現地時間3月18日に、2020年シーズンが始まった米プロフットボールNFLは、2日早く解禁となったFAで、トム・ブレイディやフィリップ・リバースら、リーグを代表するスターQBの移籍が続いた。それ以外にも、各チーム間でQBシャッフルが続いている。今オフの特徴は、過去のドラフトで1巡指名されたQBに関わる異動が多いことだ。かって、チームの命運を託されて指名されたはずだった彼らに、今何が起こっているのか。【小座野容斉】

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マリオタ放出、タネヒルと大型契約…タイタンズ

 テネシー・タイタンズは2019年にマイアミ・ドルフィンズから移籍し、シーズン途中から先発に昇格したQBライアン・タネヒルと4年1億1800万ドル(約128億円)の大型契約を結んだ。
 1988年7月生まれで31歳のタネヒルはテキサスA&M大学では3年の途中までWRだった変わり種。2012年ドラフトの1巡全体8位でドルフィンズに入団、2シーズン連続で4000ヤード以上を記録するなど、パスでは十分な実績を残してきたが、チーム成績が低迷する中で、評価は低かった。2017年には左ひざを負傷してシーズンを全休、18年シーズンも9試合の出場にとどまった。
 ドルフィンズは2019年3月、タネヒルをタイタンズにトレード。タネヒルは第6週のゲームで、それまでのエースQBマーカス・マリオタに代わって出場すると、7割を超えるパス成功率と、タッチダウン(TD)パス22本に対してインターセプト6本という確実なクオーターバッキングで、レーティング117.9(NFL1位)を記録。タイタンズは、大型RBデリックヘンリーの活躍もあって、AFC決勝まで進出した。
 オレゴン大学で米カレッジフットボール最優秀選手賞のハイズマントロフィーを受賞し、2015年ドラフトで1巡全体2位という高い評価で入団したマリオタだったが、3年目以降は明らかに精彩を欠いた。今後は、ラスベガス・レイダースに移籍する。レイダースは現時点では、デレク・カーが先発QBだが、場合によってはポジション争いが発生するかもしれない。

大物フォールズ加入、トゥルビスキーの尻に火…ベアーズ

 シカゴ・ベアーズは、ジャクソンビル・ジャガースからQBニック・フォールズをトレードで獲得する方向だ。ベアーズは2017年ドラフトの1巡全体2位で入団したミッチエル・トゥルビスキーが伸び悩んでいる。ドラフト同期の1巡指名QBで、今やNFLを代表するスターとなったパトリック・マホームズ(チーフス)はもちろん、デショーン・ワトソン(テキサンズ)に比べても、TDパスの数など決定力で大きく劣っている。
 フォールズは2017年シーズン、フィラデルフィア・イーグルスをスーパーボウル優勝に導いた実績はまだ記憶に新しい。ジャガースでは負傷で活躍できなかったが、実力は十分なだけに、トゥルビスキーも安穏とはしていられない状況だ。

キーナム補強、メイフィールドの交代はあるか…ブラウンズ

 ベアーズと同様のQB補強を試みたのが、クリーブランド・ブラウンズだ。ワシントン・レッドスキンズのQBケース・キーナムと複数年契約を結んだという。キーナムは1988年生まれの32歳。ヒューストン大学時代は5シーズン中3シーズンがパス5000ヤード以上、通算獲得距離19,217ヤード、155TDのNCAA記録を持つパスの申し子だが、NFLではチームを転々とする選手生活を送ってきた。過去4シーズンはロサンゼルス・ラムズ、ミネソタ・バイキングス、デンバー・ブロンコス、そしてレッドスキンズとすべて異なるチームでプレー。4シーズンで先発47試合とバックアップに留まらない力を持つ。
 ブラウンズの先発QBは、オクラホマ大学でハイズマンウィナーとなり、2018年ドラフト全体1位指名で入団したベイカー・メイフィールド。ルーキーシーズンは大活躍だったが、2年目はTDパス22本に対してインターセプト21本と不安定さを露呈した。パス成功率やパサーズレーティングもルーキー年より落ち込んだ。
 WRにオデル・ベッカム・ジュニア、ジャービス・ランドリーという、NFL屈指のレシーバーコンビを補強した直後のシーズンだっただけに、チームやファンは不満を持っている。
 いつでも先発できるキーナムは、メイフィールドに活を入れる以上の存在となる。2000年代に入ってから、QBに関しては我慢をせずにスイッチする癖が残っているブラウンズだけに、メイフィールドが2019年と同じようなパフォーマンスを続けるようならシーズン中の先発交代も、あり得ない話ではない。

パス中心オフェンスへ切り替え、ニュートンは構想外…パンサーズ

画像: 恵まれた身体能力で、スーパーボウルも経験したQBキャム・ニュートンだが、パンサーズ首脳陣の交代で構想外となった=photo by Getty Images

恵まれた身体能力で、スーパーボウルも経験したQBキャム・ニュートンだが、パンサーズ首脳陣の交代で構想外となった=photo by Getty Images

 新ヘッドコーチ、マット・ルールが就任したカロライナ・パンサーズはセインツの控えだった、テディ・ブリッジウォーターを獲得する。NFLネットワークによれば契約額は3年63000万ドル(約69億円)と大型で、先発QBとしての処遇となる。
 ブリッジウォーターは1992年11月生まれの27歳。ドラフト1巡全体32位でミネソタ・バイキングスに入団、1年目から先発に昇格し、順調な選手生活だったが、3年目の2016年に左ひざに大怪我を負ってほぼ2シーズンを休み、その後セインツに移籍した。昨年はエースのブリーズが負傷で休んだ間に5試合で先発し、堅実な成績を残した。ブリッジウォーターのパス能力を高く評価する関係者は多い。
 パンサーズが新たな攻撃コーディネーターとして、2019年のNCAA王者、ルイジアナ州立大学から招いたジョー・ブレイディは、同大学のQBコーチとして、4月のドラフトでシンシナティ・ベンガルズに全体1位指名が有力視されているQBジョー・バーロウを育てた実績を評価されている。パスの上手いブリッジウオーターへのQB交代は、首脳陣交代・戦術転換と軌を一にするものだ。
 パンサーズは、2011年ドラフト全体1位指名のQBキャム・ニュートンを攻撃の主役としてきたが、肩を負傷してパフォーマンスが低下してきたのに加え、彼をうまく使いこなしてきたロン・リベラHCが解雇され、局面が変わった。
 オーバーン大学時代に強力なランとパスのデュアルスレッドQBとしてハイズマントロフィーを受賞し、NFL入り後も、2015年シーズンにチーム史上2度目のスーパーボウル出場の原動力となったニュートンだが、今年5月で31歳。ベテランの域に入ってきたが、身体能力に依存するプレースタイルを変えることができず、負傷も重なっており、チームの構想外となった。ニュートンは自分を放出しようとするチームに激しく反発し、SNSで批判を展開している。

ドラフト1位で大学No.1QB指名濃厚、ダルトン放出へ…ベンガルズ

 ニュートンとドラフト同期の、ベンガルズQBアンディ・ダルトンも、チームの構想外となった。
1988年11月生まれで31歳のダルトンは、2011年2巡35位でテキサスクリスチャン大学からベンガルズに入団、ルーキー年から先発QBとなり、全試合に出場。冷静沈着なクオーターバッキングでチームをけん引してきた。入団以来7年連続でパス3000ヤードを記録。チームも4年連続でプレーオフに進出するなど期待に応えた。
 2018年に負傷し5試合を欠場したダルトンだが、昨年は復帰し再び先発の座に。しかしQBとしてのパフォーマンスの悪化以上に、チーム低迷の責任を背負う形となり、シーズン途中でルーキーQBのライアン・フィンリーに先発の座を奪われる屈辱も味わった。
 2勝14敗でシーズンを終えたベンガルズは、ドラフト全体1位指名権を持っているため、ルイジアナ州立大のQBバーロウの指名が確実とみられる。バーロウは、昨季15試合でパス5607ヤード、60TD、6インターセプト、成功率76.3%、レーティング202.0(インターセプトを除き、すべてNCAA1位)という驚異的な数字をたたき出し、チームは15戦全勝で全米王者、バーロー個人もハイズマントロフィーを受賞した。
 ダルトンの入団時のエースQBは、ハイズマンウィナーで、2003年ドラフト全体1位のカーソン・パーマーだった。パーマーを追い出し先発の座を勝ち取ったダルトンが、同じく全体1位でハイズマン受賞のバーロウに、おそらくその座を追われることになる。皮肉というほかない。

ロック育成へ舵切り ベテランのフラッコは1年で放出…ブロンコス

 デンバー・ブロンコスは、昨年獲得したQBジョー・フラッコを放出した。フラッコは、2008年ドラフト1巡18位でボルティモア・レイブンズに入団、ルーキー年から先発QBとして活躍してきた。2012年シーズンにはスーパーボウル優勝も経験している。昨年、ブロンコスに入団したが、思うような活躍ができないまま負傷。チームは2019年ドラフト2巡42位で指名したルーキーのドリュー・ロックを起用して育成する方針に切り替えた。フラッコはレイブンズ時代の大型契約が残っており、2020年にブロンコスに残留した場合2000万ドルを超えるの年俸が発生するため、放出が確実視されていた。
 フラッコは、実績は十分だが、1985年1月生まれで35歳になった。控えQBとしてならオファー出すチームはあるだろうが、先発としての処遇は考えにくい。本人次第ではあるが、このまま引退の可能性もないとは言えない。

プレスコットをフランチャイズ指定、長期契約に向け交渉…カウボーイズ

画像: 入団時は4巡と下位だったが、エースQBとして着々と実績を重ねてきたカウボーイズのダック・プレスコット。今後狙うのはスーパーボウル優勝しかない=photo by Getty Images

入団時は4巡と下位だったが、エースQBとして着々と実績を重ねてきたカウボーイズのダック・プレスコット。今後狙うのはスーパーボウル優勝しかない=photo by Getty Images

 ダラス・カウボーイズは、エースQBダック・プレスコットをフランチャイズ指定した。今季は他チームとの交渉はできなくなる代わり、リーグのQB上位5人の平均と同額の報酬を得ることができる。現実には、カウボーイズはプレスコットと長期契約を結ぶための交渉の時間を確保したことになる。
 プレスコットは1993年7月生まれの26歳。ミシシッピ州立大学ではパスとランのデュアルスレットQBとして活躍、2016年ドラフトの4巡135位でカウボーイズに指名され入団した。当初は評価は高くなかったが、身体能力の高さとクレーバーなクオーターバッキングで頭角を現し、プレシーズンマッチで負傷した当時のエースQBトニー・ロモに代わって、開幕戦から先発の座に。プレスコットは新人らしからぬ落ち着きでカウボーイズを率い、パス3667ヤード、23TDでインターセプトはわずか4本というパフォーマンスを見せた。このシーズン、プレスコットが記録した、パサーズレーティング104.9は今でもNFLのルーキー記録だ。
 チームはこのシーズン13勝3敗と快進撃。「代替わり」を理解したロモは引退を選択。カウボーイズはプレスコットの時代に入った。以来4シーズンで堅実な進歩を果たし、2019年シーズンはパス4904ヤード、30TDを記録した。プレスコットの今後の目標はポストシーズンでのさらなる勝利、そして四半世紀ぶりとなるスーパーボウル優勝だろう。

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