今シーズンで勇退する関西学院大学アメリカンフットボール部の鳥内秀晃監督。選手たちの「負けない強さ」を育んだ指導力と、軽妙な大阪弁の語り口、厳しくあたたかい人柄で、多くの人たちを魅きつけてやまない監督の魅力を、長く取材してきた担当記者たちが綴ります。Vol.1は、スポーツニッポン新聞社報道部・堀田和昭記者に寄稿していただきました。

評価された「唯一無二の鳥内節」の完コピ

 言葉で勝負する記者にとって、鳥内監督の存在はありがたい。コメントが簡潔で、インパクト大。何より、コテコテの関西弁は新聞の見出しになりやすく、読者、そして取材者を楽しませる。

 「オレ、あんな喋り方、してへんで」

 自分の談話を新聞で目にした後、半分笑顔、半分真顔で〝抗議〟するのも、お約束。その度に、「いや、絶対に言ってますって」(決して声には出さない)と、心の中でささやかなツッコミを入れている。

 だから、ラストイヤーの今季開幕前、ロングインタビューをお願いするにあたり、決意した。「唯一無二の鳥内節」(勝手にこう呼んでいる)を完コピしよう、と。普段の取材では使用しないレコーダーを持参。1時間に及んだ内容を何度も何度も聞き返し、手応えのある紙面が完成した。読んだ馴染みの記者はSNSで「鳥内節の再現力がすごい」と評価。自分の「意図」が企画に反映された自信があったからこそ、掲載後初めて闘将と顔を合わせた時の第一声は衝撃だった。

 「オレ、〝まだ死ねへんし〟なんて言い方してへんで」

 慌てて、新聞を開いてみた。指摘を受けたのは、インタビューのラストの部分。そして、レコーダーの再生ボタンをもう一度、押してみた。確かに、表現が微妙に違う。そのとき、本当の意味で知った。鳥内監督の言葉に対する〝こだわり〟の強さを――。

 名将と親しい記者の間では、服装へのこだわりは有名な話だ。チームカラーの青がローテーションの主力で、ライバル校のエンジや黒は決して身につけない。強い印象を与える口ヒゲは、米国にコーチ留学していた20代に「幼く見られないために」生やし始めたもの。付き合いは30年を超え、こだわり以上の愛着を感じている。

 そのトレードマークと強面(失礼)のせいで、闘将は古き体育会系体質の指導者と誤解する人が多い。実際は全くの逆で、部員との対話を重視し、体罰は完全否定。アメフトを通じて社会でも通用する人間形成を目指し、勝利至上主義の下、「セミプロ」と化した一部体育会の存在を最も嫌う。

 監督退任後、含蓄に富んだコメントの数々は、どこへ向かうのか。カリスマ的な存在ではあっても、28年間率いた部に影響力を残すような人では絶対にない。米国コーチ留学、教員免許取得など、経験から得た一家言には説得力と迫力がある。どんなフィールドに進まれても、常に言葉を発信していただきたい。

画像: 馴染みの店で、試合では絶対にありえない満面笑みの鳥内監督  提供:堀田和昭さん

馴染みの店で、試合では絶対にありえない満面笑みの鳥内監督  提供:堀田和昭さん

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