アメリカンフットボール日本代表が来年(2020年)3月1日に、米テキサス州で、米国のプロフットボール育成リーグの「THE SPRING LEAGUE(ザ・スプリング・リーグ、TSL)」選抜チームと試合を行うことが決まった。2015年の世界選手権(米オハイオ州カントン)以来、4年8カ月ぶりの代表による試合となる。 今回の日本代表が持つ意義と狙いとは何か。日本アメリカンフットボール協会強化育成委員の山田晋三さん(IBMビッグブルーシニアディレクター)に聞いた。【小座野容斉】

USAフットボールとTSLとは個別に会談、電話会議とメールで合意

 山田さんは前回の日本代表チームや、U19日本代表、大学日本代表で何度もシェフ・デ・ミッション(Chef De Mission=代表団長)を務めており、国際アメリカンフットボール連盟(International Federation of American Football=IFAF)との窓口役も担って来た。

 山田さんによると、きっかけは2018年7月だった。メキシコシティで開催されたU19世界選手権で米国の競技統括団体「USAフットボール」代表のスコット・ハレンバック氏と、新たな枠組みでの連携について協議。日本としても国際大会(世界選手権など)の重要性は認識しつつも、北米との連携を強めていきたい考え方を共有した。

 2018年末、2019年に開催される予定だった世界選手権オーストラリア大会の事実上の中止を受け、翌2019年1月電話会議でUSA フットボールと新たな枠組みでの代表戦について協議。日本代表の対戦相手として、NCAAカレッジのディビジョン1下位校、ディビジョン2校あるいはディビジョン3校まで様々なアイディアを検討し共有したという。そして、2020年1月のインターナショナルボウル時に試合を開催する方向で進めることで合意した。

 一方で、2019年2月にTSLのブライアン・ウッズ最高経営責任者(CEO)と連絡が取れ、電話で会談した。TSLへの日本人参加促進のための対話がスタートしたという。

 2019年4月に、日本側は、NCAA傘下のカレッジでは、適切な対戦チームが見つからない旨をUSAフットボールから連絡を受けた。この後、7月にかけて断続的に電話で協議、USAフットボールからはプロチーム(どのレベルのプロかは不明)との対戦提案を受けたりするが、安全面や条件面で折り合いがつかなかったという。この段階で日本側からTSLとの対戦を提案するが、USAフットボールは、TSLとの関係を持っていないことを理由に、この提案には後ろ向きだった。

 8月、山田さんは直談判のため渡米する。インディアナポリスでUSAフットボールのアーロン・イングラム米代表チームシニアマネージャーと、 ニューヨークでTSLのウッズCEOと個別に対談・協議し、3者共催という形で試合を実施していく方向で合意したという。その後、3者で開催地・時期・条件などに付いて、複数回の電話会議、無数のメールのやり取りを経て、今回の発表に至ったという。

TSLは日本のフットボールの現在地を測る最も適切な相手

Q:11月20日の「日本代表が来春5年ぶりに招集 米TSL選抜とNFLベースのルールで対戦」という記事は、大きな反響を呼びました。アクセス数は、過去すべての記事の中で1、2を争う多さで、FacebookなどSNSでも数多くシェアされました。ファンの皆さんが、いかに日本代表の活動に飢えていたかを反映したのではないかと思います。

山田 :おっしゃる通りだと思います。そういう期待は大変ありがたい。

Q:まずは、なぜ、対戦相手としてTSLを選んだのか教えてください。

山田 :日本のフットボールの現在地を測る意味では最も適切な相手ではないかと考えました。TSLに所属するのは、ほとんどが米国の大学を卒業し、プロフットボール(NFL/CFL/XFL)を目指す選手たちであるということ。昨年は、日本からもオービックシーガルズのRB李卓選手やWR西村有斗選手らが参加し、一定の結果を出したということ。さらに、現地を視察したオービックの大橋誠シニアディレクターからも、安全面を含め、いろいろ情報を得ることが出来ました。大橋さんは自チームの視察だったのですが、いろいろと協力してくれました。
その結果、TSLは、チームとしての完成度は低いものの、一部のタレントはプロでも通用していることから、日本代表がこのレベルの対戦相手とどこまでできるかは、今後のCFLや他のプロリーグに挑戦するにあたっての基準になると考えました。
もちろん日本では、プロを目指さない選手も大勢います。ただ、大枠として、今後、北米のチームとのマッチメイクを考える上で基準になるという観点に立ちました。
付け加えると、大きかったのは、TSLのウッズCEOの存在です。非常に親日的で日本との連携を図ろうと努力をしてくれました。このようなパートナーなら継続性が担保できるのではないかと考えました。

Q:TSLは、実力の面でいえば、例えば過去に日本代表が戦ったチームと比べてどれくらいのレベルなのでしょうか。

山田 :そこは未知数な部分があります。率直に言って、タレントレベルは向こうが上でしょう。しかし、チームとしては未知数です。さきほど言った「現在地を理解できる」というのはそういう意味もあります。

Q:世界選手権は、ロースター登録期限もあって、どんな選手が出てくるかある程度事前にわかると思います。

山田 :今回は、そこも厳しいかもしれません。ただ、この試合は1万人以上が入る最新鋭屋内スタジアムで有料で開催されます。TSLもチケットを、売りたいと思っているなずなので、そこはプロモーションのために、選手の情報を早めにリリースして来ると考えています。今までの春季リーグ的な扱いに加えて、今回はUSAフットボールの力を借りて、興行的に成功したいと考えているでしょう。このような国際試合を実現できることは彼らにとっては大きなバリューではないかと思います。

Q:別の質問になります。Xリーグと提携したCFLのトライアウトが2月に日本でありますが、CFLを志望する選手は、日本代表とバッティングしてしまうのでしょうか。

山田 :同時に実施します。つまりCFLと日本代表両方のトライアウトをするということです。

Q:両方、掛け持ちできるのですか。

山田 :コンバインが、日本代表の選考とCFLの選考の両方を兼ねるということです。

Q:なるほど。代表選手の中から、CFLへ行く選手も出るということですか。

山田 :もちろんです。つまり日本代表の選考で合格した選手が、CFLのグローバル枠でも選ばれる可能性があるということです。
もちろん、どうしてもこの時点でCFLに行く決心がつかない選手もいると思います。しかしCFLのスカウトから評価されたことで前向きに捉える選手がいるかもしれません。CFLのスカウトにはできるだけ多くの日本のいい選手を見て欲しいと思っております。この選考方式は、日本代表の藤田HCにも当然了承を得ています。

Q:これまで日本代表の活動の軸となってきた4年に一度のIFAF世界選手権は、2019年の大会が事実上中止となったこともあり、それだけでは十分ではなくなってきたと思います。今回の代表招集と米国のチームとの対戦は、新たなフル代表の形を考えるスタートになるという理解でよろしいでしょうか。

山田 :おっしゃる通りです。持続性を意識した新たな枠組みの模索を進める必要があったということです。

Q:日本国内のとらえ方とは異なり、海外からは日本の社会人リーグはある種のプロと見られています。そのために、NCAAの所属大学とは試合はできなかったということでしょうか。

山田 :NCAAカレッジのチームとは、決してゲームをできないわけではないが、本当にそこに止まっていていいのかということを考えました。次のレベルに行くには、次のレベルの選手とやらなければいけないのではないかと。NFLルールを基本的に適用するということもチャレンジの一つであり、次のレベルへ行くためです。
ただ、ここで強調しておきたいのは、必ずしもXリーグがプロ化に向かうという話ではなく、選手にとって多様な選択肢を提供すべきではないかということです。
また、安全面の配慮はとても重要です。

Q:スプリングフットボールは、TSLだけでなく、今春立ち上がり途中で終結してしまったAAF(アライアンス・オブ・アメリカン・フットボール)も、キックオフリターンを行なわないなど、安全面では、さまざまな取り組みをしていました。

山田 :もちろん、NCAAもNFLも、競技の安全面には最大限の配慮をしていると思います。ただし、慣れの問題で危険になり得ることもあるかと考えています。そういうことはきちんと防ぎたい。

Q:こういう枠組みを継続的・持続的にできるようにしていただきたいと思います。

山田 :とにかく我々はアメリカをお手本にずっとこのスポーツに取り組んできた訳で、アメリカとの連携や対戦はこれからも継続的に実施すべきと強く感じています。

画像: USAフットボールのアーロン・イングラム米代表チームシニアマネージャーと山田晋三・日本アメリカンフットボール協会強化育成委員=2019年8月、山田さん提供

USAフットボールのアーロン・イングラム米代表チームシニアマネージャーと山田晋三・日本アメリカンフットボール協会強化育成委員=2019年8月、山田さん提供

代表選考は東京と大阪で行われる2月のCFLトライアウトを活用

 世界選手権に向けた日本代表は、候補選手を2カ月程度かけて絞り込み、IFAFの規約にある45人のチームにした上で、1カ月弱をチーム練習に当ててきた。今回は、代表選考に当たって、2020年2月に、東京と大阪で行われるCFLのトライアウトを活用するという。

 CFLのトライアウトがどのような種目や基準で行われるのかが、情報がない。競技自体が違うため、それがそのまま、日本代表選手としての評価と等しいかとといえば難しい。トライアウトだけで選考を完結させるのは、実際には無理があるだろう。

 他方で、米国と戦う選手を、日本の国内リーグのパフォーマンスだけで評価して選ぶのにも限界がある。サッカー日本代表は、海外組が大半を占めるし、ラグビー日本代表にはスーパーラグビーで、ニュージーランド、オーストリア、南アフリカの強豪と戦う「サンウルブス」という枠組みがあった。Xリーグも優れた米国人選手が増えてきたとはいえ、フィールド上の11人の中で最大2人。11人全員が米国人のチームと戦うのとは全く違う。そういう点では、隣国カナダの目で評価した日本選手を代表に選べるのは大きな利点となる。

 今回の代表戦は、秋のシーズンを終了後、短いチームで2カ月弱、早めにシーズンを終えたチームの選手で3カ月半ほどの余裕がある。大きな怪我をした選手を除けば、コンディション面ではある程度の余裕はある。2月上旬にある程度のパフォーマンスを見せられないようなら4週間後の代表戦参加はおぼつかない。NFLのスカウティングコンバインも「フットボールとは関係ない運動会」と揶揄される一方で、決められた日時・場所できちんと結果を出すためのコンディショニングができるかどうかはプロ選手に必要な資質の一つと考えられてもいる。

 前回の世界選手権で日本代表が米国に12-59で敗れた後、森清之ヘッドコーチ(HC)は「これがアメリカのベストのチームかといえば全然そんなことはない。そういうレベルの米国代表に、このスコアで負けるというのが、今の日本の実力だ」と話したが、同時に「今回のこのメンバーで、同じチームとして1年間練習し、米のチームと対戦を重ねたら、今の米代表くらいなら十分に勝てるようになる」とも語った。 恒常的に招集される日本代表があればもっとレベルは向上するという考えに期待を抱いた。残念ながら、IFAF内のゴタゴタなどもあり、日本代表が試合をする機会はその後5年近く失われた。

 4年に一度のIFAF世界選手権は一定の意義は持っているが、日本代表の活動のベースとするには限界がある。それが、今年の大会中止ではっきりわかった。来年3月のTSL選抜との対戦が、今後、毎年日本代表が組織されるための嚆矢となることを望みたい。

画像1: 前回の世界選手権、日本vsアメリカ戦から=米オハイオ州カントンで2015年7月 撮影:小座野容斉

前回の世界選手権、日本vsアメリカ戦から=米オハイオ州カントンで2015年7月 撮影:小座野容斉

画像2: 前回の世界選手権、日本vsアメリカ戦から=米オハイオ州カントンで2015年7月 撮影:小座野容斉

前回の世界選手権、日本vsアメリカ戦から=米オハイオ州カントンで2015年7月 撮影:小座野容斉

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