アメリカンフットボールの関東大学リーグ1部TOP8は、10月31日に第2節の2試合があり、桜美林大学スリーネイルズクラウンズと明治大学グリフィンズが対戦、桜美林大が逆転で明大を破った。両校は共に1勝1敗で勝ち点3となった。
桜美林大学スリーネイルズクラウンズ〇17-7●明治大学グリフィンズ
(2020年10月31日)
桜美林大が終盤に攻守のビッグプレーを決めて逆転、TOP8昇格後初勝利を挙げた。
桜美林大は、第1クオーター5分からのオフェンスで、ゴール前1ヤードまで攻め込むが、インサイドのランを止められ、先制機を逃した。自陣内でのオフェンスが続いた明大だったが、第2クオーター、QB西本晟のパスで攻め込むと、RB森川竜偉が11ヤードを走って先制のタッチダウン(TD)。明大が7-0として、そのまま前半を終えた。
P神杉の「神過ぎるパント」が勝利もたらす
第1節で、2年連続甲子園ボウル出場の早大をあと一歩まで追い詰めた桜美林大の実力は本物だった。
勝因は、常にフィールドポジションが良かったことだ。序盤から、4年生のP神杉が好パントを連発し、有利なポゼッションで試合を進めた。神杉が6回のパントで記録したのは248ヤード。タッチバックになったのは1回だけで、4回は明大ゴールラインから10ヤード以内で止まった。相手陣内に入ってからの難しい距離でも、絶妙なコントロールでボールを落とした。
【桜美林大 vs 明大】プレッシャーを受けながら終始冷静にパントを決め続けた桜美林大P神杉=2020年10月31日、撮影:小座野容斉
自陣ゴール前からのオフェンスを強いられた明大は、QB西本のパスとRB森川のランがそれなりに進んでいたものの、TDを決めたドライブ以外ではFGレンジにも入り込めなかった。関口順久監督も、この試合のMVPとして神杉の名を挙げた。
もちろん、キッキングだけの勝利では無い。特に後半、ディフェンスとオフェンスに、鮮やかなビッグプレーが飛び出したのは、選手たちの力もさることながら、日本代表に匹敵すると言われるほどの強力なコーチ陣の冷静な指揮があればこそだった。
元早大監督の朝倉孝雄コーディネーターが指揮したディフェンスは、タックルフォーロスや、貴重なインターセプトを連発した。2015年・20年の日本代表オフェンスコーディネーターで、前LIXILディアーズヘッドコーチの富永一コーディネーターが率いたオフェンスは、勝負所で見事なフリーフリッカーを決めた。
【桜美林大 vs 明大】第3クオーター、明大のRB森川に群がってタックルし止める桜美林大ディフェンス陣=2020年10月31日、撮影:小座野容斉
殊勲の神杉らスペシャルチームを指導するのも、58ヤードFGの日本記録を保持する山口豊コーチ(元アサヒビールシルバースター、元日本代表)だ。他にもDBを担当する寺田隆将ヘッドコーチ(元オービックシーガルズ、元日本代表)、LBを担当する玉井摂人コーチ(元シルバースター、元日本代表)、ストレングス担当の河口正史コーチ(元NFLヨーロッパ)と、ビッグネームがずらりと名を連ねている。
桜美林大は、1980年代後半から90年代にかけて並列制の1部の常連だった。しかし2000年代に入るころ、2部に落ちるとそのまま低迷期に入り、3部落ちも2回経験した。大学から特別強化クラブとして認定された2012年に3部から2部へ、16年には1部BIG8へ昇格した。BIG8からTOP8に昇格にあたっても、17年、18年とチャレンジマッチで敗れ、昨年が「3度目の正直」だった。
桜美林大が、最上位カテゴリーで秋のリーグ戦に勝利したのは1997年以来という。11月中旬の第3節で立教大に勝利し、明大が早大に勝つか引き分けると、Bブロックの首位となる。
関口監督が指導者になって8年目を迎えた。チームの大きな目標は「学園創立100周年にあたる2021年までに、甲子園ボウルで優勝する」ことだ。遥か彼方にあった夢に、今、一歩ずつ近づいている。
【写真・文/小座野容斉】
【桜美林大 vs 明大】第3クオーター、桜美林大RB鈴木が21ヤードを走ってゴール前に迫る=2020年10月31日、撮影:小座野容斉
【桜美林大 vs 明大】第3クオーター、桜美林大WR関根が2ヤードを走って同点のTD=2020年10月31日、撮影:小座野容斉
小座野容斉
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