コンディショニングとは「目的を達成するために必要と考えられる、あらゆる要素をより良い状態に整えること」を意味する。選手それぞれが持つ個性をパフォーマンス発揮へとつなげるための情報を得て、しっかりと活用しよう。
※本記事はベースボール・クリニック2014年6月号掲載「野球のコンディショニング科学~知的ベースボールプレーヤーへの道~」の内容を再編集したものです。

文◎笠原政志(国際武道大学体育学部准教授)

かさはら・まさし/1979年千葉県出身。習志野高校―国際武道大学。高校まで野球部で活動し、3年時には主将。大学卒業後は同大学院を修了し、国際武道大学トレーニング室のアスレティックトレーナーとして勤務。その後は鹿屋体育大学大学院博士後期課程を修了し、2015年にはオーストラリア国立スポーツ科学研究所客員研究員としてオリンピック選手のサポートを歴任。専門はアスレティックトレーニング、コンディショニング科学。現在は国際武道大学にてアスレティックトレーナー教育を行いながら、アスリートの競技力向上と障害予防に関わる研究活動を行っている。学術博士(体育学)、日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー、NSCA認定ストレングス&コンディショニングスペシャリスト、日本トレーニング指導者協会公認上級トレーニング指導士、JPSUスポーツトレーナー。

第1回「野球選手の身体的特徴とは?」

 野球の競技特性といえば、打つこと、投げることが代表的であり、非常に技術的要素が強いものです。しかし、技術練習のみならず、その技術をより良くするための土台づくりとして各種体力トレーニングも行われます。これは、現場で技術の下地となる体力が重要であると感じられている結果です。

 その体力の中で土台となるのは選手自身の体格です。それでは、他競技選手と比べて、あるいは競技レベルの違いにおいて、野球選手の体格の特徴はどこにあるのでしょうか。

身体組成という考え方

 身体的特徴の中でも、今回は身体組成に着目します。身体組成とは「身体を構成するあらゆる要素」の総称です。具体的には身長、体重、体脂肪、骨などです。

 さまざまな競技のアスリートにとって身体組成は重要な要素です。例えば陸上競技の長距離選手は体脂肪率が非常に低く、バスケットボールやバレーボール選手は身長が高いことが特徴です。
 では、野球選手の身体組成の特徴は? 国立スポーツ科学センターにおいて、各種トップ競技アスリートの体力測定結果をまとめている方に野球選手の体力の特徴を尋ねると、迷うことなく「体が大きい」という答えが返ってきました。
 また、2013年度のプロ野球名鑑に記載されている各球団プロフィールデータを調べたところ、日本人投手上位50名の平均身長は189.1±2.2㎝、平均体重は87.2±5.3㎏でした。明らかに体が大きいことが分かります。

 このような国立スポーツ科学センターの話や選手名鑑の結果のみならず、実際に野球指導にかかわっている方でも「野球選手は体が大きい」という印象を抱いている方は多いとは思います。

 では、どのぐらい大きいのか? また、選手は「体を大きくしなさい」と指導されますが、大きければ大きいほどいいのでしょうか? そして「体が大きい」というのは、身長が高く、体重が重いということなのでしょうか? 実は「大きい」という一言では済まされないもので、身体組成の中でも身長や体重だけで体の大きさを判断しないことが大切です。

除脂肪体重での比較

 身体組成の中でも、体重は大きく分けて体脂肪と筋肉量に分かれます。力を発揮するのは体脂肪ではなく筋肉なため、いくら体重が重くても、体脂肪であれば身体にとってはむしろ重りになってしまいます。
 そこで、体脂肪量を除いた体重を知ることが必要です。この体脂肪量を除いた体重を「除脂肪体重(Lean Body Mass)」と呼び、筋肉量の一つの目安とされています。

 この除脂肪体重と身長を用いて、身長あたりの除脂肪体重量によって野球選手の身体組成を比較しました。身長あたりとするのは相対的な筋肉量を評価するためです。

 表1、2に過去に報告された身長あたりの除脂肪体重と私がこれまで計測してきた高校硬式野球から社会人野球選手のデータを表にしてみました。社会人野球は全国大会で上位成績を収めるチーム、大学野球は全日本選手権に出場するチーム、高校硬式野球は都道府県大会でベスト8レベルのチーム、それに加えて体育大生(野球選手以外)の身長あたりの除脂肪体重も記載しています。

 見て分かるように、投手も野手も、競技レベルが高いほど身長あたりの除脂肪体重量が重くなっており、体育大生よりも高校硬式野球選手のほうが平均値が上回っています。すなわち、野球選手の「体が大きい」とは、「身長あたりの除脂肪体重が多い」ということになるのです。

画像1: 除脂肪体重での比較
画像2: 除脂肪体重での比較

※除脂肪体重=体重(kg)-体脂肪量(kg)
 身長あたりの除脂肪体重=除脂肪体重(kg)÷身長(m)

計測する際の注意点

 体脂肪量や体脂肪率の計測は、体脂肪量計を用いることで容易にできるようになりました。ただし、注意すべきは、体脂肪率や体脂肪量を計測する方法はさまざまであり、各種機器の特徴があるという点です。
 従って、他と比較したり、自分自身の身体組成を継続して計測する際には、同じ機器、同じ時間帯で計測するように心がけましょう。これらの計測状況に統一性がないと正確な比較ができなくなってしまいます。 

文責◎ベースボール・クリニック編集部

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