上写真=阿部の左がクリーンヒットすると、杉田はバッタリと倒れ込んだ 写真_馬場高志

19日、東京・後楽園ホールで行われたセミファイナル、57.8kg契約8回戦は、5月に日本タイトル初挑戦が決まっている“天才”、日本フェザー級1位の阿部麗也(25歳=KG大和)が、元アマチュア全日本社会人王者で、これが5戦目(4勝3KO無敗)の“警察官ボクサー”杉田ダイスケ(30歳=ワタナベ)にまったくつけ入る隙を与えずに完封。2度のダウンを奪い、80対70×2、79対71の大差3-0勝利を収めた。

 2度のダウンを奪っても、フィニッシュに届かないまま判定勝ち。文字で書けばなんとなく不足を感じさせても、内容的に疵ひとつなしの完璧勝利だった。阿部麗也の圧倒的な切れ味ばかりが光った。

「これで6ラウンド以降に倒せていれば満点でしたけど、安全運転という自分のペースで最後まで戦ってしまいました」
 
 阿部はすでに日本同級王者、源大輝(ワタナベ)への挑戦が5月1日に決まっている。つまり前哨戦、言い換えれば肩慣らしの戦い。しかし、選ばれた相手には要警戒のマークがついた。

 杉田は現役警察官という話題性以上に、手堅いアマチュア実績がある。高校、大学、社会人通算110勝(31敗)だ。プロでも4連勝3KO不敗。だが、そんなボクシングをよく知る杉田だからこそ、今夜の阿部にはどんなトライも試みることができなかった。

「何もさせてもらえませんでした。とにかく速くて、カウンターもあって。勉強になりました」(杉田)

 各ラウンドとも、杉田は自ら仕掛けることができない。右フック、あるいは上下に散らばる左ストレート。阿部のパンチはすべてが怖い。それが証拠に、少しでも無理をすると、カウンターの餌食になった。

 3回には右フックを食って杉田はつまづくように倒れる。レフェリーの判定はスリップだったものの、この一撃で鼻血が激しく吹き出した。4回には流れに割り込むように右で押し入ったが、ショルダーブロックに出た阿部がくるりと体を半回転させて左ストレート。杉田はバタリと倒れる。さらに左アッパーのボディブローに折り返された右フックで2度目。これだけの正確なパンチ、反応の鋭さを見せつけられたら、ボクシングという戦いのなんたるかを知り尽くした杉田としては動きようがなかったのだ。

 阿部は決して冒険をしなかったが、折々にまじないのようにシャープな一打、攻防の切り返しをちらつかせ、杉田を沈黙させたまま戦いきった。
「実は僕は未知の存在なんです。強い相手と戦ったことがない。だから、この時点で強い杉田選手と戦えて本当に良かった」

 日本タイトル戦に向けて、準備は完璧。でも、これだけの戦力を見せられれば、見ているほうも、本人さえも欲が出る。

「安全運転もいいけれど、これでは華がないのかな。日本タイトルまではともかく、この先を考えると、ここぞでバッと攻め込むことも考えないと」

 そして、阿部はちょっとだけビッグマウスを付け加える。
「だから、(源)大輝、もう(試合を)延期しないでね」

“天才ぶり”をさらに発揮しだした阿部。次戦は5月。チャンピオンカーニバル屈指の好カードに臨む
写真_宮崎正博

文_宮崎正博

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