アメリカンフットボールのXリーグ「X1スーパー」第3節の11月23日、富士通スタジアム川崎でノジマ相模原ライズとIBMビッグブルーが対戦、ノジマ相模原がIBMを破った。ノジマ相模原は2勝1敗でAブロック2位、IBMビッグブルーは3戦全敗でAブロック最下位となって今季を終えた。
ノジマ相模原ライズ○27-17●IBMビッグブルー
(2020年11月23日、富士通スタジアム川崎)
ノジマ相模原が堅実なフットボールで勝ち切った。
先制したのはIBM。第1クオーター10分、K佐藤太希が39ヤードのフィールドゴール(FG)を決めた。ノジマ相模原は第2クオーター2分に、新QBカート・パランデックのショベルパスをキャッチしたRB森本紘介が50ヤード以上を独走してタッチダウン(TD)、逆転した。ノジマは同5分にも笹尾健のFGで追加点を挙げた。IBMは、同8分にQBケビン・クラフトからTEジョン・スタントンにパス、スタントンが左サイドライン際を快走してTDを決めた。
IBMは前半終了間際にも、レッドゾーンまで攻め込んだが、残り1秒からのフェイクFGは失敗。10-10で後半へ折り返した。
第3クオーター4分、ノジマ相模原は笹尾のFGで再びリードした。IBMは次のドライブでゴール前まで攻め込むが、ノジマ相模原のDBリー・ハイタワーがQBクラフトのパスをインターセプトした。ノジマ相模原は直後のオフェンスで、オプションから外に持ち出したQBパランデックが97ヤードを独走するTDでリードを広げた。
IBMは、同8分にQBクラフトが投じたパスがいったんはインターセプトされかかったが、ディフェンス選手同士の衝突によって浮いたボールをWR白根滉がキャッチして、幸運なTDとなり、20-17と追いすがった。
しかし、ノジマ相模原は、第4クオーター、QBパランデックからWR八木雄平への33ヤードパスでゴール前に迫ると、移籍のRBウィリアムス・デレク・アキラがTDで再びリードを10点差に。同10分には、IBMのFGトライをノジマ相模原DB渡辺健太がブロックして、勝利を決めた。
ノジマ相模原は、ファーストダウン更新(14回と21回)、トータルオフェンス(335ヤードと445ヤード)でIBMを下回ったが、30ヤード以上ドライブしたオフェンスシリーズをすべて得点に結びつける試合運びが光った。
【ノジマ相模原 vs IBM】第2クオーター、ノジマ相模原RB森本が、ショベルパスを捕って50ヤード以上を走りTD=2020年11月23日、撮影:小座野容斉
【ノジマ相模原 vs IBM】圧巻の走りを見せた、ノジマ相模原のQBパランデック=2020年11月23日、撮影:小座野容斉
【ノジマ相模原 vs IBM】第3クオーター、ノジマ相模原LB田中がパスインターセプトしかけたところで、味方のディフェンス選手と衝突する=2020年11月23日
無理な勝負をせず、できることを確実にやり切るという点ではディフェンスも同様だった。
前任の加藤慶ディフェンスコーディネーター(DC)時代、ノジマ相模原は、パスラッシュとブリッツを組み合わせた変幻自在のパス守備だった。決まった時は、トップクラスの米国人QBも抑え込んだが、ミスや微妙なタイミングのズレなどで破綻することも度々だった。新任の畑喜一郎DCは、ブリッツの構えこそ見せたものの、パスラッシュは基本的にDL4人に任せ、パスカバーを手厚くするベーシックなディフェンスに徹した。
フィールド中央ではパスは通されるが、エンドゾーン近くになるとディフェンス選手の密度が上がり、必然的にパスは決まりにくくなる。IBMのQBクラフトは、まんまとその罠に引っかかった。ハイタワーのインターセプトもその結果だった。
城ヶ滝HCは、試合後「すごく嬉しいし、ほっとしています。感情的に『やった!』というよりは、『良かったな』という感じです。選手たちを褒めてやりたい」と語った。実感のこもった言葉だった。
須永恭通HCや加藤DC、中村多聞RBコーチなど主な首脳陣が退任。エースQBだったジミー・ロックレイも移籍した。さらに新型コロナウィルス感染症の影響で選手補強や練習も、ままならなかった。
「コーチ経験ゼロ。選手引退後、フットボールから完全に離れていました」というルーキーHCには試練のシーズン。
初戦の富士通戦では、試合開始から7分足らずで4TDを奪われるなど一方的な展開で、3-48という屈辱的な大敗を喫した。
城ケ瀧HCは富士通戦の惨敗を「凄くわかりやすい結果だった」と振り返る。
「日ごろの練習がもろに出た。土日しか練習できないのに、土曜日の初っ端、集まった時の選手たちの意欲がなかった。土曜の朝一で覇気がない状況がずっと続いていた」という。それが「いざ試合になっても、第1クオーター、初っ端からの28失点につながっていった」という。確かに、この日は土曜日だった。
「土曜日、初っ端から勝負するぞ、という気持ち。それをまず、大敗明けの最初の練習から、徹底させた。コーチ陣、主要メンバー、他の選手たちにどんどんそれが浸透していった」という。 大敗に危機感を持った選手たちが「日本一という目標にふさわしいチームなのか」と自律的に様々なことに対して動き出したことも大きかったという。パランデックのチーム合流も期せずして同じタイミングだった。
ノジマ相模原にとって、富士通戦の第1クオーターは、先も見えないような土砂降りの大雨だった。しかし、その後はしっかり地固めをして、来季に希望を残してシーズンを終えた。わずかな期間で、フットボールが急にうまくなるわけもない。ただ、今できることをしっかりとやる、地に足の着いたフットボールをやり切ること。それがノジマ相模原が、今季得た最大の財産だった。
【ノジマ相模原 vs IBM】ノジマ相模原の城ケ瀧HC(中央左)と畑DC(中央右)=2020年11月23日、撮影:小座野容斉
【ノジマ相模原 vs IBM】第3クオーター、ノジマ相模原のDBハイタワーがIBMのQBクラフトのTDを狙ったパスをインターセプト=2020年11月23日、撮影:小座野容斉
【ノジマ相模原 vs IBM】第3クオーター、ディフェンス選手同士の衝突によって浮いたボールをIBMのWR白根滉がキャッチして、幸運なTD=2020年11月23日、撮影:小座野容斉
【ノジマ相模原 vs IBM】第1クオーター、IBMのTE松岡が、パスを捕って34ヤードをゲイン。フィールド中央ではIBMのパスはよく決まった=2020年11月23日、撮影:小座野容斉
【ノジマ相模原 vs IBM】初戦に大敗の後、2連勝でシーズンを終え、スタンドのファンにあいさつするノジマ相模原の笠井主将=2020年11月23日、撮影:小座野容斉
【写真・文/小座野容斉】
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