大横綱を倒して節目を刻み、
輪島、北の湖などの好敵手たちと新たな時代を築いた貴ノ花。
ウルフに時代を託すまで、“プリンス”の周囲にはきらびやかな星たちが輝いていた。
※平成28~30年発行『名力士風雲録』連載「ライバル列伝」を一部編集。毎週金曜日に公開します。
大関取りを激しく争い人気も分け合った親友 角界の未来を背負って立つ両雄の熱闘に、満員札止めの蔵前国技館内は興奮のるつぼと化した。
昭和47(1972)年秋場所千秋楽、皇太子ご一家が見守る中での、貴ノ花と輪島、ともに大関取りを目指す2人の対決。がっぷりと胸を合わせての4分近い大相撲は最後、輪島に軍配が上がったが、日本中を感動させたこの一番は、2人の同時大関昇進に太鼓判を押すには十分過ぎるものだった。
花籠部屋が日大相撲部に隣接していたこともあり、輪島は学生時代から近所にあった同門の二子山部屋にもよく稽古に通った。陽気でひらめき型の輪島と、口下手で慎重派の貴ノ花。年は輪島が2つ上でも、性格が正反対ゆえに2人は手が合い、そのころから一緒に飲み歩く大親友に。
輪島の入門後は貴ノ花が角界の先輩として良きアドバイザーとなり、輪島もまた貴ノ花に追いつくことをターゲットに掲げて猛スピードで出世を重ねた。
同時大関昇進後の対戦成績は貴ノ花の13勝に対し、輪島は26勝。期待された「貴輪時代」到来はならなかったものの、実力・ルックスを兼ね備え、かつライバルとしてしのぎを削り続ける2人は、大相撲人気の中心となった。
昭和56年初場所、親友引退の報を聞いた輪島は「いろんな面で目標だった。恋人をなくしたようなつらさだ」とつぶやいた。
目指すものを失った横綱もまた翌春場所、後を追うように土俵を去った。
『名力士風雲録』第7号貴ノ花掲載
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