技なので、補給もベンチワークの一つになります。水分補給用の水とスポーツドリンク、エネルギー補給用の糖質メーンのゼリーなど、試合中でも摂りやすいものを用意し、選手ごとに自主的に摂れるようにしたいものです。

 試合後は、なるべく早く糖質とタンパク質を補給。チーズ入りのパンや鮭おにぎり、タンパク質を含むエネルギーゼリーなどを摂るようにしましょう。
 その日に酷使した体のためでもあり、次の試合に挑む体のためでもあります。
 

《PROFILE》
海老久美子(えび・くみこ)
立命館大スポーツ健康科学部副学部長。管理栄養士、公認スポーツ栄養士、博士(栄養学)。全日本野球協会医科学部会委員。JOC強化スタッフ。ジュニアからトップまで、各種目のアスリートへの実践的な栄養教育・サポートを実施。著書に『野球食』『野球食Jr.』『野球食のレシピ 』『女子部活食』(小社刊)などがある。

文◎ベースボール・クリニック

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