上写真=トレーナーデビュー戦を、見事に連続白星で飾った石本さん(中央)。右はプロデビュー戦だった小林。左は3勝目を挙げた山田

 元日本&WBOインターナショナル・スーパーバンタム級チャンピオン石本康隆さん(37歳)が、見事に初陣を飾った。
 今年1月の引退表明後、元OPBF東洋太平洋フェザー級王者・今岡武雄さんと共通の知り合いを通じてつながった。今岡さんはイマオカジムの会長。「ボクシングに携わる仕事をしたかった」という石本さんを、トレーナーとしてジムの仲間に迎え入れたのだ。そしてそれから半年。石本さんが指導する2選手が、そろって試合を行う日が来た。
 11月22日、東京・後楽園ホール。この日の興行『アンタッチャブルファイト』の2試合目が石本トレーナー、そして小林柾貴(19歳)のデビュー戦だ。

 小林は、とてもデビュー戦とは思えない落ち着いたボクシングを終始繰り広げた。軽快なフットワーク、長くてシャープなワンツー。前へ前へと出てくる村田望(岐阜ヨコゼキ)を突き離し、さばき、自在にコントロールする。ジャッジ三者とも40対36をつける完勝だった。

そろって迎えるデビュー戦開始直前。石本さんは緊張の裏返しで微笑?

 緊張の「き」の字も感じさせない、物怖じしない小林に対し、石本さんは、「なんともいえない緊張感」を常に感じていたという。「やっぱり、自分が試合をするのとは違う、勝たせたいという気持ちですかね」と、フッと息を吐く。その後、4試合目に登場した山田大(28歳)は、これまで2勝1敗1分。この山田は、途中から石本さんの指導を仰ぐかたちとなったが、こちらも馬場リュウジ(横田スポーツ)にフルマーク勝利を収めている。

「『頼むから俺の言うことを聞いてくれ』」と、それしか言いません(笑)」と、常に小林を諭しているのだという。それを聞きながら、横に立つ小林はニヤリ。なんだかとてもいいコンビだ。小林は、「常に、僕のことを気にかけてくれる」と石本トレーナー評。たとえば? と問うと、「試合前にメールをくれたりします」と小林は嬉しそうに答える。して、その内容は?
「『俺の言うことを聞いてくれ!』です(笑)」(石本さん)。もう、ここまで来るとコント。クレイジーケンバンドも真っ青なのである。

 帝拳の選手時代は、田中繊大トレーナーと二人三脚で世界を目指した。当初は中堅ボクサーの印象が強かったが、元世界王者ウィルフレド・バスケス・ジュニア(プエルトリコ)を破る番狂わせが“きっかけ”となり、一躍日本の頂点へと登っていった。
 その後、世界タイトル挑戦までは届かなかったものの、『コラソン』(Corazon=スペイン語でハート)のニックネームどおり、どの試合も最後の最後まで闘志を燃えたぎらせて戦い切る姿が印象深い。

 そしていまも、なかなかのハードワークをこなす。ジムで指導をするのは、昼の12時から夜の12時まで。プロ2選手を見る以外は、一般会員のトレーニングに寄り添う。「休日はちゃんとありますから」と笑顔でまったく意に介さないが、現役をやめても「コラソン」は健在なのであった。

 ゆくゆくは、古巣・帝拳との戦いも実現するだろう。「それは本当に楽しみです」と、キリッとした表情になるが、「繊大さんとのトレーナー対決もありますよね」と投げかけると、「それはイヤです(笑)」と間髪入れずに破顔して返答する。田中繊大という男の手腕はいちばんよくわかっているし、なにより「ちょっかいを出されるのが煩わしい(笑)」のだという。こういうことを選手側が言えるのが、その関係性を明らかにしている。

「またこうして後楽園ホールに戻って来れた。この空気、雰囲気……。選手たちに感謝したいです。そして、全権を任せてくれた今岡会長にも感謝したい」
 再び戦いの場へ──。石本さんの新たなボクシング人生は、最高のスタートを切った。

取材=本間 暁

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