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2020-10-23

【ボクシング】DANGANオール4回戦が再開 アマ出身の李鎮宇は3連勝

李鎮宇は来年改めて新人王を狙う

22日、東京・後楽園ホールで『DANGANオール4回戦2020 Vol.2』が開催された。“Vol.1”が行われたのは2月3日。新型コロナウイルス感染拡大による興行自粛からの再開後、新人王トーナメント以外では初めてのオール4回戦になる(8月22日の大阪・豊中ローズ文化ホールは、メインの8回戦が中止になり、結果的にすべて4回戦となった)。

コロナ禍の興行では、控え室などでのいわゆる“密”状態を避けるため、試合数を抑制し、1興行あたり最大8試合が原則。どうしてもチャンピオン、ランカー、A級(8回戦)ボクサーなど、トップ選手の試合が優先され、特に選手数が多い東日本では、駆け出しの4回戦を組み込む枠が少なくなっていた。

主催のDANGAN・古澤将太代表によると、来月11月26日に後楽園ホールで予定されている“Vol.3”と合わせ、60名以上の出場希望が殺到したという。残念ながら1試合が中止になり、この日、行われたのは女子1試合を含む全7試合。5名の選手がプロデビュー戦のリングに立ち、そのうちの1名は“Vol.1”にエントリーしながら、試合中止になっていた選手だった。それぞれ「今年は試合ができないのではないか」と不安を抱えていたに違いないなか、3名がB級(6回戦)昇格条件の4勝に王手をかけ、3名が初勝利を挙げた(1試合は引き分け)。

最終試合の60kg契約4回戦で2回TKO勝ちした李鎮宇(り・じぬ/24歳=角海老宝石)は、今年の東日本新人王戦にエントリーしながら出場を辞退していた約20名のうちのひとりだった。4月5日に初戦を予定していたものの、延期となり、その2日後には緊急事態宣言が出される先行き不透明な状況での苦渋の決断だった。7月から興行が再開され、新人王戦も日程を組み直してスタート。「ちょっと後悔した」と振り返るが、「こうしてタイミングよく試合ができて、よかった。ありがたいです」と笑顔を見せた。

これがプロ3戦目だった李は、東京朝鮮高、駒沢大でアマチュアキャリアがある。高校、大学、それぞれ最後の年の国体ベスト8が最高成績だが、戦績は19勝(6KO・RSC)16敗で4回戦デビューとなった。このような選手は敬遠されがちで、試合が組みづらい。実際、ここまでの2戦は外国人選手が相手だった。が、現状、海外から選手を招聘するのは難しい。DANGANへの多数の出場希望選手から、アマ41戦25勝(5KO・RSC)16敗、プロでは14戦(4勝3KO9敗1分)で、ジムを移籍して4年半ぶり復帰の西村直哉(シュウ)と条件が合った。

試合は李の圧勝だった。アップライトに構え、「顔の位置が遠い」相手に対し、最初は右ボディストレートを軸に組み立てようと考えていた。が、その右に反応し、「ガードを中に絞る」ことをいち早く察知。狙いを変えた。ぐっと踏み込んでガードを絞らせ、外から肩越しに打ち込んだ右フックで、いきなり初回に倒す。さらに2回開始早々、同じパターンでダウンを追加し、レフェリーがストップ。冷静な戦術眼を見せ、無傷の3連勝を飾った。

高校から始めたボクシングで人生が変わったという。「大学に行くことができたし、何より人とのつながりが広がりました」。李をボクシング部に誘ったのは、1学年上の先輩で日本スーパーフェザー級4位の中川兼玄(三迫)だった。以前、自身と同じく高校から初めて朝鮮学校に入ってきた後輩を思い、「声をかけた」と中川が言っていたが、「あの人がいなかったら、こうなっていなかったので」と感謝する。その“恩人”は現在、元日本王者2人を含め、日本ランカー相手に4連勝中と波に乗っている。李は「刺激になっています」と話す一方、「同じ階級なんで、いつかタイトルを懸けて戦いたい」と、普段は仲の良い先輩に笑顔で宣戦布告した。「競技生活が長くはないスポーツ」。まずは来年、あらためて新人王戦にエントリーし、日本ランカーを目指す。

国内外で日本人絡みの世界タイトルマッチが動き出しているが、プロボクシングの未来のためには、裾野の広がりも欠かせない。10月11日に大阪、佐賀で、翌12日、13日、19日には東京で、ストップしていたC級(4回戦)のプロテストが再開され、計117名が受験し、94名が合格した。厳しい状況は続くが、少しずつ前に進んでいる。

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取材・文◎船橋真二郎

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