ビッグマッチ枯れだった先週にうってかわって、今週は注目カードが目白押し。パウンドフォーパウンド(全階級を通じて)のナンバー1、ワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)のタイトルマッチから、注目のヤングスター、ハイメ・ムンギア(メキシコ)、さらに女子最強ボクサー決定戦まで。まずはロマチェンコからだ。

写真上=ロサンゼルスで激突するロマチェンコ(左)とクロラ
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4月13日/ステイプルズセンター(アメリカ・カリフォルニア州ロサンゼルス)

★WBA・WBO世界ライト級タイトルマッチ12回戦
ワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)対アンソニー・クロラ(イギリス)
※13日午前11時よりWOWOWで生中継

ロマチェンコ:31歳/13戦12勝(9KO)1敗
クロラ:32歳/43戦34勝(13KO)6敗3分

 誰もが認めるその史上最高級の技術。このサウスポーが圧倒的なテンポで縦横に展開する攻防の冴えは、現代の財宝のひとつ。今回も存分に味わい尽くしたい。が、不安もひとつ。前戦、WBAスーパーに続いてWBO王座を吸収したホセ・ペドラサ(プエルトリコ)戦は、圧勝(判定勝ち)に終わったものの、インパクという点ではいまひとつ。細部のテクニックにもいつもの歯切れの良さが見えなかった。一部には「衰えの気配も感じられた」という声も出たもの。確かにハイテンポが身上のロマチェンコだけに、その速さに陰りが見えたら、抜群の安定感も心細くなる。あるいは、いくつもの “ハイテク” マシンをつなぐ部品にわずかでも金属疲労が見えたなら、そのボクシング全体が一気に崩れてしまう可能性もある。ここは、もう一度、全体をきれいにクリーニングして、万全の出来を披露する必要性もある。

 WBAの指名挑戦者でもあるクロラは、しぶとくペースに食らいつくタフガイ。元WBAチャンピオンだが、ホルヘ・リナレス(帝拳/ベネズエラ)に連敗して無冠になった。以後、3階級制覇のリッキー・バーンズ、インドネシア随一の強豪ダウド・ヨルダンらを相手に3連勝をマークしている。目にも鮮やかな技巧、一発の決め手はないが、気持ちは強い。ニックネームの “ミリオンダラー” は、いつの日かラスベガスで戦って、100万ドル・ファイターになりたいという夢を託したもの。最初の訪米でラスベガスのリングに立ったが、前座8回戦。2度目の今回は、ウェストコースト地区きっての大スタジアムへの登場だ。どこまでも執念深く、勝利に追いすがってくるはずだ。

 それでも、ロマチェンコの圧倒的優位は動かない。ライバルの野心を食いちぎって、自らの栄誉の血肉に変える者こそ、真のスーパースター。ここは本領発揮と願いたい。

★ライトヘビー級10回戦
ヒルベルト・ラミレス(メキシコ)対トミー・カーペンシー(アメリカ)

ラミレス:27歳/39戦39勝(25KO)
カーペンシー:33歳/36戦29勝(18KO)6敗1分

画像: ヒルベルト・ラミレス Getty Images

ヒルベルト・ラミレス
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 WBO世界スーパーミドル級王座を5度守ってきた安定王者ラミレスが、1階級上のライトヘビー級にチャレンジする。このサウスポーは身長189cmもあり、体格的にはこのウェイトもさして問題ないのだろう。ただ、しっかりとポイントを取りきるボクシングに定評はあっても、決め手があまりにも乏しい。2015年以降、ストップ勝ちは1度だけ。それも大きく実績が劣る相手に、攻めて攻めてのやっとのことでのレフェリーストップ。右拳故障の影響があるとはいえ、消化不良がこう長引くと、ファンのほうもちょっと興味が淡くなる。このままでは、新しいチャンスもなくなってしまいかねない。

 カーペンシーは典型的なAマイナスの中堅強豪。手堅く勝利を重ねながら、トップクラスにはしっかり負けている。ことにアドニス・スティーブンソン(カナダ)にはあっさりと3回で倒され、オレクサンダー・グボジアク(ウクライナ)にはダウンを奪いながら、6回に逆転されているように、打たれて強くはない。

 ラミレスとしてはどうしても倒しきりたい。ここでカーペンシーの健闘を許すようなら、厳し
い減量を強いられていたスーパーミドルに追い返されてしまう。

◆激闘戦士アルバラードが不敗に新鋭と対戦

画像: アルバラード(右)とバルボサ Getty Images

アルバラード(右)とバルボサ
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 元WBO世界スーパーライト級暫定チャンピオン、マイク・アルバラード(アメリカ/38歳/40勝28KO4敗)が前座10回戦に出場する。数々の激闘で人気を博したコロラドのファイターは2013年から、ルスラン・プロポドニコフ(ロシア)、ファン・マヌエル・マルケス(メキシコ)、ブランドン・リオス(アメリカ)と難物ばかりを相手に3連敗。その後はトップ戦線から遠ざかっているが、実は6連勝、4連続KOと再び波に乗りかけている。

 今回の相手アーノルド・バルボサ・ジュニア(アメリカ/27歳/20戦20勝7KO)は、ちょっとした変わり種。不敗のままキャリアを終えたキックボクサーを父に持ち、自身も少年ボクシングで鳴らした。その後、アメリカンフットボールに熱中してリングを離れたが、20歳を超えてボクシングに舞い戻る。そのとき、100kgもあった体重を40kg減量したという。戦績が示すとおり、切れ味はもうひとつ。アルバラード側からすれば、若手にきっかけを与えるような戦いにはしたくないはずだ。

4月13日/ボードウォークホール(アメリカ・ニュージャージー州アトランティックシティ)
女子最強はシールズ? ハマー?

★4団体統一女子世界ミドル級タイトルマッチ10回戦
クラレッサ・シールズ(アメリカ)対クリスティーナ・ハマー(ドイツ)
※SHOWTIMEで全米中継

シールズ:24歳/8戦8勝(2KO)
ハマー:28歳/25戦24勝(11KO)1NC

画像: クラレッサ・シールズ Getty Images

クラレッサ・シールズ
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 シールズの持つWBA、WBC、IBF、ハマーが保持するWBOとメジャー4団体のタイトルすべてが賭けられる。女子ボクシングとしては、史上屈指のビッグマッチと言える。ともに女子選手らしい、やや控えめなトラッシュトークを応酬して、試合を盛り上げている。

 主役はやはりシールズだ。17歳の女子高校生にして出場したロンドン五輪、それからリオ五輪と連覇した女子ボクシングのヒロインだ。過酷な少女時代を生き抜いたという物語も伴って、人気は女子としてはピカイチと言える。

 もちろん、本業のボクシングのほうも評価は高い。ただし、アマチュア時代はスピードとともにパワーでも一段違うと評価されてきたが、プロではなかなか倒しきれないでいる。本人もそこが課題と、さまざまな手立てを講じている。つまり成長途上というわけだ。

画像: クリスティーナ・ハマー Getty Images

クリスティーナ・ハマー
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 一方、ハマーは1歳のときに家族とともにカザフスタンからドイツに移住し、アスリートとして順調に成長してきた。13歳のときにボクシングを始め、2009年にプロデビュー。プロ2年目でWBOチャンピオンとなり、その後、大学に通いながら、トップの座を守り続けてきた。モデルのように美しく、180cmの長身を翻してのボクシングは端正だ。

 シールズとしては持ち前の速さをフル回転して、ハマーにボクシングをさせないこと。そういう展開になれば、案外大差がつくのではないか。

◆前座に注目のヘビー級がふたり

 アンダーカードにはふたりのヘビー級ホープがフューチャーされている。まずはジャーメイン・フランクリン(アメリカ/25歳/17戦17勝13KO)。身長185cmで体重110kgとやや太めだが、2014年の全米ゴールデングローブ・スーパーヘビー級優勝と確かなアマチュア実績を誇る。ここまでこれといった実力者との対戦がなく、この日もやや控えめなマッチメイク。25勝(12KO)1敗の戦歴を持つライデル・ブッカー(アメリカ)は2001年にアマチュア全米ランキング1位を勝ち取ったこともあるが、すでに38歳。プロキャリアの途中、コカイン所持で12年間も刑務所暮らしを経験している。フランクリンがもっと注目されるためには、目の覚めるような勝ち方をしたいところ。

画像: オットー・ワリン Getty Images

オットー・ワリン
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 もうひとりはオットー・ワリン(スウェーデン/28歳/13KO)。ニック・キスナー(アメリカ/28歳/21勝6KO4敗1分)相手にアメリカデビュー戦を戦う。ほぼ1年ぶりのリングに
なる身長197cmのサウスポー、ワリンはスカンジナビアの秘密兵器的な扱いだったが、実際の試合っぷりは安定感を欠く。スウェーデンと言えば60年前、フロイド・パターソン(アメリカ)と派手な倒し合い3連戦を演じた元世界ヘビー級チャンピオン、インゲマール・ヨハンソンを生んでいるが、ワリンがヨハンソンの再来と呼ばれるには、もう少し時間と実績が必要である。

4月13日/アレナ・モンテレー(メキシコ・ヌエボレオン州モンテレー)
戦う王者ムンギアが早くもV4戦

★WBO世界スーパーウェルター級タイトルマッチ12回戦
ハイメ・ムンギア(メキシコ)対デニス・ホーガン(オーストラリア)

ムンギア:22歳/32戦32勝(26KO)
ホーガン:34歳/30戦28勝(7KO)1敗1分

画像: ハイメ・ムンギア Getty Images

ハイメ・ムンギア
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 ハイピッチで防衛戦をこなし続けるムンギアの猛ダッシュが止まらない。サダム・アリ(アメリカ)を倒して世界王者になってから1年とたたないのに4度目の防衛戦に臨む。12ラウンドをフルに戦った井上岳志(ワールドスポーツ)戦からもわずか2ヵ月半のスパンになる。

画像: デニス・ホーガン Getty Images

デニス・ホーガン
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 すんなりした体躯から左右の強打で迫る魅力的なファイトスタイルで、近将来のスター候補とされるムンギアが迎えるのは、オーストラリアのベテランだ。ホーガンの28勝7KOという戦績はいかにも迫力がないが、日本の野中悠樹(井岡弘樹)にフルマーク勝ち、さらに世界戦を戦ったこともあるジミー・キルレイン・ケリー(イギリス)にも大差勝ちと、堅実に勝ち星を積み上げてきた。

 圧倒的な攻撃力を持つムンギアだけに、ホーガンも攻略の術を見つけるのは難しい。また、若きチャンピオンは、世界の頂に立ってから初めて自国のリングでの戦いになる、いよいよ張り切るにちがいない。ホーガンは相当の覚悟が必要だ。

◆女子王者ムシノも防衛戦

 前座ではWBO女子フライ級タイトルマッチが行われる。2度目の防衛戦に臨むのはアレリー・ムシノ(メキシコ/29歳/27勝10KO3敗2分1NC)。挑戦者はジャイリネス・アルテューベ(ベネズエラ/29歳/10勝10KO2敗)。アルテューベはアルゼンチンでの2度の世界戦で健闘したものの、そのほかの実績は9回戦ひとつ、6回戦ふたつ、あとはすべて4回戦でのもの。ムシノは地力の差を見せたい。

画像: パトリック・テイシェイラ(左) Getty Images

パトリック・テイシェイラ(左)
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 ブラジル期待のスーパーウェルター級、パトリック・テイシェイラ(28歳/29勝22KO1敗)が31歳のベテラン、マリオ・アルベルト・ロサノ(メキシコ/33勝24KO8敗)と対戦する。不
敗のままアメリカに進出したテイシェイラは、カーティス・スティーブンス(アメリカ)にあっさり2回TKO負けで株を下げた。その後、手強いナサニエル・ガリモア(ジャマイカ)に判定勝ちしており、ここで再び勢いをつけたいところ。

画像: ディエゴ・デラ・ホーヤ(右) Getty Images

ディエゴ・デラ・ホーヤ(右)
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 また、オスカー・デラ・ホーヤの甥っ子でスーパーバンタム級の世界ランクに名前を連ねるディエゴ・デラ・ホーヤ(メキシコ/24歳/21戦21勝10KO)が、エンリケ・ベルナケ(メキシコ/30歳/24勝12KO12敗)と対戦。デラ・ホーヤはパワーはいまひとつながら、ビジーな波状攻撃で元世界王者のランディ・カバジェロ(アメリカ)、世界戦を3度も経験しているホセ・サルガド(メキシコ)を撃破してきた。かつてはホープのひとりと目されながら負けが込んでいるベルナケには圧勝したいところだ。

まだまだあるぞ!注目カード

◆デレビャンチェンコがカムバック戦

画像: セルゲイ・デレビャンチェンコ Getty Images

セルゲイ・デレビャンチェンコ
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画像: ジャック・クルカイ Getty Images

ジャック・クルカイ
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 ミドル級の実力派セルゲイ・デレビャンチェンコ(ウクライナ/33歳/12勝10KO1敗)が
13日、アメリカ・ミネソタ州ミネアポリスで大事な一戦に臨む。元WBA世界スーパーウェルター級暫定チャンピオン、ジャック・クルカイ(ドイツ/33歳/25勝13KO3敗)と12回戦で相まみえるのだ。

 昨年10月、ダニエル・ジェイコブス(アメリカ)と空位のIBFタイトルを争い、激戦の末に1-2判定で惜敗したデレビャンチェンコにとってこれが再起戦。アメリカには2度目の登場となるクルカイはかつてのアマチュア世界選手権優勝者。決して油断はならないが、巧妙な距離感覚で戦いを上手に管理するデレビャンチェンコだけに、ここは楽々と突破して、ミドル級上位をキープしてもらいたいところだ。

画像: ピーター・クィリン Getty Images

ピーター・クィリン
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画像: カレブ・トルアックス Getty Images

カレブ・トルアックス
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 FOXスポーツ1で全米中継されるPBC(プレミア・ボクシング・チャンピオン)プロモーシ
ョンのこのイベントには、このほかにも注目の一戦が用意される。ピーター・クィリン(アメリカ/35歳/34勝25KO1敗1分)とカレブ・トルアックス(アメリカ/35歳/30勝19KO4敗
2分)の10回戦は文字どおりのサバイバル戦。ジェイコブスに初回TKOで敗れてミドル級を追われたクィリンは2年のブランクの後にスーパーミドル級でカムバックした。ここミネソタがホームのトルアックスはジェームス・デゲール(イギリス)に敗れてIBF王座から陥落している。年齢的に見ても、ともにこれがラストチャンスの戦いになる。

画像: クリス・コルバート Getty Images

クリス・コルバート
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画像: ジョーイ・スペンサー Getty Images

ジョーイ・スペンサー
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 前座にはPBCの若手が数多く登場する。なかでもライト級のクリス・コルバート(アメリカ/22歳/10戦10勝3KO)、スーパーミドル級のマニー・パウェル(アメリカ/21歳/9戦9勝5KO)は評価が高い。さらに19歳の白人スラッガー、ジョーイ・スペンサー(アメリカ/6戦6勝6KO=ミドル級)はまだまだ粗さは残るが、破格の破壊力の持ち主だ。

◆ペドロ・ゲバラはスーパーフライ級で2階級制覇を目指す

画像: ペドロ・ゲバラ Getty Images

ペドロ・ゲバラ
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 日本で3度も世界戦を戦っている元WBC世界ライトフライ級チャンピオン、ペドロ・ゲバラ(メキシコ/29歳/33勝19KO3敗1分)は現在スーパーフライ級で世界王座を狙っている。13日、メキシコ・ハリスコ州チウアトランで、マルビン・ソラノ(ニカラグア/28歳/21勝8KO3敗)と戦う。

 日本でも減量に苦しんだゲバラは、もとはと言えば万事手際のいいテクニシャン。2階級上げてのびのびと戦っている。ロシアでミーシャ・アロヤン、プエルトリコではハビエル・シントロンと実力者には完敗しているソラノが相手だけに快勝しておきたいところ。

 同じカードではバンタム級のカリム・アルセ(メキシコ/20歳/15勝6KO1分)が、ヨルダン・エスコバル(ニカラグア/14勝3KO7敗2分1NC)と。スターボクサー、ホルヘ・トラ
ビエソ・アルセの甥にあたるカリムは着実にキャリアを積んでいる。

文◎宮崎正博

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