写真上=激しく向かってくる鈴木(左)を松田は右カウンターで迎え撃つ
写真◎小河原友信

 女子の東洋太平洋&日本アトム級王座統一戦8回戦は13日、東京・後楽園ホールで行われ、東洋太平洋チャンピオンの松田恵里(TEAM10COUNT)が日本チャンピオンの鈴木菜々江(シュウ)を3-0のスコアで下し、ふたつのベルトを手にした。松田はプロデビューから7ヵ月、3戦目での快挙。

「相手は普通のファイターじゃない。気持ちがすごく強くて、何もかもを飲み込んでいくような選手だから、自分のペースをきちんと守らなくちゃいけない、と」

 戦前から松田はそう考えていたという。だから、自分のボクシングをやりきった。鈴木の持ち味は闘志をあらわにした攻めの一手。しかも、ラウンドを追うごとに激しく、厳しく。そんな日本女王に勝つには、7年に及ぶアマチュア経験で培った技で、突き放して戦うのがベストのチョイスだった。

 ただし、ときには打ち合うことも必要だ。技で切り返すばかりではなく、局面によっては自ら打ち合いに打って出て、鈴木が仕掛けたい攻撃を先手を取ってもぎ取った。プロとしては半年あまりしか実績のなり選手とは思えない、上手な展開回しもできた。

 それでなくても、背負うものは重かった。トランクスは元東洋太平洋スーパーフライ級チャンピオンである鳥海純会長が現役時代に使っていた代物をリメイクしたもの。その鳥海会長がついにできなかったタイトル防衛、2度まで挑んで手にできなかった日本タイトル獲得の願いを託されていた。さらに対戦するのは猛ファイターの鈴木。途切れぬ緊張感が要求された戦いだ。

 しかも、立ち上がりは決して万全ではなかった。いつもはスロースターターの鈴木が、得意の左フックを振りかざす。大きなパンチだが、一発、一発タイミングを微妙に違えている。松田は鼻血を流した。

 2回からは、だが、サウスポーの松田はほぼ思いどおりに戦ってみせる。鈴木の出鼻を短く、鋭い右フックで捉える。その後には左ストレート、アッパーの好打も印象づけていく。

 鈴木も粘る。5回にはしつこいほど左フックを振った。6回には鼻血を流しながらも、7回にも懸命に前に出る。松田もわずかに弱気を見せるが、すぐに立ち直り、中間距離の攻防で試合を管理し仕切った。

「会長とロマチェンコをプラスしたボクシングをやれるようになりたい。つまりステップと攻撃が自在に重なり合ったような」

 と威勢のいい松田は、それまで手にしていた日本のベルトを「これ、持ち回りですよね」とポンと会長のほうに押しやった。目指す地点はここではない。「これからは急がない」と鳥海会長は言うが、今日のような安定感に攻防の力強さが加われば、もっと上を狙えるはず。

 一方の鈴木は「松田選手のような技術を学んできませんでした。私の勉強不足です。今日はすいませんでした。いつか笑って皆さんとお合いしたいです」と気丈に語ってから、涙声になった。とことん純真な猛ファイターのこの後の変身に期待を寄せたくなった。

取材◎宮崎正博

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