写真上=WBAヘビー級王座決定戦に出場するミラー(左)。アダメクを倒した試合のウェイトは145kgだった
写真◎Getty Images

11月17日/マルベイン(アメリカ・カンザス州)

★WBA世界ヘビー級王座決定戦12回戦
ジャーレル・ミラー(アメリカ)対ボグダン・ディヌ(ルーマニア)

★WBA・IBF・WBC女子世界ミドル級タイトルマッチ10回戦
クラレッサ・シールズ(アメリカ)対ハンナ・ランキン(イギリス)

画像: 空位となったWBAヘビー級王座を争うミラー(左)とディヌ。ともに無敗のレコードを持つ 写真◎Getty Images

空位となったWBAヘビー級王座を争うミラー(左)とディヌ。ともに無敗のレコードを持つ
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 やや小粒なカードが多い今週のボクシング。そのなかで一番のビッグなのはこれだ。前チャンピオンのマヌエル・チャー(ドイツ)に薬物検査で陽性反応が出て空位になったタイトルを、不敗のミラーとディヌが争う。

 期待が集まっているのはミラーだ。なにしろ大きい。身長は193cmと今のヘビー級では驚くほどではないが、ウェイトがすごい。120kg台半ばが平均ながら、10月にポーランドの伝説的スター、トマス・アダメクを2回で粉砕した試合では、なんと145kg。その巨体とどことなく愛嬌のある仕草から“ビッグベイビー”のニックネームを持つ。

 けれど、格闘家としては本格派だ。キックボクシングで18戦不敗の戦績を残し、トラディショナル・ボクシングに転向。30歳になる現在まで22連勝19KO1分。俊敏とは言いがたいが、重厚なアタックが持ち味だ。

 一方、32歳のディヌはアメリカ初登場。一時、カナダのリングを主戦場にしていたが、3年前から母国のリングで戦っている。ミラーほどではないが、こちらも196cm、110kgと立派な体躯の持ち主。18戦全勝14KO。このところ8連続ストップ勝ちの勢いに乗 って、トップを目指す。

 ミラーのパワーが、一枚上という見方が多いが、波乱の可能性もたっぷり。

画像: 五輪連覇からプロでも世界3冠を制したシンデレラ、シールズ 写真◎Getty Images

五輪連覇からプロでも世界3冠を制したシンデレラ、シールズ
写真◎Getty Images

 人気というなら、もうひとつの世界戦、クラレッサ・シールズのほうが上か。女子ボクシングが初めて採用されたロンドン五輪、リオ五輪と連覇した。スラムで過酷な少女時代を過ごし、まだ高校生だった17歳のとき、出場権の最後の一枚をつかんで出場したロンドン五輪で一気にシンデレラ・ストーリーの主となった。プロに転向し、わずか4戦でIBF、WBCの世界チャンピオンとなり、ミドル級に体重を下げた6戦目で2階級制を成し遂げた。

 速くてパワフルなそのボクシングは、女子の重量級では群を抜いている。挑戦者ランキンにこれといった実績がないだけに、今回はシールズがどんな勝ちっぷりを見せるかが一番の注目。

 前座には激闘派として知られるガブリエル・ロサド(アメリカ=ミドル級)、ブランドン・リオス(アメリカ=スーパーウェルター級)がそろい踏み。鉄腕ゲンナディ・ゴロフキン(カザフスタン)の豪打に大流血しながらも音を上げなかった姿が忘れられないロサドは、久々登場の同じプエルトリコ系、ルイス・アリアスと対戦する。どの戦いもべらぼうな殴り合いとなるリオスは、サウル・カネロ・アルバレス(メキシコ)の兄ラモン・アルバレスと。

 このほかにもなかなかのカードが埋まっている。リオ五輪ライトフライ級銅メダリスト、ニコ・エルナンデス(5戦5勝4KO)は、地元出身でこの日で一番の声援を受けるかもしれない。ラ イトヘビー級のクールなハードヒッター、アンソニー・シムス・ジュニア(16戦16勝15KO)の成長の度合いをはかりたい。もうひとつ、プロ2戦目を迎えるミドル級、ニック・アバビィ(アメリカ)は生粋のボクシング一家の出身。祖父はソ連の名アマチュアだった。自身もトップアマチュアとして活躍し、10月にデビューしたばかりだ。若手の試合も見逃せない。

 なお、日本時間の18日午前から開始されるこのカードは、DAZNでライブ配信される。

11月16日/オクラホマシティ(アメリカ・オクラホマ州)

★WBO世界スーパーライト級タイトルマッチ12回戦
モーリス・フッカー(アメリカ)対アレックス・サウセド(アメリカ)

 この6月に33連勝不敗の テリー・フラナガンを破り、イギリスからタイトルを持ち帰ったフッカーの初防衛戦となる。相手はスター候補のサウセド。世界チャンピオンになって、いきなり厳しいマッチメイクだ。

28戦無敗の挑戦者サウセド
写真◎Getty Images

 メキシコ生まれで、このオクラホマシティで育ったサウセドはトップランクと契約してプロ入りし、ここまで28連勝18KO不敗。これといった決め手はないが、とにかく前進、しつこい攻撃で対戦者を押しまくる。24歳と若いだけに、攻防の足し算引き算を学べば、もっと強くなる。地元での世界初挑戦とあって、なおさら張り切る条件は整っている。

画像: 初防衛戦で強豪を迎えるフッカー 写真◎Getty Images

初防衛戦で強豪を迎えるフッカー
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 フッカーはセンスのいいボクサーパンチャー。ロングレンジで試合を作りながら打ち込む左フックに切れ味がある。ただ、不敗のレコードに3つの引き分け(24 勝16KO)があるように、ひとたびペースを崩されると線の細さを見せることも。馬力のあるサウセドをうまくいなしきれるかどうかが、初防衛の鍵になりそう。

 同じカードにはウェルター級の不敗対決も組まれた。エギディウス・カバラウスカス(リトアニア=20戦全勝16KO)とロベルト・アリアサ(ニカラグア=17戦全勝13KO)の顔合わせ。

 カバラウスカスは五輪に2度出場しているが。典型的な力技自慢のボクサー。ただし、試合ごとにムラがあり、トップレベルと初対戦になるアリアサに力量差をはっきりと見せつけたいところ。

まだまだあるぞ!注目カード
21戦全勝ジャロン・エニスも登場

 実はここまでの世界戦より、もっと注目したいのが、16日、金曜日にフィラデルフィアの2300アリーナ で行われるウェルター級10回戦だ。主役のジャロン・エニス(アメリカ)には今、全米の関係者が熱視線を送っていると言っても過言ではない。

 ここまで21戦全勝19KO。178cmの長身をスムーズに動かして、それから打ち込むパンチの鋭いこと。まさしくニックネームの“ブーツ”のかかとで突き刺すよう。7月、Showtimeで全米ネットワーク・デビューした一戦では、やはり18戦全勝12KOだったアルマンド・アルバレス(アメリカ)を4度倒して3回ストップ勝ち。今どきの無作法なパフォーマンスもご愛敬で、またしても評価を高めた。

 対戦する中堅どころのレイモンド・セラノ(アメリカ)はこのところ星が挙がってないだけに、ここはエニスの勝ちっぷりだけに注目だ。

 ここからは土曜日の試合になる。まずはオーストラリアから。スーパーミドル級のスラッガー、ザック・ダン(オーストラリア)が、ボー・ギブス・ジュニア(アメリカ)相手に10回戦を行う。

 デビュー以来の23連勝18KOで、南太平洋ではトップクラスの人気ボクサーになったダンだが、昨年春、デビッド・ドロフィー(イギリス)に不覚のTKO負け。混戦に持ち込まれ、左ボディブローでストップに追い込まれた。その後、メキシコで修行し直し、以降は3連続KO勝ちと調子を戻してきている。ギブスは20勝8KO1敗と好成績も、これまでに特筆する対戦者はない。ダンの復活の度合いを確認したい。なお、この試合には空位のWBAオセアニア・タイトルがかかっている。

画像: 48歳の今なお元気な元クルーザー級王者アルスラン 写真◎Getty Images

48歳の今なお元気な元クルーザー級王者アルスラン
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 ドイツのゲッピンゲンでのクル ーザー級12回戦にはフィラト・アルスラン(ドイツ)が登場する。アルスランは元WBAチャンピオンだが、それは10年も前の話。現在48歳。本当に大丈夫なのかと思わせるが、このところ10連勝8KO、4年間負け知らず。しかし、WBOインターコンチネンタルのタイトルを争う相手のセファー・セフェリ(アルバニア)も39歳。老いの一徹。目指すのはどこだ?

 ところで、ひところビッグマッチを連発したドイツも最近は賑やかな話題を聞かない。ところが、試合は実に多いのだ。ほとんどは地元選手と東欧、中東、アフリカの無名選手との対戦。世界的な実績を数えるのが難しい試合ばかりなのだが、さて、どのような形で興行は成立しているのか。ぜひとも探っていきたい。

 スペインのバラカルドで開催されるヨーロッパ(EBU)ウェルター級タイトルマッチ12回戦はやや注目だ。チャンピオンのケルマン・レハラガ(スペイン)が迎え撃つイギリス人の挑戦者はフランキー・ギャビンである。

 ギャビンはアマチュア時代に世界選手権優勝の実績を持ち、プロ入り後も世界挑戦の経験もある。ここまで26連勝不敗21KOのレハラーガだが、実力面の評価は曖昧なまま。4月、ヨーロッパ・タイトルの決定戦で、やはりイギリスの実力者ブラッドリー・スキートに2回TKO勝ちしているが、その勝利がフロックでなかったかどうか、このギャビン戦にすべてがかかっている。

 日曜(18日)のカードからひとつ。フィリピンのパサイシティで行われるWBCシルバー(日本未公認)の ウェルター級タイトルマッチ、チャンピオンのアジズ・アブダゴフレフ(ウズベキスタン)がウザティ・ニュルラン(中国)の挑戦を受ける。

 ウズベキスタン、マレーシア、シンガポールとアジアで活躍す5るアブダゴフレフはここまでプロでは11戦(全勝4KO)の経験しかないが、中身は濃い。5戦目で日本のファンには懐かしいシリモンコン・シンワンチャー(タイ)に勝ち、この5月、元WBAミドル級暫定王者のドミトリー・チュディノフ(ロシア)に大差判定勝ちしてこのタイトルを手にした。KO率は低いが重厚な攻撃に持ち味がある。

 中国最西端のウルムチからやってくるニュルランはデビュー戦に敗れた後、11連勝9KOをマークしているが、対戦相手の質はもうひとつ。

 次第に選手層に厚みを増している中国ボクシング界としては、ここらで大きな穴を空けて、中量級にも世界の足場を作りたいところだが、アブダゴフレフの壁は厚い。

 この日は女子2試合を含む、3つのWBCアジアタイトルマッチ(日本未公認)が行われる。ちょっと注目は女子バンタム級に出場する23歳のウルバシ・シン(インド)。インドのアマチュア・リーグで活躍し、タイでプロ転向。現在まで3連続TKO勝ちだ。小柄なファイターで、やや単調なきらいはあるが、休みを知らない連打で迫る。インドの女性ボクサー、メアリー・コム(世界選手権5連覇、ロンドン五輪銅メダル)の栄光に、このシンはプロの世界でどこまで近づけるのだろうか。

文/宮崎正博

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