18日(日本時間19日)、エマヌエル・ロドリゲス(26歳=プエルトリコ)を2回で粉砕し、『WBSS(ワールドボクシング・スーパーシリーズ)準決勝』(イギリス・グラスゴー)を堂々勝ち上がったWBA&IBF世界バンタム級チャンピオン井上尚弥(26歳=大橋)が21日、イギリス・ロンドンから帰国。羽田空港に集まった大勢のファン、マスコミに大歓待を受けて迎えられた。

上写真=到着出口に出てきた一行は、大勢詰めかけたファンの歓迎ぶりににっこり

「試合が終わってからほとんど寝ていない」状態。長旅の疲れも当然あるだろう。けれども、「みなさんの歓迎ぶりを見て、疲れも吹っ飛びました」と爽やかに笑うヒーロー。待ち構えたファン、関係者の中に、ひと足早く帰国していた愛息・明波ちゃんを見つけると、完全に破顔状態。「いるとは思わなかったので。試合後も1時間くらいしか一緒にいられなかったので、もうデレデレ(笑)」と、愛おしそうに抱き上げた。

画像: 大歓迎の中、愛息・明波ちゃんを抱き上げる。誇らしいシーンだ

大歓迎の中、愛息・明波ちゃんを抱き上げる。誇らしいシーンだ

 試合後の会見等が終わり、ホテルへ戻ったのは深夜。翌日は、テレビ収録の都合上、早朝便でロンドンへ移動するため、一睡もできず。「ロンドンでは2時間くらい買い物して、いったんホテルへ戻って気絶するように寝ました」と、疲労と解放感を同時に味わった。

 初回の緊迫した攻防を経て、2回に3度ダウンを奪っての圧勝劇。「内容的には100点をつけれる。でも、その中で、もっとこうしたいああしたいというのがある」と、相変わらずの貪欲さだ。
 試合直後には「1ラウンドは(体や動きが)硬かった」と振り返っていたが、映像を見直して、「そこまでの雑さはなかった」と、戦っているときの感覚との違いを示した。
 会見に同席した父・真吾トレーナーは、「良い尚を知ってるので、1ラウンドは硬いなと。『大丈夫かなぁ』って、ちょっとびっくりしちゃった」と、手に汗を握っていたことを明かすが、「でも、相手の方が逆に力んでいた。向こうのほうが硬かったのかな。(ロドリゲスが)力んで出てきたから、ああいう早い展開で(KOまで)行っちゃったのかなと。2ラウンドは、初回を覆すものがあったので、80点、85点くらいですかね」と、ちょっぴり辛口の採点をつけると、「なかなか高いですね」と、尚弥苦笑い。“パーフェクト”を求めて突き進む親子らしいやり取りだった。

重圧を最高の結果ではねのけた親子。自然と笑顔がこぼれるのは当然だ

 公開練習で、ロドリゲスのウィリアム・クルス・トレーナーが真吾さんを突き飛ばした件は、やはり息子の闘争心をさらに燃え盛らせていた。「グラスゴーでは、その件に関してはひと言も話さなかったけれど、絶対にぶっ倒してやろうと思ってました。だから、最初にダウンさせたときも、向こうのセコンドに向かってアピールしてやろうかと思ったけれど、ボクシングはスポーツなのでとどめました」。
 突き飛ばされた真吾さんも、「あの後、2回くらいにらみ合いがあって、今度なんかやられたらやってやろうと、拓(弟・拓真)に眼鏡を渡したけれど、そこでやり合ったら向こうと同じになるし、自分がカリカリすると、尚に影響しちゃうから」とグッとガマン。現地のファンは無礼な振る舞いをしたロドリゲス側にブーイングを浴びせ、“モンスター”人気と相まって、井上陣営は完全に人心をつかんでいたのだ。
 ひと言もなくリングを去ったロドリゲス陣営だが、囲み会見後にクルス・トレーナーが真吾さんのもとへ近づき、「グッド・ファイト」と称賛。真吾さんも彼の肩を叩いて、わだかまりは解消したのだという。

 硬かった、という初回の攻防は、カウンターにカウンターを重ね、しかも互いにそれらをかわしていくという濃密なやり取りが繰り広げられたが、やはり本人も「めちゃくちゃ楽しかった」。しかし、何よりも嬉しいのは「見ていてくれた人たちが、ハラハラドキドキして楽しかったと言ってくれること。欲を言えば、あれを2、3ラウンド続けて、4、5ラウンドで倒せればベストだった」。いったい、どこまでファンの期待に応えようとするのか。あの試合を見て不満を抱くファンなんてきっといないはずだ。さらに、2回に最初に倒したシーンについて、「右でボディを打ったとき、ロドリゲスの左フックがくる“雰囲気”を感じた。だから、スウェーしながら、中から左を打ちました。あれ、フックじゃないですね。なんなんだろう」と、わずか0コンマ何秒のやり取りを、興味深く解説してくれた。録画した方は、ぜひ何度も見直していただきたい。

 昨年の2戦連続初回KO勝ちにより、世界中の、異常なまでの期待感の高まりがあった。“モンスター”といえど、井上尚弥もひとりの人間。誰も味わったことのないプレッシャーを抱えた。けれども、最高の結果を鮮やかに演出し、ようやく解放されたのだ。「肉体的には大丈夫だけれど、精神的に少し休みたい」というのは当然のこと。しかし、「そこが回復したら、軽い練習を始めたい」と、決定済の次戦を見据える。

にこやかなポーズ。しばし心を休めて、ふたたび走り出す

 WBSS決勝戦は、「リスペクトしていて、(自分のボクシングに)参考にしていた」世界5階級制覇のWBA同級スーパーチャンピオン、ノニト・ドネア(36歳=フィリピン)とのスーパーファイトとなる。「親交もあるし、そういう存在なので、まだ戦うということに向けての気持ちの切り替えができていない」と複雑な表情を浮かべるが、家族との安らぎの時間を経て、ふたたび戦いへ臨む心を再構築するのだろう。

 われわれの中に刻まれた余韻の濃度は十分すぎる。またしても新たに披露された“伝説の試合”を、何度も何度も、目で頭で味わい返そう。そうして、リフレッシュした彼が現れるのをゆっくり待ちたいと思うのだ。

文&写真_本間 暁

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