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2020-11-12

選手権初出場! 福島の絶対王者・尚志を破った学法石川の守備改革[後編]

福島県の学法石川高校で2006年から指揮を執る稲田正信監督が初の全国大会出場に導いた

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12月31日に開幕する第99回全国高校サッカー選手権大会。先日、この大会の福島県代表の座を射止めたのが学法石川高校だった。準決勝で県6連覇中の尚志高校を破り、決勝では聖光学院高校を下して初の全国大会出場を手にした。ここでは、全国大会の出場をまだ果たせていなかった2019年の秋、学法石川の稲田正信監督に取材した「個とグループを融合させた守備組織の築き方」をお送りする。

出典:『サッカークリニック』2019年10月号

取材・構成/小林健志 写真/学法石川高校(提供)、小林健志

主導権を握って守り、ボールを奪う

――チームとしての守り方を見ると、学法石川高校(以下、学石)はディフェンス・ラインを高くしてコンパクトな陣形で守るようにしています。

稲田 2015年に参加した『プリンスリーグ東北』ではラインを上げられず、ボールを奪っても自陣内ですぐに奪い返されるような展開が続きました。2016年のインターハイ予選では尚志と対戦してPK戦の末に敗れたことがあります。学石はゴール前に陣取ってゴールを死守した格好でしたが、尚志のシュートは30本以上、学石のシュートは1、2本だったのです。この戦い方を続けても未来がないと感じたのを覚えています。

状況を打開するためにも現在はラインを高く設定し、自分たちで主導権を握って守り、ボールを奪うというのを徹底しています。守備ではどうしても受け身に傾きがちですが、最近の2年くらいは「攻撃的にボールを奪いに行く」をテーマにしています。ラインを高くして守れれば、相手ゴールに近いエリアでボールを奪うチャンスが生まれますし、相手にとってもそれは嫌なものです。そういうプレッシャーを相手に与えられるようにしています。

――では守備に関し、中学年代までに身につけてほしいものはありますか?

稲田 1つはヘディングです。発育段階にあるため、習得には難しい面があるのは理解しています。しかし、競り合いで首が引っ込んだり、腕が上がらなかったりして正しい姿勢で競り合えない子供が多いのを見ていると、基礎だけでも身につけておいてほしいと思うのです。

2つ目はボールを奪う技術です。「相手とボールの間に体を入れて奪う」、「ボールが出る瞬間を見て動き出してインターセプトする」というのができる選手が少なくなっています。予測を立てて相手の体の状態を見て判断という部分が欠けている気がします。例えば、背中を見せている相手がファースト・コントロールした瞬間に体を入れれば奪えるときでも奪いに行こうとしません。逆に、前を向いていい状態の相手に飛び込んだりします。

この点を改善するためのトレーニングを行なうようにしています。「1対1」で個人の部分に働きかけつつ、「2対1」のトレーニングにも取り組むようにしています。ボール保持者だけでなく、もう1人も見られるようにしてほしいからです。さらに、パスコースを消して「2対1」から「1対1」に持ち込む方法や2人を見られる距離など、基礎から学ばせるようにしています。

――学年ごとの指導テーマはありますか?

稲田 1年生では守備を楽しめるように導きます。ガミガミ言わず、やってみて失敗しながら覚える、というスタンスです。また、「守備面にも結構良いところがあるじゃないか」と言うことで自信を持たせると、体の向きやステップワークなどの細部にこだわるようになります。中にはヘディングにたくさん取り組む選手も現れます。一方、1人でボールを奪う楽しさだけでなく、複数人でボールを奪う楽しさも伝えたいと考えています。そういう意識は、3年生になってから伝えるのでは遅いと感じているからです。もちろん、チャレンジ・アンド・カバー、スライド、プレスバックといった守備の基本も1年生のときに伝えます。そして、ボールを奪うプレーを2、3年生で研ぎ澄ませ、最終的には自力で解決できるように導きます。

取材・構成/小林健志

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