上写真=適度な緊張と、ふたたびリングに立てる喜び。尾川(左)のメンタルは均衡を保っている様子だ

2日、東京・水道橋の後楽園ホールでゴングとなる『ダイナミックグローブ』の前日計量が1日、JBC(日本ボクシングコミッション)で行われ、メインの132ポンド契約10回戦に出場する尾川堅一(帝拳)がリミットの59.8kg、フィリピン・ライト級王者のロルダン・アルデアは300gアンダーの59.5kgでクリアした。

「心境としては、ちょっと緊張はしてますね。やっぱり、どんなふうに見られるか、というのはありますし、いつもと違うドキドキ感はあります。“問題のドーピング”については、自分のなかで悔しい部分もたくさんありますし、それを払拭する意味でも大事な試合になると思うので」

 一昨年12月、尾川はアメリカ・ネバダ州ラスベガスでIBF世界スーパーフェザー級王座決定戦に臨み、現王者のテビン・ファーマー(アメリカ)とクロスファイトの末に2-1の判定勝ち。殊勲の世界奪取は、日本人として36年ぶりにアメリカからベルトを持ち帰る快挙ともなった。だが試合に際し、現地で4日前と当日に受けたドーピング検査の結果、試合前の尿サンプルから陽性反応が出る。最終的にファーマー戦は無効試合となり、王座は剥奪。JBCから1年間のライセンス停止処分を受けた。

「1度は心が折れましたね。どん底までいきましたし、投げやりにもなりましたし、ボクシングなんてっていう気持ちにもなりました」という尾川の心中は察するに余りある。

「(陽性反応が出た)理由は今でもわからないというのが現状ですが、そこを追求したところで自分の名誉が回復するわけでもない。この1年間、悔しさを噛みしめて、我慢して、納得できるところまできました。悪く言う人もいれば、信じてくれる人もいて、いろんな人がいるのは仕方ないと思うので、信じてくれる人のためにもう1度、世界チャンピオンになるというのが自分のなかの強い気持ちです。信じて、応援してもらえたら、ありがたいですね」

 2010年4月のプロデビューから積み重ねてきた年月、24戦の戦歴の結晶でもあり、確かに自宅の玄関に飾られていたはずのベルトを失ってしまった。何より失意の底にいた自分を支え、現役続行に向け、気持ちを奮い立たせてくれた妻と3人の息子に「ベルトを見せたいし、取り戻したい気持ちが強い」という。

 そして、さらに尾川の思いを強くするのが“ライバル”の存在である。代名詞の右強打を武器に日本スーパーフェザー級王座を5度防衛した尾川と、東洋太平洋・WBOアジアパシフィック同級王者として並走してきた伊藤雅雪(伴流)が昨年7月、アメリカ・フロリダ州キシミーでWBO世界スーパーフェザー級王座を奪取。一躍トップシーンに躍り出た。

「伊藤チャンピオンがアメリカで獲って。これはもう刺激以外の何物でもない。やっぱり、世界一になる。明日は、その一歩として爆発させたい」と尾川。「これぞ尾川のボクシング、尾川が戻ってきたなというボクシングを見せたいと思います」とKOでの再出発を誓った。

取材_船橋真二郎(ライター)

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