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2020-11-08

【ボクシング】井上岳志、不満の勝利。敗れたナァツは大健闘

井上(右)の右アッパーがヒットするが、ナァツは怯まず

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 WBOアジアパシフィック・スーパーウェルター級王者の井上岳志(ワールドスポーツ)は7日、東京・後楽園ホールで日本ミドル級13位のワチュク・ナァツ(マーベラス)とノンタイトルの70kg契約8回戦を行い、3-0(78対75、78対74、79対73)の判定勝ちを収めた。当初予定されていたメインイベントのミドル級日本タイトルマッチは、王者の竹迫司登が10月27日に負傷したことで中止になっていた。


 読み上げられた採点を静かに聞き終えると、口元を一切緩めることなく、小さく頭を下げた。急きょメインを務めた井上は明確な判定勝ちにも納得していなかった。昨年1月にはハイメ・ムンギア(メキシコ)との世界タイトルマッチで判定負けを喫したが、いまもWBO9位に名を連ねる世界ランカーである。地域チャンピオンの肩書も持つ。敗れてなお充実した笑みを浮かべる相手はプロ9戦目の23歳だった。

「勝つのは当然と思われるなか、変な力みがありました。それも想定していたのに……」

 序盤は一定の距離を保ち、鋭いワンツーを打ち込むなど、冷静に試合を進めていた。果敢に前に出てくるナァツに対し、右アッパーから右フックのコンビネーションも決め、確実にパンチをヒット。迎えた4回、偶然のバッティングで左目上をカットする。ここから歯車が狂っていく。


左の差し合い。ナァツ(右)も負けず

「目が見えにくくなり、冷静さを失ってしまいました」

 接近戦の打ち合いに応じ、4回以降は時折、不用な右クロスをもらった。致命打にはなっていないものの、決して見栄えがいいとは言えなかった。中盤から終盤にかけても右アッパーを中心に単発でパンチを当てたが、相手の勢いは簡単に止め切れなかった。

「僕の詰めの甘さですね」

 反省すべきところは反省し、再び世界を見据えて鍛錬することを誓っていた。陣営は今後、WBOアジアパシフィックの防衛戦を重ねつつ、東洋太平王座も狙っていくという。

 一方、初めて8回戦に臨んだ2018年全日本ミドル級新人王のナァツは最後まで勇敢に戦い続け、後楽園ホールの観客から大きな拍手を浴びていた。打たれても、打たれても、前に出る姿勢は豊富なキャリアを持つ井上も認めていた。

「精神力の強い、いい選手でした」

 百戦錬磨の地域王者に対して善戦し、評価を高めたはずだ。

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文_杉園昌之 写真_馬場高志

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