11月5日に発表された、アメリカンフットボール「Xリーグ」とカナダのプロフットボールリーグ、CFL(Canadian Football League)との提携協議は日本のアメフットに新たな国際展開の可能性をもたらすことになる。

 CFLは、世界レベルで見ても、NFLの次に成功しているプロリーグだ。選手やコーチ・スタッフ全員に年俸を支払い、観客動員やテレビ放映料、関連商品の売り上げでリーグを運営し成立しているという点では、NFL以外にはCFLしかいないと言っても良い。

 
 今回の提携のきっかけは今年6月にさかのぼる。日本アメリカンフットボール協会の中で長年国際関係の仕事に携わってきたIBMビッグブルーの山田晋三シニアディレクターが、国際会議で知り合ったフットボールカナダ(カナダの競技統括団体)の友人に、CFL内部の人間をメールで紹介してもらったことだった。「ほぼ、飛び込み営業です」と山田さんは言う。

 山田さんは、CFLが『CFL2.0』というビジョンを打ち出していること、国際的に開かれたリーグになろうとしていることを認識していた。米国では2020年に新プロリーグのXFLが始動し、CFLは国際戦略を打ち出している中、2019年にオーストラリアで開催されるはずの世界選手権は中止となり、日本が世界とつながって行くためには、ここで動かないといけないという強い危機感を持っていたという。それがこの「飛び込み営業」につながった。

 最終的に、ランデイ・アンブロージーCFLコミッショナーにたどり着き、Xリーグの深堀理一郎理事長とネットを介した協議も経て、今夏8月には山田さんがカナダに赴き、アンブロージーコミッショナーと会談した。

画像: 今年8月に、山田晋三さんがカナダを訪れ、アンブロージーコミッショナーと直接会って協議した=山田さん提供

今年8月に、山田晋三さんがカナダを訪れ、アンブロージーコミッショナーと直接会って協議した=山田さん提供

 日本では、トップ就任以来、矢継ぎ早にXリーグ改革の施策を打ち出してきた深堀理事長が強い推進力でこの課題に取り組んだ。Xリーグ内で、異例の速さで合意形成がなされ、今回の発表にこぎ着けたという。

 山田さんに今回の提携について質問した。

Q:今回の提携、日本やXリーグにとってのメリットとは何でしょうか

A:まず第一には、 CFLへの道筋が劇的に広がったことと、CFLから日本への道についても議論がスタートできるということです。
二番目には、連携による共同マーケティングなどの機会が生まれます。ただ、何よりも、日本人の若い選手にフットボールを通じた選択肢、もっと言えば「夢」を提供できることが最大のメリットと考えています。

Q:「CFLの道筋」について質問です。CFLは国際選手枠(インターナショナルプレーヤー)を持っていますが、現状は、優秀な米国人選手を補強するために使われてしまっている。そうではない日本や欧州に向けた枠が用意されるということでしょうか。

A:「CFL 2.0」の中でグローバルプレーヤーという枠が創設されています。これはアメリカ人、カナダ人以外が対象です。1チームあたり、アクティブロースターが2人、プラクティススクワッドが3人。CFLは9チームなので45人です。これは以前にあった、NFLヨーロッパに匹敵するインパクトです。

Q:今、日本のフットボールでは、NFLというか、米国への挑戦が個人レベルで細々とつながっています。今回の提携で何が変わりますか。

A:リーグ間の提携ということが大きい。組織としてコンバインの実施や人材の交流を図ることができます。個人の「点」ではないのです。競技活動に必要なビザ取得も、すべてクリアに進めることができます。

Q:選手の受け入れ窓口がしっかりあるという理解でよろしいでしょうか。

A:その通りです。Xリーグを通じてのCFLへの紹介ということになります。もちろん連携なので、ギブ&テイクが必要です。Xリーグ側もCFLを受け入れる準備は必要と考えています。将来的には、ある程度のルール変更や、従来の外国選手枠とは別に新たにカナダ人選手の枠を設けたりといったことが考えられます。

Q:カナダの選手が11人制フットボールをやる機会を創出することにもなりますね。日本のファンはCFLにはなじみが薄いと思うのですが、パスが多く、レシーバーが複数で縦へのモーションできたりと、技術的な面でアメフットとの違いがあります。選手たちにとって、カナディアンフットボールをプレーするメリットはあるのでしょうか。

A:明確にあります。よりパッシングモアであり、細かい動きや正確な動きで、レシーバーやDBなど日本選手の特徴を生かせると思います。なによりも、NFLへの道筋になり得ます。言うまでもなく、最も多くのNFL選手を生んでいるプロリーグです

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 質疑応答にもあったように、CFLは米国選手を招聘してチーム力を強化するための「外国人選手枠」がある。NFLファンにもなじみが深いQBのウオーレン・ムーン(元オイラーズなど)を始め、ダグ・フルーティー(元ビルズなど)、ジェフ・ガルシア(元49ナース)がその枠で活躍した選手だった。1チームあたり最大20名の枠があるが、NFLを狙える実力を持ち、米カレッジフットボールなどでも活躍した選手が競い合う枠の中に、日本人が入り込める余地はなかった。今回のグローバルプレーヤー枠は、そうした米国人向けの枠とは違うものだ。

 現状、日本人選手のNFLへの挑戦は、個人の努力によって細々と続けられている。しかし、NFLは選手供給のほとんどすべてをカレッジフットボールに頼っている。NCAA所属大学は約700校、トップカテゴリーのDiv1a所属大学だけでも130校。そこから、日本の選手にはないような、高い身体能力と技術と経験を持った選手が毎年数千人輩出される。その彼らでさえ、NFLのロースターに残れるのは1/100か、それ以下なのだ。客観的に見て、日本で育った選手がNFLに入る可能性はゼロに等しい。

 受け入れ態勢の問題もある。法人組織としてのNFLジャパンはすでにない。仮に奇跡的に超人的な能力の日本人選手が現れたとしても、NFLには日本における選手受け入れのためのリエゾンがないのだ。日本のファンはことあるごとに「NFL」を口にするが、諸々の課題を考えれば、人工衛星を打ち上げるのがやっとの国が「宇宙飛行で火星に行く」と言っているようなもの。現実は身の丈に合っていないのだ。

 今回のCFLの「グローバルプレーヤー」という枠は、日本のためだけにあるのではない。欧州、メキシコの選手と競うことになる。しかし、細かく正確な動きが得意という日本の選手の能力から言えば、OLやDLでなければ、十分に競り勝てる。WRやDBがアメフットよりも多く必要な競技体系であればなおのことだ。

 CFLにとって、「2.0」は2度目の国際化戦略という。前回は1990年代で、国際化と言ってもマーケットは隣国アメリカ。カリフォルニア州サクラメントにチームを持ったが、赤字続きで失敗し、チームはテキサス州に移転後、消滅した。今回のアンブロージー氏の戦略は、対象は米国外で、過去の失敗とは明確に異なる。現在はメキシコ、欧州が応じているが、CFLは東西2ディビジョンに分かれており、太平洋に近いエリアのチームも多い。マーケット的にもアジア重視の戦略を採るチームがあってもおかしくない。日本の存在は、プレーヤーの実力を除いた部分でも大きい。

 CFLは公式サイトで、2月1日・2日に、東京と大阪で「グローバルコンバイン」を行うことを発表している。4月16日には、従来のドラフト会議とは別に、「グローバルドラフト」も開催する。

 山田さんとの質疑にあったように、日本のアメフットからは、1990年代から2000年代に存在したNFLヨーロッパリーグに多くの選手が参加した。河口正史さん、中村多聞さん、板井征人さん、そして木下典明選手らが、多くを持ち帰り、日本のアメフットは大きく変わった。今再び、変化のための扉が、若者たちのために開かれようとしている。【小座野容斉】


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