12月16日(月)、アメリカンフットボールの日本社会人選手権「JAPAN X BOWL(ジャパンXボウル)」で対戦する、富士通フロンティア―ズとパナソニックインパルス。両チームの指揮官に、インタビューした。

まずは、パナソニック荒木延祥監督から。

画像: パナソニックの荒木監督=2019年12月2日、撮影:小座野容斉

パナソニックの荒木監督=2019年12月2日、撮影:小座野容斉

パナソニックは、昨年まで3年連続で準決勝で敗退、東京ドームにたどり着けなかった。昨年は準決勝でIBMに敗れた翌日に、選手の不祥事案が判明し、監督責任を問われた荒木監督は、四方哲郎部長とともに、6カ月間のチーム活動停止となった。チームは春季公式戦をすべて辞退。一度は地に落ちた名門インパルスを、QBアンソニー・ロウレンスを筆頭にした強力な補強と、夏以降の猛練習で再建し、4年ぶりJXBへの導いた。

Q JXBで対戦する監督がともにRB出身というのは珍しいと思います。体格も似通っていますし、年次的にも荒木監督は富士通の山本洋ヘッドコーチ(HC)と近いですよね。

荒木監督:山本さんが少し先輩ですね。学生時代(荒木監督が早大、山本HCが桜美林大)に直接戦った記憶はあまりないのですが、1997年に2部落ちしていた早稲田が入れ替え戦で戦った相手が桜美林大でした。山本さんは既に卒業されていたと思いますが。

Q RB出身の指導者としてご苦労や良かった点などはありますか

荒木監督:ただ、私は現役時代はRBでありながら、RBコーチをしたことは一度もないのです。コーチ1年目は村上(博一)監督に「LBとキッキングをやれ」と言われて。そこで2年やって。その後は、ディフェンスコーディネーターをやっていました。実はオフェンスのコーチの経験はないのです。

 いまだに教えるのが難しいというか教えられないポジションは、一つはQB。サイドラインからはいろいろ思うことはありますが、自分がその視野でゲームを見たことがないのでわからないというのが正直なところです。あと、DBも難しい。レシーバーとの駆け引き、タイミングというものを体験したことがないので。フットボールの理屈は言えるのですが、感覚的なものが難しいと思います。

Q 荒木さんも山本さんも、TBとしてバリバリ走るというよりはブロッカーだったり、スペシャルチーマーとしての出番が多かった。

荒木監督:私はブロッカーとしての起用が多かったので。そういう意味ではOLのような、オフェンスの陰の立役者に、感情的にも思考の上でも、意識が向かうというのはありますね。チーム作りの上で、OLに重きを置いていますね。

Q 東京ドームに来た時のパナソニックさんは、松下電工時代から、別のチームになるというか、ワンステップ強くなるという印象があります。

荒木監督:前回の試合(2015年JXB、パナソニック24-21富士通)が、今回と同様に下馬評は富士通有利で、我々が勝たせてもらったというのが印象として強いのではないかとおもいますが。

Q 今回の下馬評は決して富士通有利ではないと思います。五分五分だと思いますが。

荒木監督:今年9月の対戦では、第3Qの途中で4本差(7-35)となって、控えの選手を出して、最後は「もう攻撃するの止めといたろか」という感じの富士通と、最後の2ミニッツオフェンスまでやって、点を取りに行った我々と。それで27-45という点差ですから。

Q 富士通に2017年まで在籍していたQBコービー・キャメロンに2勝しているチームはパナソニックだけではないかと思います。パナソニックはDLのパスラッシュなど、パスディフェンスが強くて、パサータイプのQBを得意にしてるというように感じます。富士通QBバードソンは負傷で欠場が確定していますが、バードソンのようなラン能力も高いQBと、高木翼のような、よりパス重視のQBとではどちらがやりやすいのでしょうか。

荒木監督:高木選手とは本格的に対戦したことがないのですが、彼が本当に窮地に陥ったシーンを見たことがない。なので、ちょっとわからないというのが現段階の正直なところです。我々のディフェンスが高木君を窮地に追い込めないようなら、しんどいことになる。DLがどこまで頑張れるかにかかっています。そこで彼にバグが生じるようになれば面白い。
 ただ、QBを守るのが、あの鉄壁のOLですから。非常に困難だとは思います。

 今回は出ないということですが、バードソンというQBは、走る能力も確かに凄いのですが、ディフェンスが自分のところへ到達するかどうかを見極める能力が極めて高い。ブリッツが入っても、ギリギリまで我慢して、そこからさっと走るにしろ、レシーバーにぱっとパスを投げるにしろ、自分にはこれだけの時間が確保されている、という感覚を持っているのではないか。その部分は以前のキャメロンよりも優れていると感じました。

画像: パナソニックの大型DL。右から大野莞爾(#90)、有村雄也(#92)、アーナー・エアロン・ジェイソン(#94)=撮影:小座野容斉

パナソニックの大型DL。右から大野莞爾(#90)、有村雄也(#92)、アーナー・エアロン・ジェイソン(#94)=撮影:小座野容斉

Q 2015年は直前にRBジーノ・ゴードンが負傷をして、富士通オフェンスがパス一辺倒になった。今回は、RBにサマジー・グラントがいて、さらに負傷から復帰したウィリアムズ・デレク・アキラもいい動きです。

荒木監督:特にサマジーは難しいですね。彼はポジションが固定されないので。本職のRBだけでなく外のレシーバー、中のレシーバー、この前の試合ではパスも投げていました。絞りにくい。9月の対戦では、彼1人に170ヤード以上(パスレシーブ122ヤード、ラン54ヤード)やられています。どうしたら止められるのか、(笑いながら)山本さんにちょっと教えてもらおうかなと。

Q やはり春シーズンがなかったということで非常に苦労されたと思いますが、ここへ来てどんどんチームが仕上がってきているという感じを受けますが。

荒木監督:もちろん成長している部分はあると思います。ただ、9月の富士通戦では、2015年以降で初めて、ゲーム中に考えを変えた試合でした。途中から(どうやって勝つかではなく)『あきらめずに最後まで戦うのだ』ということにフォーカスせざるを得なかった。あれだけ点差を離されて、ディフェンスは何をしても止められない。ああいう試合を経験すると、現時点でそこからいくらかは成長できたとは言え、あれだけの差をどこまで埋められたのか。正直なところ埋め切れている自信はないです。

Q どうしてもパナソニックが勝った2015年の話になってしまうのですが。あの時は確かにディフェンスがキャメロンを追い詰めたとか、いろいろありました。ただ、結局のところ一番最後にゲームを決めたのはQB高田鉄男でした。今のパナソニックのオフェンスで、高田のような大黒柱的な存在、勝負所ですべてを託せる選手はいるのですか。

荒木監督:QBのアンソニー(ロウレンス)でしょう。彼とは出会ってからまだ半年くらいの付き合いに過ぎない。とても彼のすべてを知っているという状況ではない。鉄男はどれだけやられても次にやり返せる、強いメンタルを持った肝っ玉のQBでした。
 アンソニーは、鉄男とは全くタイプが違いますが、きわめてスマートな選手。肝っ玉の部分を割り引いても、どんなにプレッシャーがかかっても、常に冷静でクレーバーなプレーを展開できる。練習でも驚かされることが本当に多い。彼の持っている能力で、まだ皆さんにお見せできていないところがたくさんある。『ほう、このタイミングでここに投げるのか』『このピンポイントの精度で、ここにパスを通すのか』。そういう、未知のアンソニーの力が発揮できれば。そう思います。

画像: パナソニックのQBロウレンスはサンディエゴ大で4年間エースQBとして活躍、4シーズン49試合でパス12,628ヤード・120TD、昨年は12試合でパス4107ヤード・39TDという驚異的な成績を残したパサー=撮影:小座野容斉

パナソニックのQBロウレンスはサンディエゴ大で4年間エースQBとして活躍、4シーズン49試合でパス12,628ヤード・120TD、昨年は12試合でパス4107ヤード・39TDという驚異的な成績を残したパサー=撮影:小座野容斉

画像: パナソニックの荒木監督とモトゥ主将=2019年12月2日、撮影:小座野容斉

パナソニックの荒木監督とモトゥ主将=2019年12月2日、撮影:小座野容斉

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