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2020-10-23

青山敏弘と考えるサッカーのポジショニング[後編]

2014年のブラジル・ワールドカップではコロンビア戦に出場した元日本代表の青山敏弘

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どのポジションであれ、優れたプレーを可能にする上で欠かせないのがポジショニングだ。サンフレッチェ広島在籍17年目、日本代表として2014年のワールドカップを経験した国内有数のボランチである青山敏弘に、ポジショニングについて聞く。

出典:『サッカークリニック』2020年9月号


体の向きや受ける角度


――過去の話で言えば、佐藤寿人選手や浅野拓磨選手へのロングパスも、ディフェンスラインからボールを受けて素早く縦に蹴り込むパターンが多かったです。最前線の選手がつくった最適なポジショニングをうしろのラインから最速でリンクさせる、レベルの高いプレーでした。

青山 パスをもらう前から最前線に蹴る準備をしています。ただ狙って蹴るのではなく、そこに出すためには自分がいいポジションでボールを受けなければなりません。味方のディフェンダーやキーパーがパッと顔を上げたときに、僕のそばに相手選手がいたら出しづらいと思うので、ボールを引き出すためにはフリーになっておかなければいけません。うしろからゆっくりポゼッションをしているときにフリーになるのは難しいので、そう考えると、ボールを奪った瞬間こそがフリーになる絶好のチャンスなんです。

 守勢のときに、ボールをどこで奪って、奪ったあとにどうするかを考えておかなければいけません。そのときは準備してくれているフォワードの動きを把握しながら動くのですが、その場所は1カ所でも構いません。僕の場合はワントップの動きを把握しておけば、その動きに周りが連動するので、ほかのポジションの位置もイメージできます。例えば、ワントップの寿人さんや拓磨が自分からのパスを狙って動き出すじゃないですか。それに対して相手ディフェンダーが警戒してラインを下げれば、逆にワントップのうしろのツーシャドーがフリーになるので、ロングパスを無理に通すのではなく、ツーシャドーに縦パスを入れて仕掛けることもあります。でも、それができるのは、僕がワントップの動きを把握して常に狙っているからこそだと思うんです。それを相手に意識させれば、最初に話したように、自分だけでなく、相手の選択肢も増えると思います。そうなると、相手に迷いが生じるので、守備の揺さぶりにつながります。

 ボールを奪ってから(ボランチの)自分のところにパスが来るときは、前向きではなく、うしろ向きの場面がどうしても多くなります。その場合、ワンタッチでターンしなければなりません。ターンして狙い通りのパスを素早く出すためには、先ほども言ったように、体の向きや受ける角度の要素も考えてポジションをとらなければいけません。そのすべてはやはり、日々の練習から生まれます。

――守備の時点から攻撃は始まっているイメージですね。守備のポジションをとりながらも、守備に忙殺されるのではなく、前線の情報収集をしっかりと行なう必要があります。

青山 仮に最初のイメージでボールを奪えなくても、予測をまた立てればいいだけの話です。状況が常に変化するからこそ、一度立てた予測に固執するのではなく、情報をまた入れて予測するのです。その繰り返しも、普段の練習から習慣づけておかなければいけないと思います。

取材・構成/安藤隆人

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