写真上=ビボルは6度目の防衛戦で古豪パスカルを迎える
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11月24日/アトランティックシティ(アメリカ・ニュージャージー州)

★WBA世界ライトヘビー級タイトルマッチ12回戦
ドミトリー・ビボル(ロシア)対ジャン・パスカル(カナダ)

 ライトヘビー級の次世代エース、ビボルが保持するWBAタイトルの6度目の防衛戦(暫定王者時代を含む)を行う。

 重量級離れしたシャープな動きとスピードから、教科書どおりのジャブ、ワンツーで攻め込むそのボクシングは、まだまだ成長途上。これで凄みが加われば、文句のつけようがない。そんなビボルだが、前戦ではしぶと いアイザック・チレンバ(マラウイ)を大差判定で下しはしたものの、中盤戦以降は淡泊な攻防に終始して、課題を露呈したもの。それでも試練は続いていく。チレンバ戦からわずか3ヵ月しかたっていないのに、難敵を相手にするのだ。

返り咲きを狙うカナダのレジェンド、パスカル
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 36歳のパスカルはカナダ・ボクシング界ではレジェンドのひとり。元WBCチャンピオンで、バーナード・ホプキンス(アメリカ)、ルシアン・ビュテ(カナダ=ルーマニア)、セルゲイ・コバレフ(ロシア)らとあまたの名勝負を演じてきた。コバレフに連敗した後、引退を囁かれたこともあったが、その後も活動を続行。不敗のエジプト人、アーメド・エルビアル、さらにMMAのスターだったスティーブ・ボッセ(カナダ)を連続TKOで破り、調子を上げてきた。

 それでも、勢いのあるビボルの優位は動かない。中盤戦以降に決着をつける可能性がきわめて高い。強烈な右ストレートでチャンスを作り、鋭いコンビネーションでフィニッシュできれば、この男の評価は再び急上昇するはずだ。ただ、手練れのパスカルに乱戦に持ち込まれれば、タフな戦いを覚悟しなければなるまい。

 アンダーカードには東ヨーロッパ、中央アジアのホープたちが続々と登場する。まずはヘビー級のセルゲイ・クズミン(ロシア)。アマチュアのヨーロッパ・チャンピオンは、重厚に圧力をかけ、ワイルドライトを始め、ビッグパンチで押しまくる。一発の魅力を物語る勝ちっぷりがこれまでにないたけに、アウスポーのベテラン、レロン・ミッチェル(アメリカ)を豪快に 沈めたい。

 リオ五輪銀メダリストから昨年の世界選手権で優勝した後にプロ転向したウェルター級のシャクラム・ジヤソフ(ウズベキスタン)は、50戦以上のキャリアを持つメキシカン、ミゲール・サムディオ(41勝25KO11敗1分)と対戦する。ここまでプロで5連勝(4KO)不敗のジヤノフは連打速攻を得意とするが、ややばたついた印象も否めない。そろそろ奥行きも演出してほしい。

 同じくウズベキスタンからやってきたムロジョン・アフマダリエフ(スーパーバンタム級)、イスダリ・マドリモフ(ミドル級)も多楽しみ。ともに10回戦を戦う。リオ五輪銅メダル、2017年アジア選手権優勝のアフマダリエフはプロで4連勝3KO。セミプロリーグ、MVPのマドリモフはなんとデビュー戦だ。対 戦相手もアフマダリエフが上り調子のアイザック・サラテ(アメリカ)、マドリモフが不敗のホープに連勝しているウラディミール・エルナンデス(メキシコ)と、ともに軽い相手ではない。とくに、サウスポーとオーソドックスの両構えを上手に使い分け、多彩な連打で仕掛けるマドリモフの初陣に注目だ。

 まだある。リオ五輪ヘビー級優勝のイブゲニー・ティシチェンコ(ロシア)がプロ3戦目でアメリカ初登場。アマチュア時代は90kg級で戦っていた身長196cmのサウスポーはやや線の細さがあったが、体重を100kg直前にまで増やしてきている。以前の鋭さを失っていなければいいのだが。もうひとつ。6回戦で戦うローガン・ムン(アメリカ)は韓国にルーツを持つハワイ生まれ。メキシコ、フロリダで修 行を積みながら、ここまで不敗の13連勝だ。

11月24日/モンテカルロ(モナコ)

★WBA世界スーパーフライ級タイトルマッチ12回戦
カリド・ヤファイ(イギリス)対イスラエル・ゴンサレス(メキシコ)

★クルーザー級12回戦
デニス・レベデフ(ロシア)対マイク・ウィルソン(アメリカ)

不敗を続ける王者ヤファイは4度目の防衛戦
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 セカンド・チャンスを待ちわびる不遇の強豪がモナコに集まる。

 スーパーフライ級王座の一角を占めるヤファイは4度目の防衛戦に臨む。これまで日本の村中優(フラッシュ赤羽)、石田匠(井岡)とも戦っているヤファイは、手堅くタイトルを守ってきた。デビュー以来の不敗レコードも24(15KO)に伸 ばしてきている。前戦ではアメリカに遠征して、ダビド・カルモナ(メキシコ)を4度倒して強味を見せた。だが、世界的な知名度はまだまだこれから育てる段階。対するゴンサレスはライバル王者(IBF)ジャーウィン・アンカハス(フィリピン)にTKO負けしているだけに、ヤファイももっと印象的な勝ち方をしたいところ。

帰ってきたレベデフ(右)のパワーは健在か
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 なかなか戦いたがらなかったロシアのスター、レベデフが自国を出て、DAZNのメインイベントをつとめる。

 レベデフの名前が初めて世界に知られたのは11年前、イギリスのエンゾ・マッカリネリとの強打者対決に圧倒的なTKO勝ちを収めた一戦から。その後、世界チャンピオンになるまで意外に遠回りしたが、暫定ながらもWBAクルーザー級王者になった のは8年前だ。その後はロシアきっての人気ボクサーとなったが、ポツポツのリングキャリア。ときの最強挑戦者との対戦も実現しないまま。2017年からは長いブランクを作り、その間に手にしていたWBAスーパーのタイトルも手放した。やっと戦う気になった今、39歳。9月の肩ならしではTKO勝ちだったが、さて、再び本格派と戦うことになる今回の出来はどうだろう。かつての破壊的なパンチングパワーは健在だろうか。

 ウィルソンもまた不本意なキャリアをたどってきた。2005年のアマチュア世界選手権スーパーヘビー級銅リストで、2008年の北京五輪でもアメリカ代表の最有力候補にあげられた。当時、旗揚げしたばかりのUFCからも秋波を送られたりと話題も多かった。しかし、五輪代表から 漏れると、その知名度は次第にしぼんでくる。ひっそりとプロ入りし、ローカルリングで戦いながら、ここまで19戦全勝8KO。その間に35歳になっている。

 沈黙のファイター対決、どっちが新しいドアを開くのか。そういう意味では注目したいカードである。

 この日の興行テーマは『リスタート』かと思われるほど、そのほかにもセカンドチャンスを待ちわびる選手たちがラインナップされる。

 ライトヘビー級12回戦(IBFインターナショナル・タイトルマッチ)はフランク・ブリオーニ(イギリス)対メン・ファンロン(中国)。ブリオーニは層の厚いイギリスのミドル級、スーパーミドル級では第2集団から抜け出せないままライトヘビー級にやってきたが、10月に豪打者アル トゥール・ベテルビエフ(ロシア)に挑んだカラム・ジョンソン(イギリス)に初回TKO負けの不覚を取った。サウスポーのメンは中国期待のサウスポーとしてロンドン五輪に出場しながら2回戦で敗退。アメリカと中国を往復しつつプロキャリアを積んでいても、その名前がクローズアップされることはなかった。この試合に勝ったほうが、大きなチャンスを手に入れるはずだ。

 ヘビー級に再度乗り込んでくるマイケル・ハンター(アメリカ)はどんな戦いを見せるのか。もともと軽量で、最重量級での成功を一度はあきらめ、軸をクルーザー級に移したが、オレクサンダー・ウシク(ウクライナ)に完敗。ヘビー級で再び戦うようになって3連勝2KOだが、今度の相手アレクサンデル・ユスティ ノフ(ロシア)は身長202cm、体重120kg代後半の巨人。試練の戦いになる。

 エディ・ハーンが手がけるイベントだけに、新たなヒーロー候補もしっかりと名を連ねる。ウェルター級のダニヤル・エレウシノフ(カザフスタン)はリオ五輪金メダリストで、さらにヴァル・ヴァーカー・カップ(最優秀選手)ウィナーながら、技術に走りすぎるボクシングはプロ向きではないとも言われる。ここらでそんな声を蹴散らしたい。またフランスのアマチュアスター、カリル・エル・アドリ(ライト級)もプロ2戦目に立ち向かう。

まだまだあるぞ!注目カード
スター候補が林立するフィリピン

 24日、フィリピンのセブでは粒よりの精鋭が並ぶカードが組まれている。フィリピン・ ボクシング界の雄ALAプロモーション提供のカードだ。

 スーパーフライ級のジョナス・スルタン(フィリピン)は世界タイトル初挑戦に失敗(IBF王者ジャーウィン・アンカハスに判定負け)してからのカムバック戦。日本では1勝1敗と強い印象を残せなかったが。南アフリカで強豪マカゾール・テテをTKO、さらにソニーボーイ・ハロ、ジョンリール・カシメロと自国の元世界王者に連勝している。今度の再起戦の相手は同国の変則ファイター、アーディン・ディアレ。柔軟にな上体を活かした強打を炸裂させたい。

 スーパーバンタム級で14連勝13KO(トータル16勝14KO2敗)で台頭してきたジョー・サンティシマ、アマチュアで300戦近いキャリアを持ち、プロでは8連勝 7KOのKJ・カタラジャとALAの秘密兵器も登場する。また、アマチュアのトップからフィリピンでプロ活動を開始した日本の保坂剛もプロ2戦目を行う予定。

 ウィークエンドではないが、来週の水曜日(28日)にはタイのチョンブリでWBA世界ミニマム級タイトルマッチが行われる。チャンピオンのノックアウト・CPフレッシュマート(タイ)と挑戦者バイロン・ロハス(ニカラグア)の顔合わせは再戦になる。

 前戦はジャッジ3者がいずれも115対113とつける接戦の末にノックアウトが辛くもタイトルを守っている。ロハスはここ5年間で敗北はそのときの一度だけ。今度は復讐の執念に燃えているに違いない。

 一方、ノックアウトは暫定時代を含めると、これがなんと10度目の防衛戦。ただ、その間にKO、TKO勝ちは2度だけ。これではノックアウトのリングネームも色あせる。

文/宮崎正博

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